埼玉県入間市に、2008年4月にオープンした“三井アウトレットパーク入間”。圏央道瑞穂/八王子入間インターチェンジから500m、国道16号線沿いという立地のよさもあって、オープン以来好動員をキープしている。電車でも西武池袋線で池袋から快速で47分・特急で32分、駅から送迎バスで15分。都心部からの交通アクセスのよさが特徴だ。
三井不動産が運営するアウトレットパークとしては6年ぶり、全国で7店舗めのオープンとなる。施設総面積9万8000平方メートルという国内最大級の広さで、204店(アウトレットは181店)が出店。うち44ショップを国内初のアウトレット出店のテナントが占めている。
大規模アウトレットパークで比較の対象とされる御殿場プレミアムアウトレット(静岡県御殿場市)や軽井沢プリンスショッピングプラザ(長野県軽井沢町)といった施設が、いわば“お買い物テーマパーク”という性格が強いのに比べると、入間アウトレットパークはより地域への密着したテナント構成と施設デザインが特徴。アウトレット以外にも飲食店のほか、リフォームショップや郵便局、グロサリーストア、コンビニなどデイリーユース向けのテナントが充実している。隣接する敷地には埼玉県初出店となる会員制倉庫型店舗・コストコホールセール入間倉庫店が先行してオープン。日常の買物行動の中で立ち寄りやすい仕掛けになっている。
「立ち上がりの動員は週末で1日あたり6万人、平日でも3〜4万人くらいで推移しています。動員が予想をかなり上回り、駐車場不足や周辺道路の渋滞対応が課題となっていますが、従業員用の駐車スペースなども開放して対応しています。想定よりも動員が上回ったのは、予想よりも広域からの来店が多かったのが大きなポイントです。特に周辺エリアでは練馬、八王子、池袋といったエリアからの来店客が予想を上回って多いようです。曜日でいえば、平日の動員が好調です」(アウトレットパーク入間オペレーションセンターの相馬展之さん)。
取材した5月の時点では、平日でも昼頃のピーク時には駐車待ちのクルマが列を作っていた。ランダムに駐車中のクルマのナンバーをカウントしてみたところ、埼玉県内のナンバーが42.5%、東京24.0%、群馬6.8%、関東外のナンバーは4.8%であった。埼玉+東京市部で6割弱を占めており、平日は近隣の利用者を動員していることがうかがえる。休日と平日で異なるターゲットを動員していることが、好調な動員に繋がっていると考えられそうだ。
アウトレットパーク入間がHOYA武蔵工場跡地を開発された物件であり、再開発にあたってはケヤキや桜などの樹木を移植した公園など約20,000平方メートルの緑地が整備された。施設も“森”をデザインテーマとして設計され、素材などにもさまざまな“エコな感じ”のイメージづけが施されているのが特徴だ。
テナント構成におけるトピックとしては、アウトレット初出店のテナントを多く揃えた点にある。ファッションだけでなく、例えばBOSE(サウンド)やル・クルーゼ(キッチン用品)といったクォリティの高い生活関連ショップが充実している。クォリティ・オブ・ライフを求める層に訴え得る、このショップのラインアップは新鮮だ。
「ターゲットは基本的にマスで、20〜40代のファミリー、カップルが客層の中心です。しかし予想以上にこのマーケットにはファッション感度の高い層の来店が多いと感じました。テナントに聞いてみても、トレンドを意識した商品が動いているショップも多いようです。若いファミリー層も多く来店してくださっていて、ベビーカートの利用が予想以上にありました。
地元のお客様が多く来店されているので、それだけに今後まだまだサービス/ソフトの充実を図っていかなくてはいけないと考えています。」(相馬さん)
確かにフードコートを含む飲食テナントはどこもかなりの混雑ぶり。近隣からの主婦層など、時間も合わせて消費したい層が来店しているのであればなおのこと、このあたりへの対応は急務だろう。
店内を歩いてみると、飲食店を除けばやはり断トツで「coach(コーチ)」の行列が目立つ。母娘連れからOLさん、ギャル層までと、幅広い女性客を誘引している。また、ビームス、ユナイテッド・アローズ、ジャーナル・スタンダードといったセレクトショップに加え、ヴィヴィアン・ウエストウッド・マンやバセットウォーカーなど、ファッション感度の高い男性客が反応しそうなショップも人気だ。
