このところ、駅の切符売り場やコンビニのレジで、デコラティブなデザインの財布を持っている女性をよく見かける。ショップの店頭を見ても、レザー、ハラコ、パイソン、イントレチャートなどの財布が勢揃い。そこで今回は、派手になった「デコラティブ財布」を取り上げたい。
「ここ2〜3年、艶があったり、ビジューが付いたアクセサリー感覚の財布が売れています」と語るのは、ヴィア バスストップ アクセサリー渋谷パルコ店店長の三木さん。「06/07AWはシャンパンゴールドやシルバーなどのメタリックカラーが売れ筋でした。08/ssの商品ではクラッチバッグとしても使えるようなチェーンが付いた大きめのものや、表が紫で裏地がターコイズブルーなど反対色の組み合わせなど、カラフルなものが人気です」(三木さん)。バッグでは取り入れにくい、派手でインパクトのあるデザインが、財布なら気軽に取り入れられる、というのも人気の理由だろう。
実際に街頭でインタビューを実施してみたところ、財布への志向性はファッショントライブによって異なる事が分かった。
「ギャル系」や「モード系」には、ヴィヴィッドカラーのパテント素材や、メタルビジューが付いた装飾的なタイプが人気。
「インパクトのあるデザインが気に入って購入した」というのは、白いレザーに大きなゴールドの金具が付いたmiumiu(ミュウミュウ)の財布を使っていた23歳ヘアサロン受付の女性。黒いレザーに大きなゴールドのバックルが付いたフェラガモの財布を使っていた20歳・大学生の女性は、「以前はディズニーの布製の財布を使っていたが、洋服を大人っぽいコーディネートに変えたので財布も大人っぽいものを使いたいと思い、母親が使っていたものを譲ってもらった」と話してくれた。
一方、古着やアースカラーなど、リラックス感のあるアイテムを着用する「ストリート・モード系」の女性には、茶色のヌメ革の財布が人気だ。「使い込むほどに味が出るのが魅力」と語るのは、革小物ブランドgenten(ゲンテン)の長財布を使っていた美容師の女性。バッグも同じブランドのものを愛用しているのだそうだ。また、IL BISONTE(イルビゾンテ)の折り畳み財布を使っていた24歳の女性は、「アースカラーや生成のアイテムが好きなので、財布もナチュラルなものを選びました」と話してくれた。いずれもロゴが小さめで装飾が付いていない、革の風合いを活かしたシンプルなデザインだ。
デザインの志向性に違いはあるものの、両者に共通するのは財布もファッションアイテムとしてとらえている点だ。使い勝手よりも見た目を重視するという声も少なくなく、お気に入りのファッションブランドの財布を選んだり、ファッションと財布の色や素材などを統一するなど、靴やバッグを選ぶように自分なりのコーディネート感覚で選んでいることが分かった。
その背景には、PASMOやSUICA、Edyなどの電子マネーやの普及も少なからず影響しているようだ。インタビューでは、「PASMOを利用するようになってから、見た目のかわいらしさ最優先で選ぶようになった」「財布を改札の読み取り部にタッチするので、次はパテント素材で汚れや傷が付きにくいものが欲しい」という意見も聞かれた。
02年以降、東京のストリートファッションのトレンドはフェミニンでゴージャスな方向へシフト。05年末からはハイヒールやドレス、エディターズバッグなど、より一層高級感のある「リュクス」なアイテムの人気が高まっている。そんななかで、財布にもファッションアイテムと同じような高級感、トレンドのエッセンスを求める傾向が強まっていったのも自然の流れといえるだろう。さらに電子マネーが普及し、財布も「見られる」ものへと変化。ファッションアイテムのひとつとして、“モードのサイクル”に組み込まれ、さらに多様化が進みそうだ。
[取材・文/『アクロス』編集部]
レポート
2008.02.18
ファッション|FASHION
デコラティブ財布
日用品からファッションアイテムへ。モードに進化する財布をレポート
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