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ベーカリー ハンスローゼン

ベーカリー ハンスローゼン

レポート
フード
2006.04.20
この記事のカテゴリー |  飲食・フーディング | 

車での移動販売を30年近く続ける
街中の老舗ベーカリー

渋谷方面の滞在箇所は神泉の他、渋谷区東
や渋谷2丁目付近など。常連客やリピーター
が中心。
子供の人気は昔と変わらずメロンパンや
チョココロネ。同店のメロンパンでなければ
食べない!というお子さんもいるのだとか。
食パンなどの食事パンも豊富。最近なぜか
バウムクーヘンが人気だというのは、巷の
スイーツのトレンドを反映しているようだ。
夕方は仕事帰りのOLや会社員が多く訪れる。
子供と女性客がメインだが、最近は男性にも
パン好きが多いそう。
自由が丘からほど近く東急大井町線沿いに
位置する九品仏店。
05年に話題となった焼き立てメロンパンの移動販売や、00年のブーム以降、アジアンフードを中心に広がりすっかり定着した感のあるネオ屋台など、無店舗で比較的手軽な事業として多様化している車での移動販売。そんな移動販売を30年前から行うベーカリーがある。川崎市・宮前平を拠点に展開する手作りパンの店「ハンスローゼン」だ。

運営するのは株式会社国際企画大和。弊社の新社屋がある渋谷区・神泉町付近にも半年ほど前から週3回程訪れており、近隣に勤めるOLを中心に人気となっている。実は、ユナイテッドアローズ原宿店のUAカフェやイデーカフェでも同店のパンが使用されているという、知る人ぞ知るベーカリーだ。昨今のトレンドである本格派のフランスパンなどのハード系パンとは異なり、同店のパンはどれもいわゆるソフト系でやさしい甘さ。日本の街中のベーカリーらしい、昔懐かしく素朴な味わいが魅力である。

「当社はもともと先代の馬渕社長のもと、西欧風の注文建築を扱う不動産業を行っていました。事業が軌道に乗り2代目へ引き継ぐ際に、不動産のような水ものだけでなく、当社が持っていた、たまプラーザ駅前の物件を利用してもっと安定した事業を行うことになったんです。そこで、実際に駅前で“今の生活に足りないもの”についてアンケート調査を行ったところ、圧倒的に『パン屋が欲しい』という意見が多く、2代目が修行をして開業に至ったのが1974年3月。やるなら安心・安全なパンを作りたい、ということで当時から素材の質と手作りにだけは徹底してこだわり続けています」(同社常務取締役、田実賢一さん)。

現在では川崎市・宮前平と世田谷区・九品仏に生産拠点を置き、宮前平店、九品仏店、鷺沼店の直営3店舗に加え、田園調布プレッセ店内をはじめとしたインショップ形式の販売コーナーを4箇所で展開。それに加え移動販売車が4台という運営形態である。

実は、同社が移動販売を始めたのは1977年のこと。当時、田園都市線沿線の街はまだ成熟しておらず、駅から離れた新興住宅地のお客様の要望に応えるかたちでスタートした。田園都市線を拠点に選んだ理由は、「新しい沿線で人気があり、おしゃれな嗜好を持った人が多く住むイメージがあったこと」というから、まさに「第四山の手」の発展と重なる。

「人が長く住む場所で、世代を越えてお客様と関わることができると考えました。当時は移動販売自体が珍しく、受け入れられるまでには苦労もありましたが、お客様の口コミを通じて徐々に信頼を得て販売地域を広げていきました」(田実さん)。

移動販売車の各ドライバーは、渋谷、横浜、北山田、南武線沿線など独自のルートを設定し、滞在するのは1日12ヶ所ほど。いかに効率良くより多くのお客様を回るかがポイントになるため、1ヶ所の滞在時間は約15分〜45分という分刻みのスケジュールだ。また、携帯電話を通じて予約注文の受注や到着時間を知らせるなど、細かな顧客サービスを行っている。販売ルートや運ぶパンはドライバー次第。売り上げに合わせた歩合制で、諸経費と返品は会社が持つ仕組みだ。

「出店のご依頼を頂くことも多いのですが、1店舗目のたまプラーザ店のように、マーケットが成熟すると大手メーカーなど競合の参入による動線の変化で撤退せざるを得ない場合もあります。無店舗販売のメリットは、いつでもマーケットを変えることができるリスクの少なさと、お客様とのやりとりを大事にしながら、需要に合わせた柔軟な対応が可能なことですね」(田実さん)。

素材は、天然水にキビ糖、海水から採った天日塩、油脂は四つ葉のバターなどを使用。1日に1,000個作るバターロールも全て手で巻き成形することからも、手作りにこだわる姿勢が伺える。イタリア産の天然酵母の食パンや、ルヴァン種を前日から自家培養しパン本来の力で長時間熟成させるフランスパン、北欧風、ドイツ風のパンから昔ながらのメロンパンやチョココロネ、クリームパン、サンドイッチ類まで、100以上という種類の豊富さはお客様の要望に応えた結果、というのも街のベーカリーらしい。

「自然素材や手作りへのこだわりは、これからも事業を継続していくための私たちの生命線でもあります」(田実さん)。

都心部での出店やネット販売などの要望もあるが、焼き立てパンにこだわり生産場所との距離や商品の性質を考慮すると、安易な拡大には慎重だ。エリアを限定し、移動販売を続ける街のベーカリーは、今後もこだわりのパンと共に安心を届けてくれる。


[取材・文/古屋荘太+『WEBアクロス』編集室]

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