LoRo(ローロ)
レポート
2008.07.14
ファッション|FASHION

LoRo(ローロ)

帽子ブランド「LoRo(ローロ)」の人気商品にみる、昨今の”帽子事情”とは?

新店舗はこのシャンデリアに合わせて
天井高のある物件を探したというこだわり。
店舗面積は以前の半分になったが、全く
そう感じさせない開放感のある空間だ。
同ブランドは基本的に卸し業は行って
いないが、唯一バーニーズ ニューヨーク
でのみ取り扱いがあるのだそうだ。
こちらが話題の「女優帽」=「ピッコロ」。
20代から上はなんと80代の方が購入された
こともあるという幅広い層に人気の商品
である。
「ピッコロ」は被らないときは平面になり
コンパクトに収納できる優れもの。
ひとつの生地から数点しか作らないため
色柄のバリエーションもとても豊富だ。
こちらはUVカット率がほぼ100%という
商品。生地を重ね合わせて紫外線を
遮断している。
以前弊サイト「ACROSS REPORT」 でも紹介した、帽子デザイナー折原尚さんが手がける青山の帽子ブランド「LoRo」(ローロ)が、07年11月に渋谷キャットストリート沿いに移転リニューアルした。実は最近、同店の“ある商品”がテレビで紹介され、全国から多くの人が訪れているという。今回は新店舗の様子と、昨今特に変化しているという“帽子事情”について、プレスの中山耀香(ようこ)さんにお話を伺った。

移転の理由ついて、「表参道〜青山界隈の開発に伴う地上げが進んだこともあり、青山の雰囲気が変わってきたため、新しく地下鉄副都心線が通り、駅からも近く場所もわかりやすい渋谷に移転することにしました」と中山さんは語る。新店舗の広さは青山の約半分だが、商品数はほぼ同数、商品の基本ラインナップはそのままだ。

新店舗の内装は前店舗と同様、折原さん自身がデザインを担当。パープルピンクの重厚なアンティークの扉を開くと、赤と紺が基調のアーティスティックな空間が広がる。特に高い天井に吊られた大きなシャンデリアが印象的だが、新店舗はこのシャンデリアから全体のイメージを膨らませたのだそうだ。また、折原さんは旅先での出会いからインスピレーションを得ることが多く、今回は“パリの下町”をイメージ。さらにそこに、ゴシックやエスニックのテイストが混在した、無国籍でジャンルにとらわれない空間になっている。

同店は、03年10月、渋谷・神南に出店したのがはじまり。当時の主な客層は20代前半、男女比は1:1だったが、その後04年3月には少し上のターゲットを目指し、幣サイトでも取材した青山に移転。ここでの客層は狙いどおり20代後半〜30代前半がメインで、男女比は2:3に。そして今回、再度渋谷に戻った形になるのだが、新店舗ではオープン当初は男女比1:1、メイン客層は20〜30代であったが、とあるTV番組で紹介されたあと、女性客が7割に増加、客層も30代以上の方が数多く訪れるという大きな変化があった。

その大きな変化の理由とは、3月に放映されたテレビ番組「出没!アド街ック天国」(テレビ東京系列)での紹介だ。放映後1ヶ月間はオープン前から行列ができるほどで、売り上げはなんと10倍になる日も!また、同店HPのネット通販でも完売アイテムが出るなど、中山さんも番組の影響力に驚いたという。その後も地方局で再放送する度に、全国から放送商品への問い合わせが相次ぎ、OL〜主婦層の来店者が激増したのだそうだ。

さて、冒頭でも述べたその“話題の帽子”とは、前回のreport でも紹介したオリジナル商品の「ピッコロ」。同商品は頭の部分が深い(長い)デザインになっているため、その部分を後ろや横に折るなどアレンジが可能で、さらに浅く被ったり深く被ったりと深さも自在。被り方によっては顔を深く隠すことができるこの帽子は、特に女優やタレント、ミュージシャンに愛用者が多かったが、ちょうど女優さんが買いに来ているところをお客さまが見て、口コミで話題となり、いつからか「女優帽」と呼ばれるようになったのだそうだ。するとあっという間にその噂が「出没!アド街ック天国」のスタッフに伝わったようで、番組内で「女優帽」の通称で紹介されたというわけだ。幣サイトの取材当日にも次々とOL層〜年配までの幅広いお客さまが訪れ、「ピッコロ」=「女優帽」を試着、購入していた。

さらに中山さんは、この反響の背景には新たな帽子のニーズが関わっていると予想する。

「若い世代の間では一時期の帽子ブームが落ち着きましたが、30代以上の女性の間では、07年ごろから紫外線を気にして帽子を買う方が増えています。ピッコロのようにしっかり顔をカバーでき、日焼けを防止するタイプが特に人気。『絶対に紫外線にあたりたくないんです!』と鬼気迫った様子で来店されるお客さまもいらっしゃり、環境への危機感と共に、紫外線への意識が高まっているのを感じます」(中山さん)。

同店の商品は、立体的に生地を重ねて作られていることもあり、比較的UVカット率が高いものが多く、中にはカット率100%のものもある。また、通販雑誌『eyeco(アイコ)』とは“紫外線を防ぐ帽子”をコラボレーションし、通信販売もした。

近年は、紫外線の危険性について取り上げたテレビ番組も少なくない。そんなメディアの影響もあってか、街中では帽子や日傘以外にも、主婦層を中心にUVカットの超ロング手袋(アームカバー)や、顔をすっぽり覆うサンバイザーといった過剰なまでの紫外線防止グッズを、ここ渋谷でもよく見かけるようになった。とはいえ、デザインよりも機能を優先した商品が多く、今ひとつファッション性に欠ける印象も否めない。06年7月に既に幣サイトで取り上げた「おしゃれ雨具」のように、機能性に加え高いファッション性を兼ね備えた同店の商品は、うまく現代の新たなニーズにフィットしたといえるだろう。

また、デザイナーの折原さんは、NPO法人アースデイマネー・アソシエーションのスタッフに、オーガニックコットンを使った“土に還る帽子”を提供するなど、環境問題に関する創作も積極的に行っている。このような活動も、意識の高い人々からの注目を集める理由となっているのかもしれない。


[取材・文/渡辺満樹子(フリーライター/エディター)+『ACROSS』編集部]


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