デトックスという言葉がメディアで頻繁に使われるようになった頃、「私のカラダの中にも絶対ヘンなモノが溜まってそう!」と多くの女性が妙に共感をおぼえたに違いない。最近、盛んに言われるようになっている「歪(ゆが)み」もそう。骨盤の歪みに始まり、背骨の歪み、脚の歪み、顔の歪み…確かに意識しはじめると、自分の身体のあちこちが歪んでるような気がしてくるから不思議だ。
骨盤の歪みに関しては、ここ何年かで注目されるようになっているが、最近では顔の歪みに関する記事(顔筋トレ、造顔マッサージ等)が目立つ。でも顔の「歪み」って、そもそもどこがどうなっているから歪むのだろうか。専門家に聞いてみた。
高橋満帆さんは大手エステサロン等での経験を積んだ後、整体や美容矯正の第一人者である勝山浩尉智(かつやまこういち)氏が考案したカイロプラクティックや頭蓋骨矯正(クラニオパシー)などの治療技術をベースに手のみを使ったソフトタッチな美容施術方法と出会い、頭蓋骨などの骨格矯正を含む美容矯正を主軸に、自分の積み重ねてきたエステの施術法を組み込んだオリジナルの施術メニューなどを開発。ひとり1人にじっくりと時間をかけられるプライベートサロンRE-Naturalbeautyを恵比寿にオープンした(高橋さんも勝山氏の下で美容矯正を学んだ一人)。
「歪みの原因は様々です。重力、人体の構造上避けられない歪み。そして、日常生活のちょっとしたクセが歪みを引き起こしていることが多いです。足を組んだり、バッグを片方の肩だけで持つ癖があったり、ワンレングスの前髪を左右非対称に分けていたり。過度のストレスも歪みを引き起こします。ほとんどが無意識に行なっていることですね。また、女性の場合は、月経周期により骨盤が開閉していますので男性に比べると歪みが起こりやすいとも言えるかもしれません。」(高橋さん)。
誰でも思い当たることが多いのでは? 女性の身体の歪みというと骨盤を中心に語られがちだが、実は頭蓋骨も大きな役割を果たしているのだという。
「頭蓋骨は23個のパーツに分かれていて、そのつなぎ目(縫合)が呼吸に合わせて僅かながら開閉しています。そのメカニズムを生かして頭蓋骨を本来のあるべき位置へと矯正していくクラニオパシーという治療技術をもとにして勝山浩尉智(かつやまこういち)氏が考案された整顔という施術があります。この整顔を受けられると顔の歪みが改善されたと実感される方が多いんです」(高橋さん)。
顔の構造は、まず頭蓋骨があってその上に筋肉が乗っていて、さらにその上に真皮やら表皮やら毛穴やら何層構造にもなった皮膚がある。外側=表面からだけ何かを頑張っても、土台の部分である頭蓋骨が歪んでいれば根本的な解決にはならないというのも確かに納得できる。頭蓋骨を意識したフェイシャルトリートメントは、顔の表面だけでなく内側からのアプローチもある。顔の内側で手が届くところといえば、残るは口の中。クラニオパシーには、口の中に手を入れて行なう施術も含まれていて、初めて受ける人はビックリするのではないだろうか。
実はこのクラニオパシー、あるきっかけがあって筆者自身がお世話になっているので、少し体験を交えて紹介したい。歯の治療を始めてから2ヶ月ぐらいが経過したある日の朝、鏡に映った自分の顔を見て何か違和感を感じた。明らかに歪んでいるというか、左右非対称ぶりが強調されている感じ。咬み合せも変わってきたので、今まで使っていなかった顔の筋肉を使ったりすることも起因するらしいが、毎日自分の顔に違和感を感じながら過ごすのはイヤで、頼れそうな相談先としてクラニオパシーを取り入れたシンメトリー整顔をやってくれるセラピスト(前出の高橋さん)に出会った。聞くと、私のように歯の治療をきっかけに顔の歪みを感じて相談に来る人も少なくないという。結果的には、施術直後に歯の治療に行くと、咬み合せがかなり改善されていると診断された。それどころか、歯科医にクラニオパシーを受けたことを恐る恐る伝えてみると、逆にクラニオパシーの奥深さについて熱く語ってくれたのだった。
