SAL(エス・エー・エル)
レポート
2009.02.16
ファッション|FASHION

SAL(エス・エー・エル)

メイド・イン・トウキョウのプロダクトを発信。
newneu.を扱うセレクトショップ

newneu./Monolith Lineは、
「2001年宇宙の旅」に出てくる
モノリスをイメージ。無限に広がる
可能性を表している。
外付けのピースはリッチな素材を使用。
レザーに刺繍を施したり、スワロフスキー
を用いたものなど様々。
NEW BALANCEとALMONDのコラボ
スニーカー。ベロクロ地なので、
newneu.のアートピースでカスタム
が可能。
アグロナチュラなどのコスメや雑貨も
取り扱っている。
店のアートディレクションは
画家の天野タケルさんに依頼。
天野さんの絵画作品を常時販売
している。
広さはバックヤード含めて約80平米。
JR高円寺駅から徒歩約 10分、ちょっと行き過ぎたかも?と不安になるほどショップの少ないエリアにあるのが、セレクトショップ「SAL(エス・エー・エル)」通称サル。同店は“ファッション、音楽、アートをトータルで提案する”ことを目指して2004年にオープンした。運営元は有限会社コルロッシュ

取り扱い商品は、国内外のメンズウエアや雑貨・小物が中心。国内ブランドは、SLACK(スラック)ALMOND(アーモンド)LEH(レー)、RATIO(レシオ)、ARTON(アートン)HEAVENS FIELD(ヘブンズフィールド)、海外ブランドはドイツのZ.B.(ツェットベー)など。雑貨は、Agronatura(アグロナチュラ)のコスメを中心に、インテリア、小物類が並ぶ。

同社代表の鷲澤心介さんは、高円寺で100年余りにわたって続く有限会社鷲澤建設の代表という顔も持ち、大工として家具作りや空間デザインを手がけてもいる。同店は、鷲澤建設が施行を手がけたビルの1階にテナントとして入居している。

「もともとファッションやプロダクトデザインが好きで、自分が面白いと思うものを自由に扱うセレクトショップをやりたいと思っていたんです。青山や原宿など、都心向きの店なのでは?という声もありましたが、高円寺のアンテナショップ的存在になれたらと思い、出店しました」(鷲澤さん)。

そして、同店の目玉は何といっても、鷲澤さんがディレクター兼デザイナーを務めるオリジナルブランド「newneu.(ニューニュー)」である。バッグ「newneu./Monolith Line(ニューニューモノリスライン)」は、面ファスナーを全面に使用した革新的なアイデアがクリエイターやデザイナーたちに高く評価され、人気を博している。後付けで装着できるアートピースも大きな魅力。天野さんと鷲澤さんがそれぞれデザインしたカラフルなラインナップで、“ユーザーが誰でもデザイナーになれる”というコンセプト通り、自分なりのカスタマイズが楽しめる。

そもそも着想は2006年1月頃。サンプルの製作を重ね、同年9月には世界特許を申請した。2007年6月に販売を開始し、同年10月にはグッドデザイン賞を受賞。本来、バッグはものを入れると重力で下に落ちる三次元の袋だったが、このアイデアによって平面を利用する二次元の使い方ができるようになり、より実用的で機能性に富んだものになった。「21世紀になってやっとバッグが一歩進化したのでは」と鷲澤さんは言う。

「バッグを持つ人のデザイン能力が上がると評価されました。そもそも自分で組み立てるということは建築の考え方。面ファスナーを、パーツの一部としてではなく面として使うことは、ファッションのデザイナーからは出て来にくい発想だったのかなと思っています。またこれは、子どもからお年寄りまで、誰もが使ったことのある面ファスナーを用いたユニバーサルデザインでもある。体に障害のある人でも体の一部にくっつけて使うことができるんです」(鷲澤さん)。

その後2008年5月には、国際交流基金から“日本を代表するプロダクトデザイン”として選出され、トヨタのレクサスシャープのアクオスJR東海の新幹線N700系などと肩を並べた。

同年9月、伊勢丹新宿店の「ART CONVENIENCE STORE(アートコンビニエンスストア)」に出展したのをきっかけに、2009年2月から同店1Fでの販売が決定。女性客を意識し、既存のサイズより小さめのデザインを新たに発売する予定だ。現在の卸先は、Chimera Luxe(キメラルックス)渋谷店、時しらず代官山店など、発売当初にオファーのあった7店舗のみ。今後国内での卸先はかなり厳選してゆく予定だという。

「newneu.をブランドとして確立するため、ある程度販売方法をコントロールしていくつもりです。“メイドインジャパン”を世界に売っていくため、生地は日本製のものを使い、縫製も日本人の職人が手がけています。日本が出しうる最新の技術で、日本人クリエイターが作っていることをアピールすることで、日本の産業を盛り上げられればと思っています」(鷲澤さん)。

幣紙でもたびたび紹介しているように、めまぐるしく変わるトップダウントレンドを追随するあまり、多くのショップやブランドで“MD似すぎている問題”となってしまっている。そんな背景から、独特のハズしといった細やかで編集能力の高い“東京ブランド”の人気がじわじわと高まっているのだ。“ユーザーが誰でもデザイナーになれる”というコンセプトの「newneu.」も、そんな東京のマーケットだからこそ生まれた、“メイドイントウキョウ”なプロダクトと言えるだろう。

今後はフランス等、海外への進出も視野に入れているそうだ。

[取材・文/笠原桐子+『ACROSS』編集室]
住所:東京都杉並区高円寺南2-24-23
TEL:03-6765-7770


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