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ミズベリング・プロジェクト
レポート
2014.06.30
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ミズベリング・プロジェクト

河川の魅力を生かしたまちづくりが加速
東京リバーサイドのソーシャルデザイン・ムーブメント

近年、まちづくりの新たなフロントラインとして活性化が進んでいる東京のリバーサイド・エリア。神田川や隅田川の河川沿いにテラスを設けたカフェや新しいスペースが生まれ、水辺を活用したまちづくりのプランもあちこちで生まれつつある。そんな水辺の活性化を目指すミズベリングプロジェクト」が2014年春にスタートし、各メディアでも紹介され注目を集めている。
 

 

浅草で開催された第1回「ミズベリング東京会議」。ミズベを愛するメッセージをのぼりでアピール
全国に存在する水辺の観光拠点の活用方法を共有、広めていくのがミズベリング・プロジェクトの役割だ
ミズべリングのスペシャリストたち。左から陣内秀信さん(法政大学デザイン工学部教授)、井出玄一さん(ボートピープルアソシエーション代表理事)、伊藤香織さん(東京理科大学理工学部建築学科准教授)、忽那裕樹さん(E-DESIGN代表取締役)、紫牟田伸子さん(紫牟田伸子事務所)、金井司さん(三井住友信託銀行経営企画部理事CSR担当部長)、藤井政人さん(国土交通省水管理・国土保全局河川環境課河川環境保全調整官)
忽那裕樹さん(E-DESIGN代表取締役)は水都大阪フェスティバルに代表される大阪のリバーサイド開発についてレクチャー。川と海の観光開発では大阪が何歩も先を行っている
世界の水辺活用事例を研究している東京理科大学理工学部建築学科准教授・伊藤香織さんのプレゼンテーション
ボードに立ちながらパドルで漕ぐSUP(サップ)は新しい川遊びのひとつ。これで都市の運河を巡るのも楽しそうだ

ミズベリング(MIZBERING)」とは、ミズベ(水辺)+リング(輪)に現在進行形のINGをかけあわせた造語で“水辺の風景とまちが一体となった美しい景観を創造し続けるムーブメント”という意味が込められている。


このプロジェクトは「水辺とまちのソーシャルデザイン懇談会」から生まれたもので、国土交通省の「水辺とまちの未来創造プロジェクト」の一環としてスタート。陣内秀信さん(法政大学デザイン工学部教授)を座長に、行政、民間企業や一般市民がそれぞれの視点から水辺の魅力や価値、水辺の活用法について検討することを目指し、2013年12月末から14年2月まで4回に渡って開催されたものだ。


ここで行われた議論を通じて浮かび上がった課題の一つが、水辺の利用者、地域住民、河川管理者などの行政をつなぐ「水辺のコーディネーター」の必要性だったという。そこで、水辺に関心を持つ人々が集まり、水辺を有効活用するアイデアを創り出す場所として「ミズベリング・プロジェクト」が立ち上げられた。代表は「TOKYO SMART DRIVER」「東京ジオサイトプロジェクト」など土木系イベントを手がけてきたSCOP(東京都)の山名清隆さんが務めている。


2014年3月24日に開催されたキックオフイベント「ミズベリング東京会議」の模様を中心に、ミズベリングの活動についてご紹介したい。国交省と公益財団法人リバーフロント研究所の協力のもと開催されたこのイベントは、まちづくり系のNPOや自治体職員、ゼネコンや建設コンサルタント会社、デベロッパー、観光産業従事者、飲食店経営者、クリエイターなどのスペシャリストから単に「水辺が好き」という個人参加者まで、フェイスブックでの告知と口コミだけで200人以上が集まった。

プレゼンテーションとシンポジウムを担当したゲストは7人。陣内秀信さん(法政大学デザイン工学部教授)、井出玄一さん(ボートピープルアソシエーション代表理事)、伊藤香織さん(東京理科大学理工学部建築学科准教授)、忽那裕樹さん(E-DESIGN代表取締役)、紫牟田伸子さん(紫牟田伸子事務所)、金井司さん(三井住友信託銀行経営企画部理事CSR担当部長)、藤井政人さん(国土交通省水管理・国土保全局河川環境課河川環境保全調整官)と、いずれも水辺の開発や活性化に関するスペシャリストたちである。


