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BCTION(ビクション)
レポート
2014.09.11
この記事のカテゴリー |  カルチャー | 

BCTION(ビクション)

解体を目前にした東京・麹町のオフィスビルまるごと1棟が舞台。
70組以上のアーティストが参加したストリートアートプロジェクト

「札幌国際芸術祭」や「瀬戸内国際芸術祭」「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」など、地方都市を舞台に、その土地の自然や建物を活用した大規模アートプロジェクトが盛り上がっている。一方、東京都心部では、「六本木アートナイト」や「AOSANDO ART FAIR」のように、デベロッパーや企業主催のものが多いのが現状だ。


そんななか、東京の千代田区麹町にある解体予定の9階建てのビル1棟を使ったアートプロジェクト「BCTION(ビクション)」が、9月15日まで開催中だ。広さ3,600平米以上、参加アーティストは70組以上という大規模なもので、壁一面にアーティストによる壁画が描かれ、ストリートアートの魅力が凝縮された類を見ないプロジェクトである。

企画・運営を行うのは、大山康太郎さん(35歳)、嶋本丈士さん(31歳)。大山さんはライブペインティングから楽曲制作、DJまで手掛けるアーティストで、NIKEがプロデュースしたアート展でのライブペインティングや、任天堂キューブ用ゲームソフトへの楽曲提供にも携わってきた。嶋本さんはサンフランシスコ美術学校を卒業後、VANS JAPANのカタログや映画「CUT」のスチール写真等の幅広い分野で活動している写真家だ。
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企画・運営を行う写真家の嶋本丈士さん、美術家の大山康太郎さん。
会場となったニュー麹町ビルを提供したのは、東京で主に投資用マンション開発を主に手掛ける(株)インヴァランス。2013年夏に同社が取得した同ビルは、耐震性不足のため建て替えが決まっており、代表取締役の小暮学さん(38歳)が、かねてから交流があった嶋本さんに「取り壊し前に何かイベントをしてみないか」と持ち掛けたことがきっかけとなった。

「不動産デベロッパーとして東京をもっと豊かに、もっと元気にしたい。物件は壊された瞬間に忘れられますが、アートがそこにあれば記憶に残る。多様性を持つことで街が活気づき、街の価値も高まると考えています」((株)インヴァランス 代表取締役/小暮 学さん)

企画において重視したのは、一部のアート/カルチャー好きだけでなく、老若男女、外国人にもアピールするようなものにすること。約3カ月かけてプレゼンテーションを繰り返し、企画を練っていったそうだ。

「大規模なビルなので、アートショーというよりも美術館を作るイメージですすめました。日本ではどうしても壁画=ストリートアート=反社会的というイメージがあるので、そこをパブリックなものとして認識してもらえるよう苦心しました」(嶋本丈士さん)
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始めは大山さんと嶋本さんが知り合いのアーティストやギャラリーに声を掛けてアーティストを招集したが、さらに二次的、三次的に広がり、予想を上回る人数が参加することに。また、HPにアーティストインタビューを公開してからは、SNSを通して参加を希望するアーティストも増えたという。ジャンルはグラフィティやライブペイント、メディアアート等多彩。最終的には、仙台から福岡までの、20歳~39歳までの幅広いアーティストが集まったそうだ。

「アーティストがさらにアーティストを呼び、自分達には手の届かない人脈に拡散していきました。僕らが完全にプランニングするのではなく、アーティストが遊べる場所として、有機的に作りあげたいと思ったていたんです」(大山康太郎さん)
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場所は四ツ谷駅、麹町駅から徒歩約5分で、オフィスビルが立ち並ぶエリア。かつて入居していた企業名の袖看板が並び、つい最近までオフィスビルとして機能していたことを感じさせる。会場内は、広々とした部屋の壁、床、ときには天井にも目いっぱいに絵が描かれており迫力満点。さらに作品の境界線が区切られておらず、タッチも画風も異なる絵がうまく混在しているのが面白い。また、足を一歩踏み入れると画材の匂いがしてくるのも、他にはないライブ感だ。

また、実存しない10階の空間をインターネット上に設けているのもユニークな取り組みの1つ。「#BCTION #10F」のハッシュタグを付けて画像をアップロードすると、仮想空間上で展示されるというもの。もともとは現場に来ることができないアーティストの展示フロアとして設けられたものだが、実際には来場者が現地で撮影した写真をアップロードしたり、またこの仮想空間をきっかけにBCTIONの存在を知って実際に来場したりと、双方向に広がっている。
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入場は無料だが、オフィスビルの規定に基づいた運営のため事前予約が必要。来場者は、開催当初はアート好きや各アーティストのフォロアーが中心だったが、メディアへの露出が多くなると、イベント好きや近隣のオフィスで働く人等も増えたという。8月31日のオープニングレセプションにには、なんと800人以上が来場。会期中も連日100人以上が訪れ、9月10日現在で予約登録が7,500人を超えたというから驚く。

「東京のど真ん中という立地が功を奏しているとは思いますが、予想以上に反応が大きく、驚いています。取り壊されされるからこそ、そこに何かを感じて注目されているというか、逆にずっと残るんだったらここまで注目されなかったと思います」(嶋本さん)

展覧会終了後は、広告撮影やイベント等、次のクリエイティブに向けて解放される。さらに音楽やファッション、演劇、アニメやコスプレイヤー等へ広がっていくことで、より幅広く認知される着地を目指しているそうだ。
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「今後、デッドスペースの有効活用法としてムーヴメントになればいいですね。今回のように使われてない場所をアートで再利用することで、アートシーンの底上げにもなるし、ジャンルを横断して様々なアーティストが集まることで、日本のアートシーンを見渡せるようにもなる。結果として海外への発信にもなればと思います」(大山さん)

「今回のような前例ができたことでマネする人も出るかもしれないけど、どんどん広がって東京が面白くなればそれでいい。日本はアート後進国でリアルな距離感のアートがないから、新しい風穴を開けられたら」(嶋本さん)

企業にとってはイメージ向上やPRの機会、アーティストにとっては自由な作品発表の場として、双方のニーズが合致して実現した今回のプロジェクト。2020年のオリンピックや金融状況の改善、また耐震対策などの理由から都内ではビルの建て替えが今後増えると思われるが、このBCTIONという成功事例は、廃ビルの有効活用に新しい選択肢を与えたといえるだろう。

取材・文 緒方麻希子+ACROSS編集部

BCTION(ビクション)

 会期:2014年9月1日(月)~15日(月・祝)

会場:ニュー麹町ビル(全9フロア)
主宰:大山康太郎(美術家)、嶋本丈士(写真家、クリエイティブディレクター)
協賛:株式会社インヴァランス
ターナー色彩株式会社
 
<来場方法>
来場にあたっては、下記のサイトより事前の予約登録(無料)が必要です。
登録後に本イベントの展覧会場の詳細が記載されたメッセージが届きます。

予約登録サイト:http://peatix.com/event/48732 


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