1980年8月から毎月継続的に実施している<若者とファッション>のフィールドワーク調査「定点観測」。解説ページが奥の階層にあってわかりにくい、という読者の方からの声を受け、今月より本企画枠でも調査結果の考察を記事として掲載することにした。
本調査は、基本的に渋谷、原宿、新宿の3地点で行っているが、観察するテーマやアイテムを選定するためのプレサーベイとして、直前まで、代官山や恵比寿、銀座、六本木、池袋などの観察も行っている。アイテムの選定基準は次の通り。
・「カウントアイテム」:先月に比べ、より多くの人に支持されているアイテムやスタイル =今のマスのファッショントレンド
・「ズームアップアイテム」:先月は見られなかった、または先月よりも急に着用者が増え、今後もっと増えそうなアイテムやスタイル。もしくは、今月だけかもしれないが、今シーズンのトレンドとしては取りあげておいた方がいいと思われるアイテムやスタイル
「カウントアイテム」は毎月ひとつ。大きいテーマと関連する小さい(絞り込んだ)テーマを選定している。例えば今月の場合は、「女性ストラップ靴」が大きなテーマで、「うち、女性ストラップ・ヒール靴」が小さい(絞り込んだ)テーマということになる。
各地点13:30〜14:30の1時間、以下の項目について、スタッフが通行量を測定する。
・男性通行人
・女性通行人
うち、スカート
通行人を生物学上の性別ごとに測定。カウントアイテムの対象となるものを母数(N値)とし、「カウントアイテム」の着用率を測定する。今月の場合は、「女性ストラップ靴/うち、ストラップ・ヒール靴」だ。
では、さっそく今月のそれぞれの街のファッションを考察したい。
カウント序説
■女性ストラップ靴、うちストラップ・ヒール靴
考察:2008年6月7日(金)
東京メトロ副都心線開通のちょうど1週間前の6月7日(土)に実施した第330回めの定点観測。梅雨の中休みということもあってか、各地点、いつもより大勢の人で賑わっていた。経年変化で見てみると、80年代、90年代、そして00年代と、週末の繁華街の賑わう時間帯が、かつては12時過ぎだったのが、近年、徐々に遅くなっている。特に渋谷と原宿は、ファミリーでさえ、15時過ぎた辺りからに。一方、終電の車内にも子どもを抱える若いファミリーを見かけることも珍しくなくなった。全体的に、生活サイクルが夜型化しているようでもある。
そんななか、前日までプレサーベイを行ってきたところ、今もっとも増えていて、今春らしいアイテム、ということで、「ストラップ使いの女性靴」に注目。カウントアイテムにすることにした。
00年代を通して、ファッショントレンドのベクトルが<女性らしさ>や<エレガント>、<大人(ソフィスティケイテッドな意味で)>に向かってきたことは、既に何度となく記してきたが、なかでも、<女性の足下=靴>は、その象徴的なアイテム(=意味性を持っていた)である。
少しだけ振り返ると、00年に宝島社から『mini(ミニ)』が創刊された当時は、女の子のファッションは、「X—ガール(エックスガール)」のスリムデニムにコンバースという<ストリート・スタイル>が主流だった。が、まず最初に、足下がスニーカーから一気にヒールのあるパンプスへと変化。リボンやビジューがあしらわれたもの、カラフルなパテント素材など、まるでバッグやアクセサリーのような女性らしいデザインの靴が多数登場し、それらの総称として「女靴(おんなぐつ)」として取りあげたのは 2004年2月のことである。ボーイッシュな装いに女性らしい足下という「ミックス・コーディネート」が台頭した。
その後、バッグやヘアアクセサリーなどの小物類も装飾的なものになり、また、一方で、スカートの下にスパッツ(レギンス)を重ねた「スカート・オン・パンツ」が台頭。(2001年8月4日)、翌2002年1月はカウントアイテムとして取りあげるほどボリューム化。そして、2004年3月には「女性ブルージーンズ、うち、+ヒール靴」、2005年5月「女靴、うち素足着用」、2007年8月には「女性ショートパンツ、うちヒザ上15センチ以上」など、リアルクローズ(日常着)にすっかり慣れきった日本の女性たちが、トップトレンドである<女性らしさ>という大きなトレンドのベクトルを、足下から独特のバランスにする<東京のストリートファッション>を形成していることがよくわかる。
詳細は、「定点観測」のプルダウンメニューからバックナンバーをご覧いただきたい。
東京メトロ副都心線開通のちょうど1週間前の6月7日(土)に実施した第330回めの定点観測。梅雨の中休みということもあってか、各地点、いつもより大勢の人で賑わっていた。経年変化で見てみると、80年代、90年代、そして00年代と、週末の繁華街の賑わう時間帯が、かつては12時過ぎだったのが、近年、徐々に遅くなっている。特に渋谷と原宿は、ファミリーでさえ、15時過ぎた辺りからに。一方、終電の車内にも子どもを抱える若いファミリーを見かけることも珍しくなくなった。全体的に、生活サイクルが夜型化しているようでもある。