 
ゲストのプレゼンテーションとして、伊藤さんからは世界の水辺づくりの先進事例が、 忽那裕樹さんからは大阪の河川エリアを中心とした活性化への取り組みがそれぞれ紹介された。大阪ではすでに官民協力で「水都大阪」プロジェクトが展開されており、中の島公園や北浜エリア(大阪市中央区)、さらに市内各所の水辺を舞台とする大型イベント「水都大阪フェスティバル」が隔年で開催されている(次回開催は2015年春)。全国区のニュースとなった道頓堀川のプール構想も記憶に新しい。

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東京都は2012年に隅田川沿いの墨田公園などを「都市・地域再生等利用区域」に指定。タリーズコーヒーが墨田公園内に新しいスタイルの店舗を出店した
ワークショップ風景。各テーブルごとに水辺活用のフラッシュアイデアをプラン化してプレゼンテーションする
ミズベリング東京会議で参加者のアイデアを「Rapid Image Share」でまとめたアイデアスケッチ
2013年に神田川・万世橋エリアにオープンしたmAAchエキュート 神田万世橋は人気のスポット
東京オリンピックを期に一気に整備された首都高速。スムーズな用地取得を図るため都心部の川の上に多くが建設されたことで川は生活空間としての役割を失った
東京スカイツリーの開業もあって観光地として活性化が進んでいる浅草の隅田川沿いエリア
川に面したテラス席でランチができるカフェやレストランが並ぶ大阪市中央区北浜の風景

イベント後半では参加者全員で「水辺の未来図」を創作するワークショップが行われた。グループに分かれて水辺の利用プランについて話し合い、出し合った意見をリアルタイムで共有するという試みだ。建築家・馬場正尊さん(Open A代表)の進行で、参加者からピックアップした水辺活用のアイデアを専門のスケッチャーがその場でイラストに描き込み、会場の大スクリーンで「水辺の未来予想図」として共有する「Rapid Image Share」という手法である。

ミズベリング・プロジェクトは今後、地方都市で同様のワークショップを開くなど全国への展開を検討している。現在、国土交通省は河川敷の商業利用を可能にした規制緩和を進めているが、水辺は法規制や商慣習などいろいろな要素が複雑にからみ合うため、アイデアを実行に移すのがなかなか難しいのが現状だ。事務局がノウハウを提供することで、こうしたそれぞれの利害調整などがスムーズに進んでいく助けになるだろう。

首都圏では、都心の神田川や隅田川だけではなく、二子玉川(世田谷区)や横浜など、各地で新しい水辺空間づくりに向けた動きがいま急速に広がりを見せている。東京都は2012年に隅田川沿いの墨田公園などを「都市・地域再生等利用区域」に指定し、民間事業者としてタリーズコーヒーが墨田公園内に店舗を出店。神田川の万世橋エリアでは
mAAchエキュート 神田万世橋や神田川に面したテラスが設けられたデニーズ秋葉原中央口店といった人気スポットが生まれている。

さらに今後、首都高速環状線の建設に伴い、日本橋周辺の神田川上を通る首都高速道路の撤去と川を中心とした新しい都心のまちづくりに向けた議論が高まっている。現在進行中の渋谷駅再開発計画の中でも、渋谷川を中心とした公共空間づくりが盛り込まれている。都市部でも水辺空間が重要な観光資源となり得る、という認識は各地に広がっている。

アート、建築、都市計画、地域交流といった分野で活動するメンバーで構成され、水辺空間を使った多彩な遊び方や空間づくりを提案する「
ボートピープル・アソシエイション」のように、クリエイティブの視点から水辺にアプローチする動きもある。大阪のように自治体発信のアートイベントなどに結びつけば、今後ミズベリング・ムーブメントはまだまだ面白くなるはずだ。

日本では古くから、水辺はインフラであると同時に文化交流の場としても重要な存在だった。しかし近代以降、東京や大阪などの大都市では主に産業を支える基盤として利用されてきた。これから都市の水面に触れる機会を増やし、さまざまな角度から使い方を考えることで、川辺を新たな公共空間として魅力的に再生させることが求められている。「水辺空間のリノベーション」への可能性は大きく広がっている。


【取材・文: 本橋康治(コントリビューティングエディター/フリーライター) 】 
 

 

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