定点観測海外編
第3回「定点観測 in NYC」
レポート
2014.12.
ファッション|FASHION

定点観測海外編
第3回「定点観測 in NYC」

「定点観測 in NYC」秋冬版を実施!

2014年11月15日(土)に実施した第3回目の「定点観測in NYC」をレポートしたい。

観測地点はソーホー地区。ファストファッションブランドなどマスなお店が並び観光客で賑わうブロードウェイ大通りと、1、2本外れたハイブランドが並び、地元のファッショニスタが比較的多いマーサー通りとグリーン通りの交差点だ。

カウント結果
●通行人数:合計2,299人      前回:1,786人
男性合計:1,019人(44.4%)   前回:795人(44.5%)
女性合計:1,280人(55.6%)   前回:991人(55.5%)

●カウントアイテム:男女リュック
男性:129人(12.6%) 
女性:84人(6.6%)

★スナップ/インタビューはこちら

◎カウントアイテム:男女リュック
ファッションアイテムとしてバリエーションが豊富に!

これまでNYでリュックと言えば、THE NORTHFACE(ノースフェイス)などのスポーツブランドのものが多かったが、今秋冬は、ストリートを歩く若者の間でも多種多様なものが見られるようになっていることから、今回のカウントアイテムとして決定した。

まず注目したいのが、ファッション関係者など一部の高感度の男性間で浮上しているレザーのリュック。しっかりした型の大きめなデザインが特徴で、中でも、オールレザーのものが目立っていた。2〜3年前に職人のクラフトマンシップが感じられる革製品などを中心にブレイクした、経年変化を楽しむというポートランド系のトレンドの流れとも言える。

次に多いのは、モデルを含むファッション感度の高い女性達が携帯する小振りのリュックだ。コレクションブランドのバッグを持つような“気取った”スタイルをクールとしないニューヨーカーの空気が感じられた
一方、男女共に人気だったのはキャンバス地のリュックFILSON(フィルソン)等のヘリテージブランドによく見られる、キャンバスのボディ+レザーベル トのストラップのようなデザインのもの。ストリート系やアウトドア系、上品なコートを羽織った女性まで、幅広い層に着用されていた。

最後に注目したいのが、アジア系の裕福層とストリート系ファッションを好む10代後半の黒人キッズ達が持つMCM(エムシーエム)GIVENCHY(ジバンシー)等のブランドのリュックだ。特に、ブランドを象徴するようなロゴ入りでレザーのタイプが人気となっていた。前回取り上げた「カモフラ柄アイテム」では、A BATHING APE(ア・ベイシングエイプ)のオリジナルの柄が人気だったが、今回も“一目でブランドが分かるデザイン”を好む傾向が見てとれた


◎ MA-1
コレクションでアレンジされた
“MA-1”スタイル

ズーム1は、東京でも 11月に取り上げた「MA-1」とした。2014年秋冬のパリやNYのファッションウィークでも、MA-1の生地を使ったドレスやブルゾンなどストリートとモードがミックスしたエディター風の着こなしが多く提案されていたが、NYのストリートでも着用者が増えていた

最も多く見られたのは、古着屋で安価で購入したALPHA(アルファ)社のようなクラシックなブランドをビンテージミックス調に着こなしたグループ。男性はジャストサイズ、女性はややオーバーサイズのもの+スキニーパンツでバランスをとった着こなしが目立った。
一方、形はMA-1のブルゾンに、ワッペンや刺繍、袖の切り替えなどアクセントを加えたデザイナーズブランドのものも少なくなく、定番のセージグリーンや黒の他、ネイビーやバーガンディ等カラーバリエーションも豊富だった。

日本との違いが見られたのは女性の着こなしだ
。日本では、スカートのような女性らしいアイテムのハズしとして着用されていたMA-1ジャケットだが、NYでは黒のスキニーパンツ+スニーカーやチェルシーブーツといったハードなアイテムと組み合わせた“強い女性像”をストレートに感じさせるコーディネートが多かった

◎ズームアップアイテム2:ワントーンカラー・スニーカー

数々のブランドがこぞって発表したトレンドアイテム


カニエ・ウェスト×NIKEの真っ赤なAIR YEEZY 2やMaison Martin Margiela(メゾンマルタンマルジェラ)のSCI-FIスニーカー、Y-3×adidas(アディダス)のQASA HIGH、Christian Louboutin(クリスチャンルブタン)のスタッズスリッポン等、コレクションブランドを含む数々のブランドがこぞって発表したワントーンカラーのスニーカーが、今秋冬のストリートにも登場している

