■「271回目」2003年7月5日(土)実施:
■パンツの下げ履き(ネオ・サルエルパンツ)
ひとつめのズームアップアイテムは、これ。80年代後半以降、男の子を中心に、パンツを腰で履くスタイルはすっかり定番化しているが、今春夏になり、股上がかなり深く、ふつうに履いても腰まわりは下げて履いたように見え、裾に向けて急激に細くテーパードしたシルエットの「デザインパンツ」が急浮上。女の子にも浸透しているので、まさに旬なアイテムとして取り上げることにした。
この股上が極端に深いデザインパンツ。一般消費者が着用するようになったのは、77年のパリ・コレで発表されたイッセイミヤケのアジアまんまのサルエルパンツにまで遡る。その後、89〜90年頃のヒップホップ&ダンスブームで、ボビーブラウンやMCハマ−といった黒人ミュージシャンが着用していた腰に何本ものタックが入り足首で絞ってあるジャージー素材のサルエルパンツが、ダンサーやディスコ好きの間で大ブレイク。肩パットの入った派手なトップスを合わせて着用し、毎日のようにディスコに通う男性のトライブを、当時の『月刊アクロス』では「ハマ男」「ボビ男」、「ディスコスト」と命名した(!)。
その後、90年代はすっかり陰を潜めていたが、00年頃からの80年代ファッションの再解釈に拍車がかかった03年春夏、「キッチュ」ついでに、いよいよこんなヘンなデザインのパンツまでがストリートに再登場したというわけだ。
とはいえ、当時のようなスエット素材の「ハマ−パンツ」ではなく、デニムや厚手のコットン素材の5ポケットパンツがほとんど。ブランドを聞いてみると、「フラボア」が圧倒的に多く、ついで「カンナヴィス」などが上がるが、古着でかなりのオーバーサイズのジーンズを見つけ、同じようなシルエットをつくっていた子もいた。なんと、原宿には、チャンピオンのトレーナーを逆さに「履く」男の子まで出現! 確かに、遠くから見るとシルエットは似ていた(!)。
着用するのは、美容師、販売員、専門学校生、大学生など「ファッション好き」の男女。デザイントップスのレイヤードに大ぶりのアクセサリー、アタマにはターバンか中折れ帽に、トンガリ系のモード靴、と男女ともにかなりやり過ぎな印象を受ける。
01年頃から、過度にトレンドを先取りしたり、ど真ん中のトレンドを複数取り入れてゴチャゴチャなスタイリング(やり過ぎ)になっていた女の子を「トレンド大好き族」=「ファッション・アディクト族」の台頭、と分析したが、03年春夏は、「ファッション・アディクトな男の子」が登場した、といえそうだ。ちなみに、この男の子たち、ペールピンクやベージュ、くすんだシルバーや燻した感じのゴールドなど、微妙な色のグラデーションを上手にコーディネートしており、「ちょっとしたフェミ男っぷり」を感じさせる。そういえば、パンツの上にスカートのように布を巻く男の子の姿もちらほら…。80sのトレンドを90年代風に着こなす、まさに00sリミックスが始ったといえそうだ。
定点観測
2003.07.5
#271 | 実施日 : 2003.07.5 | 最高気温 : 29.0 | 最低気温 : 20.6 | 天候 : 晴のち一時曇り
271定点観測Zoom-1・解説
全文を読む
同じカテゴリの記事