「ビーガン」とは、肉や魚介類を食べないベジタリアンから一歩進んで、卵や乳製品を含むすべての動物性の食品を摂らない純菜食主義者のこと。弊サイトでも過去に清野玲子さんがプロデュースする「Cafe Eight」(カフェエイト)や「VEGAN Healing Cafe(ビーガンヒーリングカフェ)」を紹介したが、海外ではカフェやレストラン以外にも、ビーガンのライフスタイルに合わせた衣料品や日常品を扱うブランドが増えている。「B never too busy to be beautiful(ビー ネバー トゥー ビジー トゥー ビー ビューティフル)」(以下、「B」)は、生き物や環境との共存を望むビーガンのためにロンドンで生まれたコスメブランド。フレッシュハンドメイドコスメを手掛けるLUSH UK(ラッシュUK)が2003年に設立し、現在、イギリスで4店舗展開している。2008年3月7日、日本初となる店舗がに新宿ルミネエスト地下1階にオープンした。イギリス以外では初出店となる。製造販売元は(株)ラッシュジャパン。
「LUSH(ラッシュ)は世界43カ国、500店舗以上で展開していますが、そのうち日本での出店は100店舗以上と、本国イギリスと並ぶ規模に広がっています。イギリス本社は日本人女性の美容に対する意識の高さに信頼を置いていますし、十分なマーケットがあると判断できたため日本展開を決定しました」(B never too busy to be beautiful PR&プロモーション 福澤さん)。
ファンデーション、アイシャドウ、リップカラーなどのメイクアップアイテムに加えて、フレグランスやバスオイル、アロマキャンドル、男性向けのシェービングクリームなども展開している。すべてイギリスで開発された調合通りに日本で生産されており、メイクアップアイテムには動物性原材料は一切不使用。化粧品にはよく、ラノリンという羊の皮脂腺から分泌されるワックスが使われることがあるが、、同ブランドは合成のラノリン様成分を代替原料としており、メイクブラシも動物の毛ではなくナイロン製の毛を使っている。動物実験を行わず、原材料を供給する会社も動物実験を行っていないことを確認してから取引を行っている。
また、一部の製品ケースや原材料をフェアトレードで購入しているのも特徴。ビーズをちりばめたアイシャドウのパッケージやボディグリッター、フェイスグリッターが入った木製ポットは、インド・ニューデリーのフェアトレード生産者団体がひとつひとつ手作りで仕上げたものクリームファンデーションのボトルカバーはモロッコの生産者コミュニティから購入している。
これまで一般的に、ナチュラルコスメというとベーシックで地味な色みのものが多かったが、「B」では原色に近い色みのものやラメ入りのものなど、ポップなカラーのアイテムが充実している。店内にはシャンデリアと鏡が輝き、まるでヨーロッパのゴージャスな宮殿や、アラジンの物語に出てくる不思議の国のようなファンタジックな雰囲気だ。
「メインターゲットは20代〜30代のファッションや美容に関心が高い女性。新宿は来街者が幅広い街ですし、ルミネエストは高感度のお客様も多いので、新ブランドへの反応を見るには適していると判断しました。イギリス本社も日本での動向に注目し、日本のテクニカルディレクターがイギリスのスタッフと一緒にカラーを作るなどの共同作業も始まっています」(福澤さん)。
ラッシュジャパンでは、今年5月の「アースデー東京2008」で、スタッフがビキニにエプロン姿(!)で簡易包装を訴えるキャンペーンを実施。その際に新ブランドとしてBのPRを行い多くの来店者につながったという。また女性誌のコスメページなどで取り上げられるケースも多く、ビーガンではない人も幅広く来店しているそうだ。
「ブランドコンセプトに賛同して遠方からいらっしゃるお客様もいらっしゃいますが、ビーガンコスメだと知らずにショップを覗かれるお客様がほとんどです。お化粧を楽しみながら環境問題に関心を持つきっかけにしてなれば嬉しいです」(B never too busy to be beautifulショップチーフ園田さん)。
ここ数年、環境問題への関心の高まりから、いわゆるオーガニック化粧品への注目が集まっている。しかし、代表的な化粧品の有機認定機関であるドイツの「demeter(デメター)」「BDIH(ビーディーアイエイチ)」、フランスの「ECOCERT(エコサート)」、イギリスの「SOIL ASSOCIATION(ソイルアソシエーション)」などはそれぞれ規定が異なる上、日本には化粧品の有機認定機関がないため、オーガニック化粧品の基準を線引きすることは難しく、一般ユーザーにもわかりにくい。そんななか各ブランドが独自の取り組みを一般のユーザーにわかりやすく伝えようとする傾向は多くなり、最近では、原料にオーガニック素材を使うことで環境保全を訴えるだけでなく、フェアトレードやパッケージリサイクル、さらには自然エネルギーの使用、動物愛護など、さまざまな活動がアピールされるようになっている。特にヨーロッパでは動物愛護の意識が高く、EUでは2009年までの化粧品の動物実験を禁止し、さらにEU内で動物実験が行われた化粧品の販売を禁止する法案が可決される動きがあり、ビーガンをコンセプトとする「B」のようなブランドはこれからより注目を集めるだろう。
(株)ラッシュジャパンはこれまでも環境に配慮した製品づくりやチャリティプログラムなどを行ってきたが、社内にエシカル コミュニケーションチームを設けて、CSR活動にさらに力を入れている。「エシカル」とは「倫理的な」という意味で、環境問題だけでなく社会問題も含めた、イギリスのCSR活動における注目のキーワード。その取り組みのひとつが緩衝材にポップコーンを採用したギフト商品の展開だ。
「ポップコーン緩衝材は、イギリスのスタッフから生まれたアイデアです。これまでは紙の緩衝材を使用してきましたが、ポップコーン緩衝材は輸送時の体積を小さく抑えることができ、二酸化炭素の排出は以前の約1/17で、コンポストとして再利用することも可能です。パルプと異なり毎年収穫できるトウモロコシは環境負荷を抑えた資材ですし、ギフトボックスを開けたときのワクワク感も演出でき、イギリスでは07年からすべての緩衝材をポップコーンに切り替えましたが、日本ではトライアルとしてお客様の声を聞きながら、よりよい選択肢を摸索したいと思っています」(ラッシュジャパン エシカル コミュニケーションチーム 椎木さん)。
イギリスでは評価を得ているが、地球にやさしいはずのバイオ燃料を作るために食糧であるトウモロコシを使うことへの不信感や、急激な価格高騰への危機感が高まる日本では、国内で自給できないトウモロコシを使うことに迷いもあったそう。トライアル販売に際して、ラッシュジャパンのウェブサイトやアンケートなどで意見交換が活発に行われている。「食べ物を使うことに違和感がある」という声も多いが、顧客に率直な意見を求めながら、日本独自の選択肢を見つけ出そうとするラッシュジャパンの姿勢が逆に印象に残った。環境問題は政治レベルでも日本独自の施策が見い出せない状態にあるが、顧客を巻き込んだこのようなCSR活動から、日本独自の環境意識が広がりをみせるかもしれない。
〔取材・文:佐久間成美(エコライター)〕
レポート
2008.07.01
ファッション|FASHION
B never too busy to be beautiful(ビー・ネバー・トゥー・ビジー・トゥー・ビー・ビューティフル)
新宿ルミネエスト店
ロンドン発のビーガンコスメが日本初上陸
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B never too busy to be beautiful
新宿ルミネエスト店
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