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フランス人アートユニット“boijeot.renauld“、TOKYOの街を横断中!
レポート
2015.12.10
この記事のカテゴリー |  カルチャー | 

フランス人アートユニット“boijeot.renauld“、TOKYOの街を横断中!

新しいコミュニケーションが生まれる「アウトドア・リビング」!

彼らは「アーティスト」を名乗りながら、東京の寒空の下を移動している。たしかに、手製のイスやテーブルをかついでまちを歩くようすは「アートパフォーマンス」に見える。だが、彼らはパフォーマンスというよりも、まちの調査をおこなっている。昨晩、話をしていて、そう思った。

たとえば、歩道や広場にあの家具が設置されたとき、まち並みはどのように見えるのか。さらには、まちの人びとのふるまい、見えないルール、諸々の手続きなど、直接まちにはたらきかけながら、東京のまちを理解しようと試みているのだ。それは、あらかじめ見えている問題を解くためのフィールドワークではなく、まちの潜在的な可能性を知り、関係を変革してゆくフィールドワークのやり方なのだろう。

「…常に進んでいます。」というのは、彼らのアプローチが「モバイル・メソッド」であることの象徴だ。差し入れを持って行ったら、みんなでパクパクと食べていた。常に進んでいると、お腹がすくのだ。

彼らと出会って約1時間ほどいっしょに過ごした翌日、慶應義塾大学の加藤文俊教授は自身のフェイスブックにそう記した。

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「私たちはフランスのアーティストです。これは、アートパフォーマンスです。〜どうそお座りください」
「彼ら」とは、Laurent Boijeot(ローレント・ボワジョ)Sebastien Renauld(セバスチャン・ルノー)アーティストユニット「boijeot.renauld(ボイジェ・ルノー)」と、写真家のClement Martin(クレメント・マルティン)とそのパートナーのMélanie Heresbach(メラニー・エレスバック)4人組のこと。家具の一切合財を手で運びながら、約30日間かけて東京を縦断するアートプロジェクトを敢行中なのである。

私が「彼ら」に最初に出会ったのは、11月27日(金)の午後10時過ぎ、九段下の靖国通り沿いだった。ほどよく歩道に並べられた白木のシンプルなテーブルや椅子、そのそばでは2人の男性が白いシーツを広げベッドメイキングをしており、よく見ると、その向こうにあるベッドでは既にカップルが就寝中?!というシーンを目の前に、思わず声を掛けたのだった。
 
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九段下の靖国通り沿い。とにかくびっくり! 彼らや彼らの家具などの佇まいがオシャレじゃなかったら、きっと声をかけなかったと思う。
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彼らのサイトより。マンハッタン・クロッシングのある日。


「What are you doing here?(ここで何をしているのですか?)」。

「私たちはフランスのアーティストです。これは、アートパフォーマンスです。私たちは全ての家具を、休けいしながら手で運んで常に進んでいます。私たちは浅草からはじまり、渋谷を目指します。どうぞお座りください。」

そう日本語で書かれたA4のボードを見せられ、「アーティスト」という単語にすっと腑に落ちたのだが、同時になぜこのようなことを企画したのかが気になってきた。

「いまの時代、SNSなどで人と人の距離感が近くなっているようで、案外出会う機会は減っているように思うんです。こうやって椅子とテーブルがあるとコミュニケーションが生まれるでしょ?」とボワジョさんは笑う。

「TOKYO CROSSING」と題されたこのアートプロジェクト。スタートしたのは11月21日という。ちなみに、東京の前はNYマンハッタン、ブロードウェイの125番街からローアーマンハッタンにあるシティホールまで約30日間かけて下ったそうだ。

「NYではときどき『ウチにおいでよ!』とシャワーを貸してくれる人もいましたが、東京ではそれはないですね。でも代わりに、銭湯というすばらしい公共浴場があるので4人とも毎晩通ってます!」(ボワジョさん)。
「身体があったまっていいね♡」(ルノーさん)。
「これで調べるのさ!」(ボワジョさん)と銭湯のアプリを見せてくれた。

そうこうしていたら、会社帰りらしき女性が通りがかりに足を止め、「何してるんですか?」と声をかけてきた。「フランスから来たアーティストの4人組で、浅草から渋谷まで歩いて移動しているんですって!」と説明したところ、「わあ、それは面白いですね!」と女性。「私、いつもは知らない人とかに話しかけたりしないタイプなんですけど、彼らが気になって話しかけてしまいました(笑)」。どうやら私たちのこうした“アクション”は彼らの思うツボなのだろう。

