布ナプキンブランド「touta.(トゥータ)」
レポート
2008.12.29
カルチャー|CULTURE

布ナプキンブランド「touta.(トゥータ)」

布ナプキンをきっかけに、循環型社会について考える。

デザイナーのユーゴさん
 「布ナプキン」をご存じだろうか。布製の、洗って繰り返し使う生理用ナプキンのことである。使い捨てが当然と誰もが思っているナプキンだが、ここ1、2年「布ナプ」が急速に広まり、オリジナルを製作するメーカーや、扱うショップが増えてきた。「一度使ったらやめられない」「生理が軽くなった」「生理じゃないときもつけていたい」と、賞賛の声も聞く。しかし未体験者には謎の領域で、使うには高いハードルがあると感じられるのも事実。オーガニックコットンやアンティークの布でひときわお洒落な布ナプキンを制作販売している「トゥータ.」を取材した。

 リメイクの子ども服などを作っていた「トゥータ.」の主宰者ユーゴさんが布ナプキンを知ったのは、ベストセラー『買ってはいけない』である。そのときは「ありえない、気持ち悪い」という、一般的な感想しかなかったという。が、自分に子どもができて食品や身につけるものの安全性を考えるようになり、同時に子ども服ビジネスが行き詰まり、何か新しいものをと思ったとき、思い浮かんだのが、布ナプキンだった。今から5年ほど前で、まだあまり普及していなかった頃だが、いくつか取り寄せ使ってみると、そのよさに驚いたという。是非これを広めたいと思い、制作販売に踏み切った。まわりにいるお洒落な人に使ってもらいたいと、インディーズマガジン「mother dictionary(マザー・ディクショナリー)」で連載をしたり、モニター調査をしながら、布やデザインにこだわった製品を作っていった。今ではネットで販売するほか、エコロジー関係のイベントや野外フェス、ショップに卸すなど、販売網も広がっている。

 実際に布ナプキンを見せてもらうと、ただの四角い布だったり、スナップがついた丸い布で、たたんであてる、スナップでショーツをくるむ、といったシンプルなつくり。立体裁断やら羽やらギャザーやらで複雑になっている紙ナプキンとは全く異なる。これで大丈夫なのかと思うが、

「布はまっすぐに浸透するので、伝い漏れがないんです。防水のビニールや吸収剤のポリマーなどケミカルのものがないので、ムレやかぶれ、においもありません」と、ユーゴさん。漏れ防止の機能が独特の不快感につながっている、ということである。肌に触れる部分はオーガニックコットンを使用しているので刺激も少ない。確かにそれは魅力的、使ってみたい気もしてくる。

 しかしもうひとつの壁は、やはり使用後の処理。洗って使うことに二の足を踏む人は多いだろう。トゥータでは専用の洗剤、「セスキウォッシュ」(セスキ炭酸ソーダ。重曹の粒子の細かいもの)や蓋付きのホーローバケツも販売している。手洗い、つけ置き洗いで、汚れは完璧に落ちるそうだ。外出の際は、ジップ付ビニール袋に入れて持ち帰っているとか。「思ったほど手間ではない」し、大量のゴミを出す罪悪感がなくなったことが大きいという。
 
 さらにトゥータ.では、「ナプキン循環プロジェクト」と銘打ち、廃材生地を回収し、布ナプキンにリメイクする、という試みを開始した。眠っていた生地を再利用し、繰り返し使う布ナプにという、まさに循環型社会にふさわしいシステムだ。

「見た目もかわいく気持ちのいい物を使って、ゴミも減らせる。生理のことを「ブルーデイ」というけれど、こうすればハッピーデイになると思うんです」との言葉に共感を覚える女性も多いのではないだろうか。

 ちょうど今秋から、無印良品でもネットストア限定で布ナプキンシリーズの販売が開始された。もはや一部の愛好者だけのものではなく、もしかしたら密かなムーブメントになるかもしれない、という予感もする。


[神谷巻尾(フリー・エディター)]


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