そんななか、前日までプレサーベイを行ってきたところ、今もっとも増えていて、今春らしいアイテム、ということで、「ストラップ使いの女性靴」に注目。カウントアイテムにすることにした。
00年代を通して、ファッショントレンドのベクトルが<女性らしさ>や<エレガント>、<大人(ソフィスティケイテッドな意味で)>に向かってきたことは、既に何度となく記してきたが、なかでも、<女性の足下=靴>は、その象徴的なアイテム(=意味性を持っていた)である。
少しだけ振り返ると、00年に宝島社から『mini(ミニ)』が創刊された当時は、女の子のファッションは、「X—ガール(エックスガール)」のスリムデニムにコンバースという<ストリート・スタイル>が主流だった。が、まず最初に、足下がスニーカーから一気にヒールのあるパンプスへと変化。リボンやビジューがあしらわれたもの、カラフルなパテント素材など、まるでバッグやアクセサリーのような女性らしいデザインの靴が多数登場し、それらの総称として「女靴(おんなぐつ)」として取りあげたのは 2004年2月のことである。ボーイッシュな装いに女性らしい足下という「ミックス・コーディネート」が台頭した。
その後、バッグやヘアアクセサリーなどの小物類も装飾的なものになり、また、一方で、スカートの下にスパッツ(レギンス)を重ねた「スカート・オン・パンツ」が台頭。(2001年8月4日)、翌2002年1月はカウントアイテムとして取りあげるほどボリューム化。そして、2004年3月には「女性ブルージーンズ、うち、+ヒール靴」、2005年5月「女靴、うち素足着用」、2007年8月には「女性ショートパンツ、うちヒザ上15センチ以上」など、リアルクローズ(日常着)にすっかり慣れきった日本の女性たちが、トップトレンドである<女性らしさ>という大きなトレンドのベクトルを、足下から独特のバランスにする<東京のストリートファッション>を形成していることがよくわかる。
詳細は、「定点観測」のプルダウンメニューからバックナンバーをご覧いただきたい。
さらに短くなったボトムスのワンポイント。
<女らしさ>から<マニッシュ>への移行期?!
さて、今春、トレンドアイテムとして雑誌やテレビで紹介されているのが、「グラディエーター」と呼ばれるサンダル靴だ。もともとは、古代ローマの戦士が履いていた靴からインスパイアされたもので、バレンシアガやD&Gなどがコレクションで発表したことから、マーケットに降りてきたトップダウンのトレンドである。
そこには、ここ数年引っ張ってきた<女らしさ>とはひと味違う、<強さ>や<ワイルド>なマニッシュなイメージである。
コレクションで発表されていたような、幅2〜3センチのストラップが骨格のように足の甲からヒザ下まで30〜3.5センチほど連なった奇抜なデザインのグラディエーター・サンダルをはじめ、もう少し履きやすそうな足首丈のものなど、実は、梅春ごろから109など一部のショップでは並んでいた業界内でも注目のアイテムだったが、立ち上がりは今ひとつ。実際の街でも、ロング丈のものはほとんど見かけず、代わりに、足首ワンストラップのサンダルや、ウエッジソールのパンプス、Tストラップのサンダル、フリンジ付きやスタッズ付き、パテント素材など、まだまだ女らしさの残っているデザインのものから着用されていたようだ。
先日公開した「定点観測」のインタビューで、人気だったブランドは、「Odette é Odile UNITED ARROWS(オデット・エ・オディール ユナイテッド・アローズ)、「Fin(フィン)」、「melissa(メリッサ)」、「SLANT WISE(スラントワイズ)」、「BIRKENSTOCK(ビルケンシュトック)」、「ZARA(ザラ)」や「TOPSHOP(トップショップ)」などのSPAや、「mystic(ミスティック)」や「WR(ダブリュアール)」といったセレクトショップのオリジナルなど、トレンドのエッセンスを上手くブランドで消化した商品に人気が集中していた点も興味深い。
また、「ras(ラス)」や「ESTANER(カスタニエール)」など、今春夏のもうひとつのトレンド靴として注目されていた<女らしい>ラブリーなエスパドリーユなどは、たとえ銀座や有楽町であっても、20代よりも、30代〜40代に支持されていた。
ちなみに、5月末に出張で行った福岡・天神では、グラディエーター・サンダルが、東京よりも早い時期から、しかも20代よりも、30代〜40代に積極的に着用されており驚いた(!)。
