2024年6月回の定点観測・考察レポート
定点観測
report : 2024 | 
06 / 01

#519 | 実施日 : 2024 / 06 / 01 | 最高気温 : 26.3 | 最低気温 : 17.4 | 天候 : 曇

2024年6月回の定点観測・考察レポート

昨年来のトレンドであるショルダーバッグはデザインが分散し大型化が進行。
チェック柄やソックス見せなど、色や柄を取り入れたコーディネートも増えてきた。

台風1号到来の懸念も杞憂に終わり、最高気温は26度ほどで初夏の訪れを感じられる心地よい天候となった2024年6月の第519回定点観測。あっという間に折り返しを迎える2024年の定点観測を少し振り返ってみると、今年は2月に「男女太パンツ」、3月に「男女ボリュームソール靴」、5月に「男女太デニムパンツ」と、下半身に重心を置いたコーディネートが主流化しています。

プレサーベイを経て今月のメインテーマ=カウントアイテムとして浮かび上がってきたのは、「男性斜めがけバッグ、うちビッグショルダーバッグ」。全身のバランス感には大きな変化が見られないなか、ウェアではなく小物のサイズ感に注目しました。またズームアップアイテムは、グランジっぽい90sテイストのリバイバルや “Y2K”文脈に乗って急浮上した「チェック柄アイテム」と、季節柄もあって増加したショーツやハーフパンツとリンクする「ソックス見せスタイル」の2つを取り上げました。(文責:大西智裕)

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カウントアイテム:男性斜めがけバッグ、うちビッグショルダーバッグ
バッグの小型化は女性から、大型化は男性から始まった!

久しぶりに観察対象を男性に絞った形ですが、近年の斜めがけバッグのトレンドは実は女性から始まっています。2017年4月に「ショルダーバッグ、うちミニバッグ」2018年1月に「クロス・バッグスタイル/斜めがけバッグ、うちショートストラップ」、2019年7月に「斜めがけバッグ/クロスバッグ・スタイル、うちミニバッグ」と立て続けに取り上げたように、キャッシュレス決済の浸透による財布の小型化なども相まって、ミニバッグが一般化。多くのメゾンが次々とアイコニックなバッグをリリースします。その流れは男性にも波及し、ロエベやジル・サンダーのミニショルダーバッグが大ヒット。2021年9月には「男性ミニバッグ」をテーマにしています。ところが昨年あたりから潮目が変わり、2023年4月に「クロスボディバッグ」を取り上げた際には、ストラップが幅広くマチがあって大容量のいわゆるポストマンバッグが急増。ユニクロのドローストリングショルダーバッグも大ヒットするなど、ストリートにおけるバッグのトレンドはレザー素材のミニバッグ→コットン/ナイロン素材のビッグバッグへと変化しました。

今年はポストマンバッグがいよいよマス化し、さらに00sにブレイクしたボディバッグやナップサック風のタイプなどが登場。デザインの多様化・分散が進んでいるのではということで、あらためて定点観測することにした次第です。今回はカウントの対象外となりましたが、今年は女性にもビッグショルダーバッグが人気。小型化は女性から始まり、大型化は男性から始まったというストーリーが見えてきます。

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(左)「このバッグを買ったのはY2Kっぽくてかっこいいから。リュックはガキっぽい」と話してくれた20歳の男性。 (中)「ピタッとしたTシャツなどに合わせるときはショルダーバッグをアクセサリー感覚で身につけます」と話してくれた21歳の男性。BALENCIAGAのノベルティーだったナップザックをショルダーバッグ風に斜め掛けしていた。 (右)太く平たいストラップのショルダーバッグがマストレンドに。ボリューミーなパンツ+シューズで重心を下半身においたコーディネートが一般化している。

ズームアップアイテム①:チェック柄アイテム
90sグランジテイストのリバイバルや “Y2K”文脈に乗って急浮上。その背景はブームを越えて定着した古着人気。

チェック柄といえば、2016年頃の古着ブームを背景にしたベージュ系カラー旋風に乗って“ヘリテージ・チェック”=おじいちゃんが着ているようなトラディショナルなチェック柄(ガンクラブチェックやグレンチェック等)が一気にストリートを席巻した記憶が比較的新しいですが、今年のチェック柄はというと、グランジやY2Kというキーワードを想起させるチェック柄が主流。アメカジ感強めのオンブレチェックや、パンキッシュなタータンチェックがリバイバルしています。基本はシャツで取り入れられていますが、女性にはスカートやパンツ、ワンピース等ボトムス類に多く見られます。昨年頃からじわじわと増えてきた男性のスカートレイヤードも、今春はチェック柄のスカートが目立ちました。

ストライプ柄やドット柄といった他の柄物がなかなか浮上しないことを鑑みると、ものすごい勢いで消費される“古着”という巨大な概念に含まれるレトロなムードはチェック柄と強く結びついているのかもしれません。

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(左)「DAIRIKUやOur Legacyのルックで淡い色合いのチェックシャツを見てコーデに取り入れたいと思っていました。チェック柄はジェンダーを感じさせないニュートラルなアイテムというイメージ」と話してくれた21歳の女性。
(中)切りっぱなしのデザインがグランジテイストのチェック柄シャツは、「TOKYO FASHION AWARD 2024」を受賞したFAFのもの。
(右)女性にはパンキッシュなムードのタータンチェック柄も人気。特にボトムスで取り入れる人が多い。

ズームアップ・アイテム②: ソックス見せスタイル
毎年変化するハーフパンツ/スカートの丈感やシルエットとのバランスに注目。

直近では2023年7月に「ショートパンツ/ハーフパンツ+ソックス」として取り上げていたスタイルにあらためてフォーカス。毎年同じようなテーマを取り扱っているようですが、継続的に観察していると、パンツの丈感やシルエットとソックスとのバランス感が徐々に変化していく様子がうかがえます。今年はハーフパンツの丈が長くなり、シルエットもバギーっぽいワイドなものが台頭。あるいはクロップドパンツのような半端な丈感が新鮮に映ります。今春は久しぶりに『POPEYE』的シティボーイスタイルが復活し、スニーカーやローファーに白ソックスをプラスする男性が散見されました。

女性の場合はスカートとの組み合わせも非常に多く、特にNewJeans等K-POPの影響か、グレーのショート丈プリーツスカートにソックスを合わせるスクールテイストのコーディネートが人気です。なかにはルーズソックスもちらほら。先述した男性のクロップドパンツも含め、大雑把に言ってしまえばこれもY2Kブームということになるかもしれません。

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(左)『POPEYE』のページと見まごうムードたっぷりの1枚。シティボーイのスタイルにはソックスが欠かせない。
(中)今春夏は男女問わずクロップド丈のバギージーンズが浮上している。褪色したブラックカラーが今年っぽい。
(右)白と黒のソックスをレイヤードしたかのようなユニークなデザインのソックスも。スリングバッグもナイキのものだった。


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