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全国縫製サミット
レポート
2014.02.11
この記事のカテゴリー |  ファッション | 

全国縫製サミット

服づくりの現場から世界のマーケットに発信
縫製工場トップがものづくり再生に向けフォーラムを開催

大手メーカーが海外に生産拠点を移し、アパレル製造業の危機的状況が続いている。そんな厳しい市場環境の中でも独自の手法でビジネスに取り組む縫製工場の代表が集まり、製造業の現状と未来について語り合うフォーラム「全国縫製サミット」が2013年11月23日に開催された。生産現場の厳しい実情と、これからの魅力あるものづくりにつながる技術や方法論を共有しようという、初の試みである。

 

 

テーラードからカジュアルまでこなす対応力とクォリティの高さで定評のあるサンライン。「ポール・スミス」ブランドを輸出している
青森県の津軽地区には紳士服を生産する国内の有力工場が集まる。サンラインはその代表的な存在だ
岩手モリヤの現場風景。現場で蓄積されてきた技術にはマニュアル化が難しいものも多い
岩手モリヤが拠点とする久慈市には縫製工場が多く集まる。地域にとっても地場産業そして雇用先として重要な存在だ
山形県のニットメーカー・佐藤繊維の佐藤正樹さん。あえて古い機械を使うことで独自のプロダクトを生み出した
佐藤繊維が作り出すニット製品のクォリティは海外のマーケットでも高く評価されている
テーマは「服作りの誇り、アパレル産業の未来を語ろう-メード・イン・ジャパンの現場から」。会場の文化学園(東京都渋谷区)には、アパレルメーカーや縫製工場、教育関係者など約400人が集まった。主催団体は「日本発ものづくり提言プロジェクト」実行委員会。2010年9月に発足され、意見広告の制作・掲載や各種のセミナーなどを通じて国内製造業の再生を目指し活動している団体である。

パネラーは、サンライン(紳士服、青森県)社長の佐藤克豊さん、岩手モリヤ(婦人服、岩手県)森奥信孝さん、佐藤繊維(ニット、山形県)佐藤正樹さん、ファッションしらいし(東京都/婦人服)の白石正裕さん、大阪シンコー(シャツ、大阪府)の神村尚樹さん、タカラ(婦人服、岡山県)の米倉勝久さんの6人。それぞれ独自のアプローチでものづくりに取り組み、優れた工場経営や高付加価値な製品づくりに成功している縫製工場経営者のトップたちだ。

「ものづくり」という言葉はよく使われているが、これまでその内容に関する議論はあまり活発に行われてこなかったのが現状。そうした中で、日本独自の縫製産業を現場で支えるアパレル製造業を代表する6人が厳しい生産現場の実情を、それぞれ具体的に語った。海外マーケットへのチャレンジの過程で、世界を相手にした時の課題もまた浮き彫りになってきた。

洋服の生産は、20年ほど前までは日本の主要産業の一つだった。しかし人件費の上昇や円高などから海外への生産シフトが進んできた。2013年の段階で、国内で流通する衣料品のおよそ95%が外国製というのが現状である。

為替レートの変動や企業のグローバル化に伴う海外との厳しい価格競争に生き残るためには、個々の企業の努力だけでは困難であり、質の高さやデザインなどを磨きながら、独自性のある商品を作り出すことが必要だ。それを支える人材育成の重要性は、各社が共通して指摘していたポイントである。

中でも、東日本大震災から約1週間で操業を再開した岩手モリヤの森奥信孝さんは、縫製産業が地域コミュニティの中でいかに重要な役割を担っているかを改めて指摘している。
「今、優れた技術を持つ工場が廃業に追い込まれ続けています。日本のものづくりの環境を常に念頭に置いてほしいのです」

現場で蓄積されてきたものづくりのノウハウにはマニュアル化が難しいものも多く、こうした技術は一度失われてしまったら、その再生は極めて困難である。


ファッション産業ではマーケットで売れ筋を見極めてから作ることで売れ筋が集中、同質化が進むという状態が続いいている。価格競争が続いてきたことで、アパレルとの取り組みでは加工賃が下がる一方。そこに効率を上げることで対応するということを繰り返し、体力のない企業は淘汰されてきた。そのスパイラルから脱するため、製造現場では独自性のあるものづくりが進められてきたのである。

