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対論シリーズ「モード・ファッションと社会デザイン」
レポート
2014.06.18
この記事のカテゴリー |  ファッション | 

対論シリーズ「モード・ファッションと社会デザイン」

モードとファッションから社会デザインを考えるトークイベント アンリアレイジ・森永邦彦さんをゲストにスタート

モード・ファッションを軸として社会デザインを考える対論イベント「モード・ファッションと社会デザイン」が2014年、新たにスタートした。「アンリアレイジ」デザイナーの森永邦彦さんをゲストに迎えた第1回トークイベント「服づくりという仕事~その楽しさとむずかしさ」が2014年1月、coromoza(東京都渋谷区)で開催された。

アンリアレイジ・森永邦彦さんはその動向に注目が集まるファッションデザイナーの1人
主催するモード・ファッション研究会は、モード・ファッションを軸として社会デザインを研究する団体だ
「フォトクロミック」という特殊な染料を使った糸を素材に作られたアンリアレイジ2013年A/Wコレクション「color」
一見すると白い服に紫外線を当てるとカラフルに変化する
2014年S/Sコレクションの「SIZE」はダイヤルを回すことで着丈やフィットを調整し形を変える服だ
聞き手を務める北山晴一立教大学名誉教授
 
この企画を主催するモード・ファッション研究会」は、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科・文学研究科比較文明学専攻の北山晴一研究室を中心に発足した、ファッションと社会デザインを考える研究会。

ストリートファッションやライフスタイル、消費行動から、小売り、流通、ものづくりの現場等に至る幅広い領域での調査・研究を目指している。

対論シリーズ「モード・ファッションと社会デザイン」の第1回となる今回は、北山教授を聞き手として、東京のファッション・デザイナーの中でもその動向に注目が集まる1人である森永邦彦さんと「アンリアレイジ」のクリエイションについて明らかにしていくという内容だ。

まず「アンリアレイジ」のコレクションの中から紹介されたのが、2013年A/Wコレクションの「color(カラー)」と2014年S/Sコレクション「SIZE(サイズ)」。前者は「フォトクロミック」という特殊な染料を使った糸を素材に作られた服で、一見白く見えるが紫外線を当てるとカラフルな服に変わるというもの。

後者はダイヤルを回すと着丈やフィットが調整でき、形を変える服。 ダイヤルはサイズやボリュームを調整するのに使われる象徴的なものだが、サイズという概念に最も密接な存在である洋服にダイヤル機能をつけたらどうなるか、という発想から作り出されたものだ。

森永さんの服づくりは、彼が早稲田大学に通う普通の大学生だった頃にスタートした。大学の先輩であった神田恵介さんの「
ケイスケカンダ」のショウを見たことがきっかけだった。
 
「人と違う見方、周囲と違うことをすることで高く評価をされるファッションの懐の深さと“外れていくことの快感”に惹かれたんです」(森永さん)
 
最初は素材使いや縫い方、タグを付ける位置に至るまでケイスケカンダと同じような服づくりをしていた森永さんだったが、やがて神田さんとは全く逆のベクトルを目指すようになる。その根底にあるのは、他の誰も手を出していないようなデザイン領域に踏み込んでいきたいというシンプルな意思だという。
 
「こういう服があればいいな、という発想はいろいろとありますが、実現不可能な服ばかりです。でも馬鹿みたいに続けていると、たまに実現することがあるんですよ。それを信じていつも服づくりに取り組んでいます」(森永さん)
 
