ACROSS Street Fashion Marketing

コンテンツメニュー
READY TO FASHION
レポート
2015.04.21
この記事のカテゴリー |  ファッション | 

READY TO FASHION

学生と産業を繋げるプロジェクトREADY TO FASHIONがトークセッションを開催

READY TO FASHIONの主催するトークセッション「日本のファッション業界とその未来とは——学生と企業による本音ディスカッション」が、2015年3月22日に渋谷ヒカリエ8階コートで開催された。会場となった渋谷ヒカリエは前日の3月21日までMercedes-Benz Fashion Week TOKYO(メルセデスベンツ・ファッションウィーク東京)2015-16AWで使用されており、その関連イベントとしてこのトークセッションも行われた。

 

READY TO FASHIONはファッション業界を志す学生たちによって運営されている団体で、2014年の7月頃に始動したプロジェクトだ。運営メンバーの佐藤亜都さん(当時早稲田大学4年生)に、団体を立ち上げた理由を聞いた。

 

「就職活動をしていたとき、ファッション業界は取っ付きにくい業界だと感じていました。学生と企業の接点が少なく、業界について深く知る機会が少なかったりして、足を踏み入れるのを躊躇する学生も少なくありませんでした。ファッションが好きで興味はあるのに、そういった理由で諦めてしまう子もいました。だったら、学生たちがファッション業界について知るきっかけになるイベント、つまり、「きっかけのきっかけ」を作ったらいいのでは、ということでこのプロジェクトを計画しました」(佐藤さん)。

 

「実は当初に計画していたのはトークセッションではなく、複数の企業と提携した大型インターンシップだったんです」と言うのは、運営メンバーの1人である廣瀬友理さん(当時立教大学4年生、元立教大学服飾研究会副代表)。

 

学生がいくつかのチームを組んで、衣服のデザイン・作成からショーの発表、そしてプレス・販売までを一貫して行うというもので、各チームはそれぞれ企業の協力を受けながら、小さな仮想アパレル企業として実際にアパレル業界の動きを体験できるという企画だったそうだ。

 

「でも、この計画はあまりにスケールが大きすぎて時間的にも金銭的にも実現が難しいということになり、今回はまずREADY TO FASHIONというプロジェクトを広く認識してもらうためのイベントとしてトークセッションを実施することになったんです」(廣瀬さん)。

 

このような事情から、今回のイベントは「第1回」ではなく「第0回」という位置づけなのだと運営メンバーは強調する。

 

 

そんな「第0回」の会場に集まったのは約150人!「想像を上回る来場者数でした」と廣瀬さんは言う。来場者の内訳は、学生と社会人がちょうど半々のようだった。

アパレル事業のコンサルティングで知られる株式会社R・B・K代表取締役の飯島薫さんがモデレーターを担当。企業側からのパネリストにはジュングループ代表取締役社長の佐々木進さん株式会社TSIホールディングス取締役の濱田博人さん株式会社ユナイテッドアローズ常務取締役の東浩之さんの計3名が登壇。また学生側からはESMOD JAPONの学生である石田万理菜さん、ファッションに関するさまざまな企画を行う学生団体FUCTORYの竹村洸介さん、フリーペーパー『ADDmagazine』を発行する学生団体ADDmagazineの野地圭太さん元早稲田大学繊維研究会の山田日貴さんの計4名が登壇し、企業側と学生側が向き合うような座席の配置となっていた。
 

 
ディスカッションのテーマは大きく分けて4つ。(1)クリエーションとビジネスのバランスについて、(2)ファッションのグローバル化について、(3)ファッション業界で働くということについて、そして(4)ファッションビジネスのイノベーションの可能性について。基本的に学生がパネリストに対して質問するという形式で議論が進行したのだが、座席の配置や1問1答のスタイルなどはどことなく“公開就活”のような雰囲気。
 

 
ちなみにこれら(1)〜(4)の問題提起は、4人の登壇学生の意見に加えて、3月17日に青山学院大学アスタジオで行われたプレイベントに参加した学生たちの声を整理したものだ。
 
 
4つのテーマはそれなりに白熱した議論を呼び、予定されていた休憩時間も省略され議論の時間にあてられるほどだった。しかしその一方で、1つ1つのテーマがとても大きかったことと、登壇者が計8名と多かったことで、各テーマについて掘り下げられず、企業側からの回答が通常の会社説明会とさほど変わりがないような印象を受けた。
 
たとえば石田さんの「圧倒的に女性服のブランドが多いのに、会社で働いている(管理職に相当する仕事をしている)のは男性が多いのはなぜ?」という質問には、「売り上げに比例して社員は女性の方が多いんです」、「最近女性店長が増えています」というよう表面的な回答が先行し、役員クラスがほとんど男性であったり、アパレル業界で働く女性たちが、実は単に管理職をキャリアアップのゴールとするのではない、女性ならではの新しい働き方、ワークライフバランスを求めている現状については「何とかしなければいけない」という回答が繰り返されるだけだった。
 
そんな中、山田さんが、「アパレル業界は長期にわたってビジネススキームが変化していないように思います。既存の土壌の上で小さなイノベーションを繰り返すことしかできないのでしょうか」と質問したところ、「アパレル業界は、わたしが就活していた頃に比べて随分変わったと思いますよ」と東さんが回答。「今後もっと速いスピードで変化していくはず」(東さん)と続けた。

さらに東さんは「最初から大きなイノベーションを目指すのではなく、できる限りの小さなイノベーションを繰り返していくことで、結果として大きなイノベーションにつながると思います」と話す。自身の経験を織り交ぜたこの回答には説得力があった。
 
 
今回のイベントは、開催されたこと自体が、まず学生たちにとってとてもいい機会になったと言えるだろう。
 
「ファッション業界はフェアな業界。年齢が若いことや企業規模が小さいことが不利にならず努力が報われる業界です。景気がよくてもつぶれる会社はつぶれるし、景気が悪くても伸びる会社は伸びる」(東さん)、「ファッション業界にはさまざまな業種があります。一消費者として体感したことを必ずビジネスに活かすことができる」(濱田さん)、「経済は文化のしもべ。文化という風が吹かなければ経済は動かない」(佐々木さん)など、企業のトップたちの多くの言葉からは“アパレル業界ではたらくこと“の一端が垣間見られたのではないだろうか。

また、トークセッション終了後には来場者同士が交流する時間も設けられ、学生のみならず社会人たちも混ざって新しい交流の場となっていた。
 
 
今後、READY TO FASHIONの活動はより具体的なものになって継続されていくという。学生と産業を繋げるというコンセプトのもと、ファッションを体系的に学ぶ場や実践的なインターンシップなどを各社と企画中だそうだ。次回(第1回?)は、株式会社ナルミヤインターナショナル代表取締役執行役員社長の石井稔晃さんのトークセミナーが同社本社にて開催される予定だ。
 
READY TO FASHIONの運営メンバーたち。前列左から高野聡司さん(早稲田大学/Uni_Share 前代表)、佐藤亜都さん(早稲田大学)、江原史明さん(立教大学)、泉澤拓志さん(早稲田大学/繊維研究会元代表)、松陰なつみさん(早稲田大学/ENJI)。後列左から前田花観さん(東京大学)、池田奈都美さん(国学院大学/ADDmagazine)、多田珠里さん(国際基督教大学/ADDmagazine)、廣瀬友理さん(立教大学/服飾デザイン研究会元副代表)、西島駿さん(立教大学/服飾デザイン研究会元代表)、宮川菜未さん(大正大学/Replus)。
 
[取材/文:大西智裕(ACROSS編集部)]
 


同じキーワードの記事