平日午後という時間帯ということもあってなのか、学生男子の4人連れ、という来店客の姿も見受けられたが、こういった風景は、従来のアウトレットではあまり目にすることのなかった印象がある。話を聞いてみると、八王子から友人同士、クルマで夏服を買いにやってきた大学生だという。まさに運営側の期待した層を動員できているようだ。
男性のファッション意識の高まり、というよりも、これはアウトレットモールの購買層が拡大し、そのなかで男性客もアウトレットモールを使いこなすようになってきたことの表れだろう。ユーザーにとってはショッピングにおける選択肢のひとつとして、より広い層に定着が進んでいるということだ。
そもそも、日本に初めてアウトレットモールが誕生したのは、今から15年前、1993年12月にまで遡る。埼玉県ふじみ野市にある「アウトレットモール R-ISM(リズム)」が第1号店だが(『ACROSS』の前身である『流行観測アクロス』94年2月号で「大型アウトレットモールの誕生!強味を生かした今後のMD戦略に期待」という特集記事でも取りあげている)が、当初は、キャリー品やアウトレット向けの“安価でそれなりの商品”が揃うボリュームゾーン向けの印象が強かった。
それが、1996年開業の“横浜ベイサイドマリーナ”(現・三井アウトレットパーク 横浜ベイサイド)あたりから、ブランドショップのアウトレットモールへの出店が進み、現在は、アウトレットとはいえブランドイメージは保ちたい、というブランドや、郊外型のショッピングセンターとさほど変わらないボリュームゾーン向けの品揃えのブランドなど、テナント側の狙いどころも実に多様化している。
年々、バーゲンの立ち上がりが前倒しになり、春夏で6月、秋冬は12月にスタートするのがすっかり定着している。となると買う側も、プロパーとセール、アウトレットという選択肢をユーザーもクールに使い分けるようになって当然のことといえるだろう。特に最初から古着もアウトレットも初めから選択肢として持っている80年代以降生まれの若者たちは、そのへんの割り切りや商品の読み取り方が上手い。
また、2000年以降、ファッショントレンドのサイクルが、早いものとずっと流行っているものとが混在するようになり、消費者側のニーズも、かつてのように、必ずしも新作ものが欲しいというわけではなくなっていることを、業界関係者は真剣に受け止めるべきだろう。
いずれにしても、今後、ますますユーザーが価格コンシャスにならざるを得ない状況が続くことは誰の眼にも明らか。アウトレットモールにもよりきめ細かなリーシング/出店、運営の戦略が求められていくだろう。
[取材・文/本橋康治(フリーライター)]
□三井アウトレットパーク入間
住 所 埼玉県入間市宮寺3169−1
電話番号 04-2935-1616
営業時間 10:00〜20:00(レストランなどは22:00まで)
定休日 不定休
HP http://www.31op.com/iruma/
□交通アクセス
西武池袋線 入間市駅より西武バス「三井アウトレットパーク行」終点。
または西武バス「入間市博物館」「二本木地蔵前」「箱根ヶ崎駅」行きで「宮寺北」下車約15分。
圏央道 入間インターチェンジ「瑞穂、八王子方面」出口から約500メートル。
□概要:
[開発主体] 三井不動産株式会社
[敷地面積] 約89,000m2
[建物構造] 店舗部分:鉄骨造2階建、駐車場部分:鉄骨造5階建
[延床面積] 約99,000m2
[店舗面積] 約32,000m2
[ 店舗数 ] 約180店
[駐車台数] 約3,000台
レポート
2008.07.04
ファッション|FASHION
20080704/三井アウトレットモール
三井アウトレットパーク入間
ドメブラ時代のアウトレットモールの登場!
関連リンク
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三井アウトレットパーク入間
埼玉県入間市宮寺3169−1
TEL 04-2935-1616
営業時間 10:00〜20:00
定休日 不定休
(レストランなど飲食店は2:00まで)
駐車場 約3200台(2時間まで無料)
交通アクセス
西武池袋線 入間市駅より西武バス「三井アウトレットパーク行」終点。
または西武バス「入間市博物館」「二本木地蔵前」「箱根ヶ崎駅」行きで「宮寺北」下車
約15分。
圏央道 入間インターチェンジ「瑞穂、八王子方面」出口から約500メートル
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