「見せるためだけの服を作るつもりは全然ない」という森永さんの服づくりには、前例のないものが多い故に生産現場との葛藤もある。ブランドを立ち上げた当初はサンプル通りに量産が上手く行かない、というケースもあったが、同じ工場とのものづくりを続けてきたことで、製品の精度も向上したという。
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アパレル企業や流通、研究者から学生まで幅広い層の観客が集まった
会場のcoromozaは服づくりもできるファッションのコワーキングスペース
森永さんは2009年S/Sコレクション「○△□」の発想方法を用いた服づくりのワークショップを台湾で行った
2009年S/Sコレクション「○△□」は森永さんにとってターニングポイントとなったコレクションだという
球体、ピラミッド、立方体に合わせて作られた洋服が、人が着られる形にもなっている「○△□」の服
2010年A/Wコレクション「WIDESHORTSLIMLONG」は縦横の縮尺を変化させたもの。これも国内外で大きな話題を集めた
アンリアレイジ創業からのエピソードを笑いも交えながら語る森永さん。参加者からの熱の入った質問にも丁寧に回答していた
 
森永さんを含む3人の「アンリアレイジ」創業メンバーは、いずれも服造りの教育や経験がないところからスタートした。それ故に、工場への発注の仕方から1つひとつ、自分たちでやってきたことが、かえって現在に生きているという。

百貨店での取り扱いもある現在も、売り方に至るまで自分たちのオリジナルを大切にしている。
 
「コレクションで発表したものは全部売りたい、という気持ちで作っています。現場で売りやすい商品と売りづらい商品はやはりあると思いますが、幅広くMDを揃えるのではなく、自分たちの得意なゾーンだけを厚く積む、という経営方針でやっています」(森永さん)

「約10年間という歴史の中で転機となったのは?」と言う北山教授の問いに対して森永さんが挙げたなかで、印象的だったのが、2009年のコレクション「◯△□」だ。

それまでは「誰よりも時間をかけて1着を作る」というコンセプトで手作業にこだわっていたアンリアレイジが、敢えて手を動かすことを禁じて考え抜くことで生まれたコレクションだったという。

球体、ピラミッド、立方体にそれぞれ合わせて作られた洋服が、人が着られる形にもなっているもので、これは工場が作るのも簡単で、それなりの価格設定ができて量産がきく、しかも他にない個性もある、という画期的なコレクションとなった。森永さんは2013年にこの「○△□」の発想を用いたワークショップを台湾で行ったが、言語が通じなくても多様な服ができあがることを示すことができた、という点で貴重な体験になったという。
 
「基本的に、人の身体にフィットさせるものがあまり好きではなかったんです。人の身体にフィットするものを作るのは既製服では限界がある。ならば誰の身体にも合わない洋服というのはどうかと思ったんです。誰にもフィットしないということは、誰でも着られるということに繋がるんじゃないかと考えたんです」(森永さん)。

こうしたアンリアレイジの「フィットしない服」の源流にあたるものとして、北山教授は80年代に三宅一生、川久保玲、山本耀司らもたらした「黒の衝撃」があること、さらに 1920年代フランスの女性デザイナー、マドレーヌ・ヴィオネ(Madeleine Vionnet)のデザインに日本の着物が影響を及ぼしている点などを指摘し、西洋服飾史を踏まえ考察する。

現在の服づくりを担う作り手のリアルな視点と、研究者が示す社会学的視点からの意見が交わる、刺激的な内容となった。

ファッションに関するシンポジウムやトークイベントは多く催されているが、こうしてじっくりとした議論を聞くことができる機会は多くない。この「対論シリーズ」は今後も継続して開催される予定なので、さまざまな角度から「(衣服を)着ること」や「ファッション」の意味を問い直していくとともに、幅広い視点を持つ参加者が交流する場となっていくよう期待したい。
【取材・文: 本橋康治(ACROSSコントリビューティングエディター/フリーライター) 】 


モード・ファッション研究会
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058-296-4184/hirakawa@gifu-cwc.ac.jp
●東京事務所
株式会社パルコ「アクロス」編集部内
takano@web-across.com

対論シリーズ「モード・ファッションと社会デザイン」 
第1回「服づくりという仕事~その楽しさとむずかしさ」
日時 : 2014年1月31日(金) 
会場 : coromoza(東京都渋谷区神宮前6−31−21 オリンピアアネックス)
ゲスト : 森永邦彦(ANREALAGE デザイナー)
聞き手 : 北山晴一(立教大学名誉教授) 
 


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