「クラニオパシーを含むオステオパシー(整体)の分野は、僕がまだ歯学部の学生だった頃に、将来何か役立つかもしれないと思って興味を持っていたんです。クラニオパシーはアメリカでは医科大学でも教えられている治療法の1つなんですよ。このように咬み合せが改善された例を目の当たりにすると、やっぱり何かあるんだなと素直に思います」(オーラルプロポーションクリニック 小野貴庸院長)
というわけで、高橋さんと小野院長に直接会ってもらったほうが話が早そうなので、2人に急遽対談してもらっちゃいました。
「私が今まで出会った歯医者さんの中には、『上顎骨(前歯のさらに上のあたりの骨)が動くはずがない!』と言い切られてしまうことも多く、日本でのクラニオパシーへの理解はまだまだなのかな、というのが実感です」(高橋さん)。
「歯科医として咬み合せの治療をしていく中で、例えば左右にかかる力を理論上はパーフェクトに調整できたとしても、患者さん本人が違和感を感じたら、それは正解ではないと思うんです。その人の咬み合せのゴールは、その人にしかわからない。となると、歯科や口腔外科の領域以外のアプローチも何か役に立つものがあれば積極的に取り入れてもいいのではないかというのが僕の考えです」(小野院長)
「ひどい肩こりや首のハリは、頭蓋骨の歪みや咬み合せの悪さから来ていることも多いんです。そういうお客様にはうちの施術と並行して、歯医者さんに行ってマウスピースを作ってもらうなり、咬み合せの相談をしに行くこともすすめています。整顔と咬み合せの両方からのアプローチで、確かに改善される方も多いですね。あごの違和感などにも同じようなことが言えると思います。」(高橋さん)
なるほど。咬み合せって思っていた以上に奥が深いのかもしれない(と実感中)。歯科とサロンの両方を利用している身としてワガママを言わせてもらえば、同じビルに入っていてほしいぐらい。専門分野以外にも積極的な探究心を持った見識の高い2人のプロフェッショナルにほぼ同時期に出会えた私はラッキーだと思うが、「歪み解決」をキーワードにすると、異業種でもコラボレーションできる可能性もいろいろありそうだということもよくわかった。
話を戻すと、頭蓋骨矯正と咬み合せ改善で私に何が起こったのか! 外面的には会う人会う人に「顔が小さくなった」とか「顔が(特に下半分が)スリムになった」と言われている(かなりうれしい)。内面的にはいつの間にか肩と首のコリを感じなくなっている。今までは月に1〜2回の割合でお世話になっていた鍼もあまり必要性を感じなくなった。ただ、小顔化したといっても実際に体積が小さくなったわけではなく、正確には頭蓋骨が正しい位置にリセットされると顔に奥行きができ、結果として正面から見ると小さく見えるのだそうだ。こうして、私の「ボディケア」のカテゴリーには頭蓋骨ケアとオーラルケア(咬み合せ)が仲間入りした。
人体の構造的には、頭蓋骨は脊髄のてっぺんに乗っかっていて、脊髄の先には骨盤があり、その先は脚の骨に繋がっている。歪みを正すということは、結局は全身のバランスを意識することから始まる。ただ、実際にどこか身体の歪みを感じた時にそれを相談する先がよくわからない。自分の身体のどこがどのように歪んでいて、そのための解決方法としてはこんな選択肢がある・・・というようなことを教えてもらえるシステムやサービスがあれば、歪みマーケットはさらに拡大していくのではないだろうか。
顔に関しては、外側からだけでなく内側からも意識するようになると、フェイシャルケアの領域が、面から空間へとぐーんと広がってくる。そう考えると、ボディケアにはまだまだ未開発の領域がありそうだ。
[取材・文/会田裕美(マーケティングプランナー)]
ビューティトレンド2008:「歪み」マーケット拡大中!
2008.03.03
その他|OTHERS
数年前に話題になった「デトックス」という言葉もあっという間に浸透。
女性の美への探求心は留まるところを知らない。
今、注目されるのは「歪み矯正」?!
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