ひとつめのズームアップアイテムは、これ。実はけっこう前からプレサーベイで候補に上がってはそのまま保留になっていたスタイルで、実際に観察してみると、予想以上に若者の襟足が長く、渋谷地点などでは若者の6〜7割が「ややロン毛」になりそうな勢いにまで増えていて驚いた。

しかし、ひとくちに「ロン毛」といっても、いくつかのトライブに分かれている。

まずは、いわゆる巷のトレンドなんか無縁だぜ、というアメリカ古着やエスニック系のファッションを好む層のロン毛スタイル。無造作に伸びた髪を後ろで5ｃｍほど摘んでゴム（輪ゴムだったりする）で留めたり、ニット帽やターバンなどの中にごっそりしまいこんだりという、男らしいトライブの定番でもあります。トランス系（といっても、決してギャル男が好むトランスではない）のレイブ好きやレゲエ好きのドレッド君、バイカー系などもこのトライブに含まれる。

もうひとつのトライブは、スバリ「ナル男」である。ストリートファッションの歴史の中においては、何度となく台頭してきている「ナルシスト系のオトコ」というトライブだが、直近でみてみると、これもまた00年頃から緩やかに増えていることを痛感する。それが顕著なのが『メンズノンノ』に登場する男性モデルたち。彼等のポーズや表情が、上目使いになったり、ちょっとだけ濡れているようなツヤツヤ唇が目出ちはじめたのは、まぎれもなく00年頃からで、前髪があり、後ろが長めでゆるいニュアンスパーマがかかっていたり。ちなみに、前述した「トレンド無縁系」とは若干異なり、ロン毛のケアにもこだわりがあるようだ（！）。

服がキレイ目になり、デザイナー系のブランドものが流行ると必ず浮上する「ナル男」たち。そんな「ファッション・アディクト」な男の子が全国規模で増加した今、かえって「トレンド無縁系」の男の子の無造作ロン毛の方がオシャレに見えるのは、おそらく「ナル男」も過渡期を迎えているのかもしれない。