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■「ACROSS」学生編集部企画:慶応義塾大学公認団体「Keio Fashion Creator」
レポート
2014.01.20
この記事のカテゴリー |  ファッション | 

■「ACROSS」学生編集部企画:慶応義塾大学公認団体「Keio Fashion Creator」

気軽に服をつくってショーをする、「ライト」なファッション・デザインとの関わりを、積極的に楽しむ 〜慶応大学のファッションサークル

2013年12月14日、東京・代官山のTHE ROOM 1 DAIKANYAMAにて慶應義塾大学公認団体「Keio Fashion Creator」のファッション・ショーが行われた。ショーの取材に加え、設立後間もないという新たな服飾サークルとしての方向性や今後の展望について、代表の馬渕暁斗さん(慶應義塾大学環境情報学部3年)、渉外担当の近藤茉梨さん(慶應義塾大学商学部1年)の両名に話を伺った。

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2002年に同大学のファッションビジネス研究会から独立する形で設立されたKeio Fashion Creatorは、「いま、表す。現れる。」を理念に年1回のショーを主な発表の場とし、メンバーは服飾専門学校ESMOD JAPON(エスモード・ジャポン)との提携により週1回の特別授業を受講。2012年度よりインカレ化、組織改編を経て現在19名のデザイナーと26名のスタッフ、計45名で活動している。

今回のショーのコンセプトは“遊me(ゆめ)”。エスモードから支給されたファッション・トレンドブック『Nelly Rodi』 (
http://nellyrodi.com/)のテーマのひとつが「future & you」というものだったことから、そこから「夢」というキーワードを構築したという。自分の中に眠っている可能性としての「夢」をコンセプトのベースに置いたのだという。

“夢”という言葉を代表の馬渕暁斗さんは次のように説明する。
「無意識としての夢の中の自分を知ることで、自分のアイデンティティを確立させるきっかけに出来ればと考えました。“遊me”は、ごちゃごちゃした無意識の中に遊び意識を見出すための言葉です。この言葉には“遊び心のある自分”という意味を込めました。」(馬渕さん)

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ショーでは30体あまりのルックが十字型に設けられたランウェイを次々に闊歩した。それぞれのルックはデザイナー各自の“遊me”=夢のイメージから紡ぎ出されたものであり、全体的な統一よりもデザイナーの自由な発想を重視したものが多く見受けられた。

一見統一感には欠けた印象も受けなくもないショー全体の構成について、馬渕は「夢は非常に個人的なものだから、全体的なイメージを共有するよりも各自が個性を出した方がいいと考えました」と言う。他方で、表層的な統一を持たせるために、個々のルックには金色の布地がポイントとして加えられていた。

「デザインを統一するために金色の布を用いることを考えました。シルエットやアイテムに制限を設けることも考えましたが、個性を生かすと同時に分かりやすさも重視して布地を選びました。“夢”という言葉を考える途中で「栄華の再現」というキーワードが出てきたんです。その華やかなイメージを膨らませて金色を採用しました。」(馬渕さん)

自身もデザイナーとして作品を発表した馬渕さんは、今回のテーマに合わせて、プリント生地から自作し、ショーに臨んだ。今回テーマである“遊me”について、自分の中の個人のテーマとして「自己実現」というものを設定したという。夢の先にある自己実現に向けて、そこに至るプロセスに、自分の中の深層心理や、コンプレックス、内に秘めているものが夢には現れているのではないか、と考えた。制作された3体のルックはこの「プロセス自体」がデザインとして落とし込まれた。

「3体を通して最終的に自己実現へ向かうプロセスを表現したいと思いました。このルックは、ショー全体で3部構成になっている“現実”“夢”“理想”の中の「夢」の部分のルックのために製作したものです。夢の世界にあるようなごちゃごちゃしたカオスな感じを、全面のプリントで表現したいと思ったんです。」(馬渕さん)

ベースとなっているものはシャツ。その裾の部分に見返しのようにさらにシャツのボディを接合し、パンツのようになっている。このようにシャツの生地によって包み隠し、隠れている状態を表現することで、夢の状態を表現したかったのだという。

また、特にこのルックで注目したいのは、オリジナルのプリントを施したテキスタイルだ。これは、原宿にあるファッション・コワーキングスペースの「coromoza」(
http://za.coromo.jp/にて、馬渕自身がイメージした画像を自作し、プリントしたものだそうだ。

制作当初はcoromozaの存在を知らなかったものの、自分でつくりたいモノがあれば、自分でつくることができる機材が揃っている、との噂を友人から聞きつけ、ここなら自分がつくりたいものがつくれる、と思い早速相談に行った。

coromozaにある機材は、DENATEX (
http://denatex.jp/と呼ばれるデジタル捺染プリンターであり、独自に開発された天然繊維、化学繊維、混紡品など、種類を問わずにプリントが可能なDENATEXインクを用い、自分がつくりたい生地を、つくりたい分だけつくることが可能なのだという。

