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■都市のコード論:NYC編  vol.03 
レポート
2015.04.22
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■都市のコード論:NYC編 vol.03 "Book Shop"

在NYC10年以上というビジネスコンサルタントのYoshiさんによるまち・ひと・ものの考察を「都市のコード論:NYC編」と題し、不定期連載しています。


本は読むためだけにあるわけではない。表紙や装幀など、本にはモノとしての価値がある。

アベニューAの「MAST BOOKS(マストブックス)ほど、それを実感できるところはない。古書ビジネスで経験を積んだオーナーが2010年にオープンした書店だ。「マストブックス」のオーナーは見た目で本を選ぶと明言する。そこに書かれていることよりも、モノとしての側面を重視するようだ。「形から入る」人は世の中に少なくない。

「マストブックス」が取り扱う本は幅広い。先日訪れたときには、セリーヌの「なしくずしの死」三島の「金閣寺」が並べてあった。どちらも米国の初版で、特徴のある表紙のイラストが目をひく。そうかと思うと、アートの理論誌「オクトーバー」の創刊当初の号がそろっていたり、書体デザイナーのヘルマン・ツァップよる小ぶりの冊子がさりげなく入口に置かれていたりする。

どうやら本人がいうほど内容が軽視されているわけではないようだ。特徴のある本ばかりだが、手が届かないような高価なものは少ない。廉価のペーパーバックも多く、今日はどんな珍しいものがあるだろうかとつい立ち寄ってしまう。

モノとしての本がアートとみなされるとすれば、アート・ブックが珍重されるのは当然だ。

ダッシュウッドは2005年からボンド・ストリートで写真を専門に扱っている書店だ。

写真の世界を知りつくしたオーナーが、自分の目で選び、世界中から買い付けた本が並ぶ。東京で出たばかりの写真集があれば、ベルリンで買ってきた稀少性の高いものもある。ジム・ゴールドバーグアリ・マルコポロスなどの著名な作家からこれからの新しい作家まで、取り扱う作品集と写真の歴史・トレンドとの独自の距離感に、「ダッシュウッド」らしさがある。

本を選ぶときには、その内容 (作家や作品) だけではなく、本のつくりも重視する。同じ作家による写真集でも、日本版の方が人気が高いことはよくあることだ。日本の製本技術の高さが世界的に評価されている事実は、日本でもっと知られていい。

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ニューヨークでは次々と書店が店を閉じていると伝えられる。だが、それに逆行するように、新たにオープンする書店も少なくない。

大切な人にプレゼントを贈るとき、アマゾンで買う人はいない。本を贈るにしても、特別なものを選ぶだろう。近年のアート・ブックは部数限定で通し番号が付いているものが多い。作家がサインしているコピーがあれば、歴史を経たエディションもある。

この作家のこのエディションにはどんな背景があり、どのような経緯を経てここにあるのか。「マストブックス」「ダッシュウッド」では、ほかにはない「この一冊」を見つけることができる。どこにでもある本ばかり並べている書店はなくなっても困らない。アマゾンがあれば十分だ。


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奢侈品だけが書店が生き残る途ではない。

ブルーストッキングスは1999年にフェミニズムの書店としてオープンした書店だが、その後、別のオーナーとなって再オープン。セクシュアリティからアクティビズム、エコロジーまで幅広い分野を取り扱うようになっている。この書店はそこで働く人たちが共同所有する協同組合というのも面白い。トランスジェンダーの人はもちろん、非トランスジェンダーの男性も共同所有・経営に参画している。


ジェンダーをめぐる本の豊富さは言うまでもないが、ニューヨークに関する珍しい本もとりそろえている。セクシュアリティと都市は切り離すことができないのだろう。

「ブルーストッキングス」はロウワー・イースト・サイドに店を構えている。伝統的にカウンター・カルチャーやアクティビズムが盛んなネイバーフッドで営業しているのは偶然ではない。 店内にカフェはあるがwifiはない。ヘッドセットをつけてラップトップを叩くのではなく、顧客同士の会話を促すためだ。


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これらの書店はいずれも、専門性の高い分野で独自のプレゼンスを築きあげている。その市場は巨大ではないが、熱心な顧客に支持されているのがなによりの強みだ。と同時に、特定の層のニーズに応えることで、ビジネスとしても成功している。

特化した書店といっても、排他的な重い空気はない。専門的な知識をもつ人が働いていて、本を選ぶのを助けてくれる。自分の関心や好きな作家をいえば、関連する作家を教えてくれるだろう。オーナーやそこで働く人たちと話をするのは、書店を訪れる楽しみのひとつでもある。

書店に寄ったとき、私は必ずいろいろなことを聞いてみることにしている。よく知っている作家のことであっても、返答にその人の独自のアングルをみることができるからだ。
 
ニューヨークにはニッチな書店がたくさんある。そこにどんな高い文化的価値や社会的意義があったとしても、自力で持続できなければ意味がない。
 
実は、ニューヨークのニッチな書店の顧客は世界中に広がっており、世界中からニューヨークで開催されるアートフェアやブックフェアなどを訪れた人たちが、「マストブックス」「ダッシュウッド」などを訪れる人が少なくないのである。稀少本は、デザイン、建築、ファッションといったクリエイティブ系のビジネスに従事している人が買っていくという。また、もともとニューヨークにはデザイン系の事務所が多い。彼らにとっては不可欠な資料だ。

「ブルーストッキングス」のようなニッチな書店が売上だけで経営を続けていることは、 このシーンを支持する人たちがニューヨークにどれだけ多いのかを示唆している。

都市は書店を求め、書店も都市を必要とする。
「ブルーストッキングス」では頻繁にイベントが行われている。本に限らず、編み物、ウクレレからヨガまで、多くの人たちが集まってくる。近年は独自のCSA (コミュニティが支える農業) も運営している。

イベントは書店にとって集客の効果がある。顧客にとっては、似通った関心をもつ人たちと知り合い、新しいことを学ぶきっかけになる。

「ブルーストッキングス」をみていると、本は人が集まる口実にすぎないようにもみえてくる。

「ダッシュウッド」も作家を招いたレセプションを頻繁に行っている。オーナーが世界中の作家を直接知っているからできることだ。作家がサインすることで、買った本は自分だけの特別なものになる。「ダッシュウッド」を媒介して、作家と顧客が直接話しをすることができるのである。

1980年代のロウワー・イースト・サイドを撮った「Invisible City」のリプリントが昨年末に発売されたとき、「ダッシュウッド」作家のケン・シュレスと話す機会があった。

1988年にシュタイデルから出版されたこの写真集には、ルイス・マンフォードの引用が多く使われている。都市を撮った写真集としては当然なのかもしれない。

そのことを言うと、1980年代に古書店のストランドのトイレに入ったとき、壁にマンフォードの言葉の落書きがあった、そうしてマンフォードを知ったのだとシュレスは教えてくれた。

つながりを与えること---それが書店なのかもしれない。おそらくこれらの書店が売っているのは本ではない。

オンラインの書店があるにもかかわらず、それともオンライン書店があるからこそなのか、近年、米国では独立系の書店の数も増えている。

古書や書店にはどこか懐古的な響きがつきまとう。だが、後ろ向きのノスタルジーとは無縁なところに、これからの書店のあり方があるように思える。





 

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