一方、洋服のほうに視点を移すと、ボトムスが昨年よりもさらに短くなっていることに気づく(ストリート系やギャル系だけでなく、今年はコンサバ系、OLさんなどもショート丈のボトムスを積極的に履いている!)。極端なAラインだったり、超ショート丈だったりと、一見<女らしい>シルエットなのだが、実はその下に超ショート丈のパンツを履いていたり、ショート丈のスパッツを合わせるなど、<NOTスカート>なのである。
つまり、足が露出する面積は確実に増えているが、そこには<女らしさ>よりも<快活さ>や<潔さ>といった同性目線(もしくは中性?)のほうが勝っているのである。実際に、ショップでも透けるスパッツやタイツ素材のスパッツなどが再び売れているようだ、
一部では未だに秋冬に履いていたと思われるブーツ(ギャルはムートンブーツ!)も少なくなく、ストラップ靴は、その足首にストラップが付いていたり、ティーストラップだったりなど、ブーツ感覚も手伝って、足を覆うような、またはアクセントになるような、<ボリューム感のある足下>として、支持されていたようだ。
各地点の考察は、下記のページをご覧いただき、「全てを見る」をクリックしてください。
渋谷地点
渋谷地点のOVERVIEW
原宿地点
原宿地点のOVERVIEW
新宿地点
新宿地点のOVERVIEW
さて、今春、トレンドアイテムとして雑誌やテレビで紹介されているのが、「グラディエーター」と呼ばれるサンダル靴だ。もともとは、古代ローマの戦士が履いていた靴からインスパイアされたもので、バレンシアガやD&Gなどがコレクションで発表したことから、マーケットに降りてきたトップダウンのトレンドである。
そこには、ここ数年引っ張ってきた<女らしさ>とはひと味違う、<強さ>や<ワイルド>なマニッシュなイメージである。
コレクションで発表されていたような、幅2〜3センチのストラップが骨格のように足の甲からヒザ下まで30〜3.5センチほど連なった奇抜なデザインのグラディエーター・サンダルをはじめ、もう少し履きやすそうな足首丈のものなど、実は、梅春ごろから109など一部のショップでは並んでいた業界内でも注目のアイテムだったが、立ち上がりは今ひとつ。実際の街でも、ロング丈のものはほとんど見かけず、代わりに、足首ワンストラップのサンダルや、ウエッジソールのパンプス、Tストラップのサンダル、フリンジ付きやスタッズ付き、パテント素材など、まだまだ女らしさの残っているデザインのものから着用されていたようだ。
先日公開した「定点観測」のインタビューで、人気だったブランドは、「Odette é Odile UNITED ARROWS(オデット・エ・オディール ユナイテッド・アローズ)、「Fin(フィン)」、「melissa(メリッサ)」、「SLANT WISE(スラントワイズ)」、「BIRKENSTOCK(ビルケンシュトック)」、「ZARA(ザラ)」や「TOPSHOP(トップショップ)」などのSPAや、「mystic(ミスティック)」や「WR(ダブリュアール)」といったセレクトショップのオリジナルなど、トレンドのエッセンスを上手くブランドで消化した商品に人気が集中していた点も興味深い。
また、「ras(ラス)」や「ESTANER(カスタニエール)」など、今春夏のもうひとつのトレンド靴として注目されていた<女らしい>ラブリーなエスパドリーユなどは、たとえ銀座や有楽町であっても、20代よりも、30代〜40代に支持されていた。
ちなみに、5月末に出張で行った福岡・天神では、グラディエーター・サンダルが、東京よりも早い時期から、しかも20代よりも、30代〜40代に積極的に着用されており驚いた(!)。
一方、洋服のほうに視点を移すと、ボトムスが昨年よりもさらに短くなっていることに気づく(ストリート系やギャル系だけでなく、今年はコンサバ系、OLさんなどもショート丈のボトムスを積極的に履いている!)。極端なAラインだったり、超ショート丈だったりと、一見<女らしい>シルエットなのだが、実はその下に超ショート丈のパンツを履いていたり、ショート丈のスパッツを合わせるなど、<NOTスカート>なのである。
つまり、足が露出する面積は確実に増えているが、そこには<女らしさ>よりも<快活さ>や<潔さ>といった同性目線(もしくは中性?)のほうが勝っているのである。実際に、ショップでも透けるスパッツやタイツ素材のスパッツなどが再び売れているようだ、
一部では未だに秋冬に履いていたと思われるブーツ(ギャルはムートンブーツ!)も少なくなく、ストラップ靴は、その足首にストラップが付いていたり、ティーストラップだったりなど、ブーツ感覚も手伝って、足を覆うような、またはアクセントになるような、<ボリューム感のある足下>として、支持されていたようだ。
各地点の考察は、下記のページをご覧いただき、「全てを見る」をクリックしてください。
渋谷地点
渋谷地点のOVERVIEW
原宿地点
原宿地点のOVERVIEW
新宿地点
新宿地点のOVERVIEW