ハイブランドが発表した、いわゆるハイテクタイプのスニーカーを履いているのは男性が中心。価格帯は、ジャケットが20万円するデザイナーズブランドで 5〜10万円前後で、ラグジュアリーブランドのジャケットなど高額なアイテムよりも手に入り易い価格帯や、サイクルの早いアイテムと比べ手入れすれば長く着用できる点、更に、プレミアがついた際にはEBAY等のECサイトで何倍もの値段で売れるという点で人気となっているようだ。

男女共に人気だったカラーは白。女性には、NIKEやCONVERSE等のスポーツテイストのものが人気となっていた。これは、Normcore(ノームコア)スタイルの象徴的なアイテム(NIKEのROSHE RUNやadidasのStan Smithの等スニーカー)で主流となっていた白いソールから、徐々にワントーンカラーへと移行していった印象だ。一方、汚れのない真っ白なスニーカーが富 の象徴とされているNYのHIPHOPカルチャーの影響から、曇り一つないコンディションに保たれた男性スニーカー・スタイルも印象的だった。

次に多かったカラーは黒。オールブラックのモードなファッションに黒のスニーカでスポーツテイストをプラスした着こなしが目立っていた。また、カニエ・ ウェストのAIR YEEZY 2きっかけに、様々なブランドから発表されている赤一色のスニーカーも若者の人気を勝ち取っていた。

◎番外編

ピックアイテムの他に注目したいのが、今年は日本でも主流となっているロング丈のアウターだ。NYの女性の間では、膝丈〜それ以上の長さのロング丈のコートが浮上している。足元に合わせるのはスニーカーやブーツ、ヒールなど様々だが、足首を覗かせてコートの重たい印象に軽さをだした着こなしが共通していた。

次に筆者が注目するのは、「VAPORIZER(ベイポライザー)」(電子タバコ)を使用する人々である。電子タバコは、タバコに比べタールなどの不純物が少ないとされ、健康意識の高いニューヨーカーに禁煙のアイテムとして使用されるなど、2年程前から流行している。従来のタバコ型や電動式で繰り返し使えるペン型のもの、また 大容量のタンク型等、様々な種類のものがみられ、デザインもスタイリッシュになっている他、ここ数年で専門店が次々とオープンしている。更に、イギリスのオックスフォード辞典は2014年を象徴する単語として、電子タバコを吸う行為を意味する「VAPE(ベイプ)」を発表するなど、その人気は益々高まっている。

日本でも年々厳しくなる喫煙エリアの分別だが、ここNYでは基本的にどの店でも室内の喫煙が禁止されている。クラブやバーなど野外の喫煙スペースが実は重要な社交場となっており、社交目的の「ソーシャルスモーカー」でも禁煙している感覚で従来通り空間を楽しめるという点も人気の理由のひとつだ。更に、その価格にも注目したい。NYでは1ケース1,500円と高額なタバコだが、電子タバコであれば、2,000円〜4万円までと価格帯に幅はあるが繰り返し使える本体+中身として使用する一瓶1,000円程のリキッドの購入で3日〜1週間の使用が可能なので、タバコよりもコストを抑える事ができると言われている
健康への影響など問題点は多いが、今後ファッションアイテムとしてどのように普及していくのか楽しみなアイテムだ。



<考察>
さて、最後に今回の定点観測で見えてきたポイントをあげてみたい。
これまでは機能を最重視する旅行者やストリートブランドを好む10代〜20代の若者のものであった「リュック」が、ファッション関係者のような高感度の男性のアイテムとして浮上
一方、アジア系の裕福層やブラック系のストリートキッズの間では、前回同様にMCM(エムシーエム)やGIVENCHY(ジバンシー)等、一目で分かるブランドアイテムの人気が継続していることが確認された。

日本と同時進行でトレンドとなっていた「MA-1」は、女性の着こなしに日米で違いが見られ、“かわいい”よりも“強い”女性像を支持するニューヨーカーのマインドが表像されていた。

全アイテムのキーワードに、コレクションブランドが登場していた今回の定点観測。
どうやらこれまで主流となっていたNormcore(ノームコア)に、ブランドアイテムを一点プラスするスタイルへと変化していたようだ。

[取材/文:宮本諒(RYO MIYAMOTO)+アクロス編集部]





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