「私たちは海外と戦うできるようなものづくりに力を入れてきた。そのポイントは差別化とブランディング」と語る佐藤繊維の佐藤正樹さん。同社は、あえて古い機械を使うことで独自の糸を作り出すことに成功した。そのクォリティは、海外のマーケットでも高く評価されている。
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現在も東京都杉並区に生産拠点を置くファッションしらいし。かつて東京も縫製の産地だったが、現在は20人以上の規模で稼働している縫製工場は5社ほどになってしまったという
高い技術と企画力を背景に海外との取り組みに踏み出したファッションしらいし
大阪シンコーはシャツ製造を得意とする縫製工場。メーカーズシャツ鎌倉などのOEMを手がける
マシンの効率の中に手作業の良さを生かした大阪シンコーの生産現場
洋裁学校にルーツを持つ岡山県のタカラ株式会社
企業内に職業訓練校のタカラモードカレッジを設立。セミナーの開催など人材育成に力を入れている
国内を代表する製造工場のトップが集まった全国縫製サミットは今回が初めての開催。今後もこうした試みが継続されていくことを期待したい
ファッションしらいしは現在も東京都杉並区の住宅地の中に工場を構えているメーカーだ。社長の白石正裕さんは「軸足を“職人”に置きつつ、海外のマーケットに向けて商品を作る」という独自のスタンスについて明らかにした。同社は委託加工の一方で自社販売・自社企画、さらにNYのデザイナーズブランドとの取り組みを自ら手がけてきた。

2000年からウェディングドレスのオーダーからスタート。企画やパターン力を高めたことで、2006年からは伊勢丹新宿本店で販売している自社ブランド「ヌーヴ・コンフィニ」のお受験服のヒットへとつながった。

プレタにも対応できる素材や縫製のレベルを培ってきたことで、世界の中でも需要を獲得するというビジョンを定めた同社は、2009年から海外アパレルの開拓に着手した。NYに女子社員を1人常駐させ、コレクションのサンプル制作を手伝うことから始め、デザイナーズブランドのコレクションラインの仕事を受注するようになった。現在はコレクションのたびに社員3人をNYに派遣し、デザイナーのアトリエでコレクションのサンプルを作り、バックステージで着付けまで行っている。

「アメリカのマーケットは、かかった労力にはきちんとお金を払います。デザイナーと生産の距離が近く、価値観と目的を共有してものづくりをしています。米国の生産の現場は予想に反して強く、本気にならないと勝てません」(白石さん)

2013年にニューヨーク店をオープンしたメーカーズシャツ鎌倉会長の貞末良雄さんも、海外マーケットでの勝負についてこう発言している。
「日本のものづくりは絶対に世界一だと思ってニューヨークに行った。向こうで売られているものには勝ったが、まだ米国の消費者が期待しているレベルには達していない」

日本の手仕事/ものづくりが技術的に優れているとしても、細かなテイストや価格競争力などがユーザーの求めるものにフィットしなくては、ビジネスとしては成立しない。マーケットのリアルな現実に対応していく作業は、今後もより重要になっていくだろう。

こうして製造現から自らの企画で海外マーケットに進出するような動きが起こる一方、デジタルプリントの低コスト化や3Dプリンターの普及など、ユーザーの側ではDIYカルチャーがファッションの領域にまで裾野を広げてきた。ファッションの分野で活動するクリエイターたちの活動領域は急速に広がりつつある。

アパレル産業の枠組みの中でものづくりを支えてきた製造現場と、いま新たに広がるDIYカルチャーやメーカーズ・ムーブメントとの距離はまだまだ遠い。しかし、
ファッションを表現領域とするインディペンデントなクリエイターたちが、今回集まったトップクラスの縫製工場のような“ものづくりの現場”から学べることは多いのではないだろうか。既存のアパレル業界の枠を超えるコミュニケーションの場が、今後さらに必要になるはずだ。
 

【取材・文: 本橋康治(コントリビューティングエディター/フリーライター) 】 

全国縫製サミット

全国縫製サミット
主催団体    任意団体「日本発ものづくり提言プロジェクト」実行委員会
開催日   2013年11月23日
会場    学校法人文化学園(東京都渋谷区)

設立年月日  2010年9月7日
発起人代表      カイハラ株式会社代表取締役会長  貝原良治


登壇者
佐藤克豊氏(サンライン/青森県・紳士服縫製)
森奥信孝氏(岩手モリヤ/岩手県・婦人服縫製)
佐藤正樹氏(佐藤繊維/山形県・ニット)
白石正裕氏(ファッションしらいし/東京都・婦人服縫製)
神村尚樹氏(大阪シンコー/大阪府・シャツ縫製)
米倉勝久氏(タカラ/岡山県・婦人服縫製)
進行役
久米信行氏(久米繊維工業/東京都・ニット)

 


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