THE CONTEMPORARY FIX(ザ・コンテンポラリー・フィックス)
レポート
2009.01.09
ファッション|FASHION

THE CONTEMPORARY FIX(ザ・コンテンポラリー・フィックス)

東京ブランド中心のリミテッドショップ

コンセプトは、リアルな東京の気分を
旬のタイミングで提案すること。ドメ
スティックブランド中心のラインナップ。
場所は青山通りを1本入った通り。
08年以降個性的なセレクトショップの
出店が相次ぐ裏青山エリアだ。
Fred & Friendsのカセットテープバッグ
(写真右)1,995円、ROC STAR
ベルト8,190円
無印良品やエルメス、Gapなどの
ショッパーにオリジナルのステッカー
を貼ってリサイクルしている。
限定のコラボアイテムも多数取り扱って
おり、発売日には長蛇の列ができることも
しばしば。
リミテッドショップ「THE CONTEMPORARY FIX(ザ・コンテンポラリー・フィックス)」が、2008年6月21日、東京・表参道のレストラン「PARIYA(パリヤ)」跡地にオープンした。オーナー兼ディレクターは、(株)パリヤ代表の吉井雄一さん。時代を牽引するセレクトショップを数多く手がけてきたディレクターである。

吉井さんは97年、ヴィンテージセレクトショップ「IN THE POLICY OF TRUTH(イン・ザ・ ポリシー・オブ・トゥルース)」を南青山にオープン。その後は、「LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)」表参道店内の会員制セレクトショップ「CELUX(セリュックス)」をはじめ、三陽商会が運営するセレクトショップ「LOVELESS(ラブレス)」(04年南青山にオープン)とその姉妹店「Colour by Numbers(カラー・バイ・ナンバーズ)」(05年代官山にオープン、08年5月閉店)、また伊勢丹のザ・ステージで08年9月3日〜9日に開催された期間限定ショップ「アート・コンビニエンス・ストア」などのコンセプトからバイイング、空間までのトータルプロデュースを手がけた。

08年6月、三陽商会との契約が終了。それに伴い、98年から表参道で運営していたレストラン、パリヤを08年5月にクローズし、今回、リミテッドショップに業態転換してリニューアルオープンした。

取り扱いブランドは、「mastermind JAPAN(マスターマインド・ジャパン)」「SASQUATCHfabrix.(サスクワァッチファブリックス)」「JOHN LAWRENCE SULLIVAN(ジョンローレンスサリバン)」などのドメスティックブランドを中心に、現在50〜60ブランドを扱っている。メンズとレディースの割合は4:6。

「デザイナーのクリエイションを尊重することが大切」というポリシーを掲げている吉井さん。コレクションの出来がよいシーズンだけ買い付けるのではなく、毎シーズン継続的に買いつけることで、デザイナーとの信頼関係を構築。お互いに刺激し合いながら成長するという姿勢を貫いている。また同時に、新進気鋭のブランドの発掘にも注力しているそうだ。

また、ショップ全体が特定ブランドのオンリーショップに変貌する「ゲリラショップ」企画を定期的に実施しているのも、同店の大きな特徴。6月のオープン時には、「mastermind JAPAN(マスターマインド・ジャパン)」の限定ショップを展開。2カ月間の予定が、わずか2週間で商品が完売してしまうという人気ぶりで、好調なスタートを切った。続いて9月には、「SASQUATCHfabrix.(サスクワァッチ・ファブリックス)」のゲリラショップを展開。空間づくりには、デザイナーと親交の深いアーティスト「HEAVOGON(ヘボゴン)」や、オンラインブックショップの「GAVUDOMUZI(ガヴドムジ)」が参加し、店舗全体を使ったコラボレーションが実現した。

さらに、10月にはマスターマインド・ジャパンとリーバイスフェノムのコラボデニムを発売。そして11月には、日本上陸40周年を迎える「PEANUTS」をテーマに、「THEATER 8(シアター・エイト)」、「master mind JAPAN」、「drestrip(ドレストリップ)」、「OVER THE STRIPES(オーバー・ザ・ストライプス)」のコラボによるチャリティーTシャツも発売するなど、ほぼ毎月、コラボレート企画を行っている。

途切れることなく次々と新しい仕掛けを披露する同店の売りは、このスピード感だ。佐藤さんは「通常、大手のアパレルでは商品企画から流通までには複雑な工程と長い時間がかります。その既存システムにこだわることなく、早いサイクルで提案するのが当店のポリシー。今の東京の気分を、なるべく早く届けたいんです」と語る。

顧客は20代の男女を中心に、上は30代〜40代まで。企画によって来店者層ががらりと変わるのも同店の特徴だという。価格帯は、1点1,000円ほどのポーチから100万円以上のムートンコートまでかなり幅広く、そのミックス感も同店の個性になっている。

同店ではプレミアム感やリミテッド感を大切にしているため、意図的にホームページは作っておらず、PRも限られた雑誌媒体とDMしか行っていない。それにも関わらず、話題を集めるのは口コミ力だと佐藤さんは語る。顧客がブログで同店の情報を書き込んだり、口コミによって情報が伝わることで、結果的にファッションに敏感な層を獲得しているのだ。

「オンラインショップの普及によって、たいていのファッションアイテムは簡単に手に入るようになりました。そんな時代だからこそ、実際に商品や空間にふれてドキドキしながら買い物をして頂けるような、リアルな店舗にこだわっています。今後も小規模ならではのフレキシブルさを活かし、他にはできないことにチャレンジしていきたいと思っています」(佐藤さん)。

過去の定点観測のアイテムを振り返って見てみると、00年以降、同じようなアイテムやスタイリングが出ては減り、再び増えてはまた減る、という繰返しになっていることに気づく。1年目にトレンドに敏感な一部の層があるアイテムを着用し、2年目にそれらが30代〜40代に着用され、そして3年目には郊外のマス層にまで浸透しビッグヒットアイテムになる、という波及構造になっているためで、「トレンド3年越し」現象が引き起こされている。

また05年以降、東京のストリートファッションはパリやミラノのコレクションで発表されたアイテムがそのままヒットするという流れが続いて久しい。というのも、大手ドメスティックブランドやSPAブランドからそれらをコピーしたアイテムが発売され、結果的にどこのショップやブランドでもMDがそっくりの“MD似すぎている問題”となってしまったのである。

そういった現象への反発からか、「定点観測」の近年のインタビューでは、一部のファッション感度の高い消費者の間で、「green(グリーン)」や「sacai(サカイ)」、「TOGA(トーガ)」をはじめとする“東京ブランド”の人気が高まっている。トップダウンのトレンド一辺倒な東京のストリートにおいて、東京ブランドならではの、ストリート感とモード感をミックスしたデザインや、独特のハズしといった細やかで編集能力の高いクリエイションが新鮮に映り、支持されるのも自然の流れといえるだろう。

「今の東京の気分を表現するアイテムを旬のタイミングで提案していくのがコンセプト。今後もいい意味で皆さんを裏切る新しい試みをどんどんしていきたいです」(佐藤さん)。“トウキョウ・ショウケース”ともいえる同店に、新しいトレンドの芽が隠されているのかもしれない。

[取材・文/フリーエディター・ライター藤原祥子+アクロス編集部]

THE CONTEMPORARY FIX(ザ・コンテンポラリー・フィックス)

住所 : 東京都港区北青山3-12-14 MAKO北青山ビル1F
TEL : 03-6418-1460


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