「自分の頭の中にあるイメージがそのまま形となって現れたことに感動しました」と馬渕さんは話す。
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ファッションにおいて、大量生産ではない服づくり、小ロットあるいは一点物のデザインを支援するしくみ(アーキテクチャ)を、服飾サークルの学生が利用していたという事実は、近年注目される「パーソナル・ファブリケーション」という“個人的なものづくり”の概念がファッションの領域にも浸透しつつあることを示しているともいえそうだ。先日の早稲田大学繊維研究会のインスタレーション「つくる を きる」展においても“服飾デザインの民主化”というキーワードで取り上げられていた。

ファッション研究者の水野大二郎は、自身が実行委員長を務めた「ファッションは更新できるのか?会議」において、こうした諸変化の只中にあって「アーティストやユーザーによって揺るがされるアーキテクチャを……漸進的に改新していくこと」がデザイナー自身にも求められる」(「ファッションは更新できるのか?会議報告書」より)と指摘しているが、今回の馬淵さんの服づくりは、つくり出されるプロダクトだけでなく、プロセスに対するまなざしも同じように重要になってきている、というファッションをとりまく現状を結果的に示唆していたようで興味深い

実は、この学生ファッションサークルにおける構造の変化は、「Keio Fashion Creator」という服飾団体の立ち位置と連関した問題であるようだ。2012年のインカレ化以降、同団体のメンバーのファッションに対する姿勢にも変化が見られると馬渕さんは話す。

「今年はファッションに携わるのは大学だけの間だけというメンバーが多いですね。これまではアパレルメーカーやデザイナーを目指す人も多かったですが、インカレ化してから変わってきているように思います。だからこそ、学生のあいだに、気軽に洋服をつくってショーをする、というのがサークル活動の目的になっているのかもしれません僕自身は、それでもいいと考えています。服飾に(直接)関わり続けることだけが大事ではないですからね」(馬渕さん)。
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原宿にあるファッションのコワーキング・スペースcoromozaにあるDENATEXというデジタル捺染プリンターを用いて作成したオリジナルテキスタイル。
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エスモードとの提携によって、確かな技術習得が可能であることが他大学の服飾サークルとの差異であり「Keio Fashion Creator」の最大の長所であると馬渕は話すが、これは、立教大学服飾デザイン研究会への取材記事(http://www.web-across.com/todays/srnrj2000000mcz5.html?ra=1)でも触れた、専門学校ではないオルタナティブな学びや創造の場へのニーズを満たすものである以上に、ある意味では“ライトな”服飾デザインとの関わりへのニーズの現れであるともいえる。

アメリカの評論家・未来学者のA.トフラーは1980年の著作『第三の波』の中で、単に市場に流通する製品を消費するだけでなく、市場を介することなく、自己や親密圏のために無償で生産活動を行う主体のことを「生産消費者 prosumer」と呼んだが、デザイナーなどのつくり手を専門的に目指すのではなく、「気軽に洋服をつくってショーをする」というこの“ライトな”服飾デザインとの関わりは、まさに行為としての消費と生産が一体化した生産消費者的な在り方が、ファッションの領域にも浸透しつつあることを示しているといえそうだ。このことが、近年における技術革新に相まって可能となっていったことは、今回の馬渕さんの作成プロセスを見ていても明らかだ。

おそらく、今後このようなニーズは、ますます増加していくと考えられる。先述したcoromozaという場やDENATEXと言った小規模生産を支援する諸アーキテクチャはこうした傾向を加速させるだろう。

インカレ化以降の変化について馬渕は次のようにも語った。
「他大学と比べて歴史が浅いんです。1年目の(インカレではなかった)メンバーはデザイナーのみだったのですが、年を経るごとに違うサークルになってきています。しかし、基盤がまだ出来ていないとも感じていて、これから下の世代に独自のカラーをつくっていって欲しいと思っています。」(馬渕さん)

このような基盤の模索の中で、Keio Fashion Creatorがデザインプロセスへのまなざしを深化させるのなら、その活動は今後単なる“ライトな”服飾デザインを越え出た、新たな創造性を生み出し得るのかもしれない。エンドプロダクツにのみに固執しないファッションデザインとの関わりは、他方ではプロダクツに至るまでのプロセスまでをも明るみに出すこととになった。こうしたプロセスを、デザインや新たな「物語」へと昇華することが出来るのならば、それはKeio Fashion Creatorにとって確固たる基盤になるばかりか、ファッションシーン全体に対しても少なからぬ意味をもつだろう。その萌芽は、今回のショーの中にも多分に見て取れた。

[取材/文:小原和也(弁慶)(慶應大学大学院)小林 嶺(早稲田大学)]


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