さらに、彼女は、「あ、そうだ。これを買えば10枚分の料金で1回分無料になるんですよ、どうぞ差し上げます」と銭湯の割引券を彼らに渡した。「おお、これは嬉しい!ありがとうございます!」「では、よい夢を」「ではまた」と静かに解散した。
   
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彼らのサイトより。プロジェクトスタート。“東京の東側”でのようす。
 彼らのアートワークのアーカイブは、「boijeotrenauld.com」というウェブサイトで見ることができるが、別れ際にもらったアーカイブをまとめたA5サイズのZINE(ジン)を見ると、スポンサーワークや、アートフェスティバルの一環としてのパフォーマンスも少なくないことがわかってきた。もともとルノーとエレスバックは建築学士を持ち、ボワジョは社会学士、写真家のマルタンというユニットらしく、そこには一貫して、“パブリックスペース/公共の場”への問いかけも感じられる。が、決して押し付けがましくない。「都市部に住む人たち(われわれ)は、みんな急ぎ過ぎているので、ちょっとスローダウンし、ここに座ってコーヒーでも飲んで、誰かと話したり、なんなら昼寝でもしていかない?」というユルいコミュニケーションの場を街中にさらっと提供するだけなのである。

「僕たちは常に“移動”しているから、不法占拠しているわけではないんです」とボワジョさん。

彼らがつくるシンプルなユニット家具は、移動する先々で、あたかもそこにあったかのように、すっと街に溶け込んでいるから不思議だ。実はそういったことも計算してデザインしているのかもしれない。日中はリビングルーム、夜はベッドルーム、まさに“移動する家”のようでもある。そういった経験を活かし、2015年には「2M26」という屋号でオリジナルの家具や家の設計・施行なども請け負う会社も設立。アートワークの資金にもあてているそうだ。

彼らの日々のようすや今どこにいるのかといった情報は、「BOIJEOT.RENAULD」名義のインスタグラムやハッシュタグを付けた「#TOKYOCROSSING」で見ることができる。秋葉原では通りがかりの人たちとコーヒーを飲むシーン、市ヶ谷界隈では、週末に近所に住む女性が手づくりの食事を差し入れしてみんなで食べているシーンがアップロードされているが、東京の“東側”から“西側”になるに連れ、写真の数が減っているような印象を受けなくもない。警官が彼らのパスポートをチェックしたり、家具の一切合財をスケッチした写真もアップロードされている。

「“TOKYO CROSSING”では、警官との関係もキャスティングの1人になってきた!」(ボワジョさん)。
   
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加藤教授のプロジェクト「カレーキャラバン」について熱心に耳を傾ける4人。
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彼らのサイトより。「パブリックスペース(公共空間)」は誰のもの?!
出会ってから2週間後の12月7日、千駄ヶ谷小学校付近で“アウトドアリビング”を設けていた彼らに冒頭のコメントを記した加藤教授と会いに行った(ちょっと探した!)。加藤教授がアーティストの木村健世さんパートナーの亜維子さんといっしょに実施して今年4年目となる「カレーキャラバン」というプロジェクトを、彼らに紹介したかったからである。

「カレーキャラバン」は、全国各地のまちへ出かけ、その場所で調達した食材と、その場所に居合わせた人びとの知恵をまぜあわせ、カレーをつくり、みんなで食べる、という(言ってみれば)ただそれだけのプロジェクトなのだが、その一連の行為、過程で生まれるコミュニケーションのすべてが、フィールドワークなのである。ちなみに、同プロジェクトは、“新しいコミュニケーションの場を生み出す社会貢献活動の一環”として、2015年グッドデザイン賞を受賞した。そうした見識を持つ加藤教授が導きだした彼らの実像が、冒頭のコメントであり、それは実に言い得て妙である。

「そういえばここで出会ったんだっけ」と、ふとそんなことを思い九段下の交差点で信号待ちをしていたら、「あら?あのときの…」と、彼らに銭湯券をあげた女性にばったり再会した。

「まあ、こんばんは。彼らは今日は原宿でしたよ」
「あ、そろそろゴールなんですね」
「お近くなんですか?」
「いえ、乗換え駅なのでよくご飯食べたりするんです…。お近くなんですか?」
「会社が神保町なんです」
「そうなんですか。では、きっとまたお会いしますね」
「では、また…。」

こうしたコミュニケーション、そして日常の変化こそ、彼らの企図なのかもしれない。

「TOKYO CROSSING」のゴールは、渋谷のあの場所だそうだ。

[取材/文:高野公三子(本誌編集長)]
 


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