第348回定点観測・速報
レポート
2009.12.14
ファッション|FASHION

第348回定点観測・速報

大きなトレンドが見えない時には小物に注目!
各ファッショントライブに浮上する、90sファッションのトレンド

毛足の長いニット帽やファーの帽子は、
『sweet』系の女子に人気。+巻髪は
ギャルミックス系の典型スタイル。
元裏原系の30代の男性がパパになって
新アメカジファミリー・ファッションの
台頭!

大きなトレンドが見えない時には小物に注目!

各ファッショントライブに浮上する、90sファッションのトレンド

 2009年最後の定点観測を、12月5日土曜日に実施した。今回注目したのは、カウントアイテム(量的に支持されているトレンド)として「男女帽子」。ズームアップアイテム(質的およびファッションに関心の高い人に支持されている先取りトレンド)として「ニーハイブーツ」、そしてファッションではいが、久しぶりに世相ネタとして、近年街に急増している「外国人(含むハーフまたはダブル)」とした。

■カウントアイテム:男性帽子/女性帽子
http://www.web-across.com/observe/cnsa9a000004hhnc.html

■ズームアップアイテム1:ニーハイブーツ
http://www.web-across.com/observe/cnsa9a000004hhps.html

■ズームアップアイテム2:外国人
http://www.web-across.com/observe/cnsa9a000004hhs8.html


■男性帽子/女性帽子

 とにかく、前日まで実施するプレ定点観測(実査時に注目するアイテムを決定するためのプレサーベイのこと)では、街を行き交う人の装いは黒一色。黒いコートに黒いブーツ、黒いバッグ、黒い帽子といった具合で、先月からなんら変化がみられない。というより、ある年に浮上したトレンドが、翌年になりさらに多くの層に支持され拡がる「トレンド2年越し現象」が健在。ヘタをすると、より幅広い層を取り込み、「トレンド3年越し!?」というように、07年の「セレブブーム」がピークを過ぎた頃からか、ファッションのトレンドがだぶついている(前に進んでいない)ような印象を受ける。

 そんななか、観察に考察、ブレストを深めた結果、今月に入り急増している「帽子」に注目することにした。アウターやボトムス、全身のシルエットなどに大きな変化が見られない時には、そこに1点加える小物がスタイルにアレンジを施すという現象はこれまでにも何度もあった。直近では、9月に取り上げた「ブーツ」がそうだ。盛夏の装いに足下をブーツに変えるだけで、秋らしい雰囲気を醸し出す。そんなアレンジファッションが自然発生的に増加し、トレンド化するのは、「ファッション偏差値」の高い日本のストリートならではともいえるだろう。

 また、黒いウールのハットやハンチング、ニット帽が男性に目立ったことから、今回は、「男性帽子」「女性帽子」と男女それぞれをカウントした。

 各地点の帽子の男女別の着用率は以下の通り。
・ 渋谷  男性17.4%(189人)、女性19.6%(141人)
・ 原宿  男性11.2%(171人)、女性8.2%(178人)
・ 新宿  男性10.2%(141人)、女性9.7%(125人)



各地点の帽子ファッションはこちらからどうぞ。
http://www.web-across.com/observe/cnsa9a000004hhnc.html


 全地点で男性の帽子着用率が高く、なかでも『MEN'S NON-NO』系、『Huge』系の20後半〜30代半ばのアラサー男子の黒いウールの中折れ帽が多かった。この層には、パンツのロールアップにレースアップの革靴、ジャケットまたはブルゾンといったソフトトラッドのきちんとした装いが浸透しており、「ボブ男(ボブヘアの男性)」も多かった。

 20代の男性にはパーカーやスタジャン、デニムといったアメカジスタイルが復活浮上中。足下はマルチカラーのスニーカーが多く、そこに+キャップのスタイルは、まさに90年代の「裏原系ファッション」の再来のよう。おそらく、来年、さ来年と幅広い層に広がっていくだろう。

 一方、女性のファッションの「ミックススタイル」化はさらに浸透。もっとも多かったベレー帽は、『sweet』系(ストリート系とギャル系がミックスしたモテギャル系のトライブ)を中心に、『GLITTER』や『ViVi』『Cancam』などを好む層にも浸透していた。

黒やグレー、エンジ、グリーンなどカラーバリエーションは幅広く、なかにはヒョウ柄やゼブラ柄などの柄ものも目立ち、カラフルな服にカラフルな帽子の組み合わせは90sの「クラブキッズ」に、モノトーンにベレー帽のコーディネートは「フレンチカジュアル」を彷彿させなくもない。

 また、コンサバOL系(20代〜30代)にも、今シーズンは帽子が浸透しており、毛足の長いファーの帽子で地味になりがちなモノトーンファッションにゴージャス感をプラス。その他、「森ガール系」「アウトドア・ガール」系にはローゲージのニット帽が人気など、90年代に、コーディネートの重要なエッセンスになっていた帽子は、00年代末には、いろいろなトライブの際(他との境目となるところ)を曖昧にする、「シームレス・アイテム」ともいえそうだ。


●2009年12月Over View
http://www.web-across.com/observe/cnsa9a000004hhh0.html

オモテ革のニーハイブーツはロック
なイメージ。キルティング調バッグ
やティアードミニなど表面に立体感
や表情のあるものが人気。

トップダウン・トレンドが2年かかってストリートに浸透

■ニーハイブーツ

 次に流行りそうなアイテムや瞬間風速的な「Fad」なアイテムを取り上げる「ズームアップアイテム」。今月は2年程前からちらほら見かけたヒザが隠れる「ニーハイブーツ」がかなり増えてきているので注目することにした。

 同アイテムは、バレンシアガやドルチェ&ガッバーナ、クロエ、エトロ等々、いわゆる欧米のメゾンが発表したモード界からのトップダウン・トレンドである。07年ごろから一部のショップスタッフにたまに見られたアイテムが、昨年はセカンドクラスのインポート靴ブランドからもリリースされ、靴の売り場を見てもかなり品揃えが増えたなと感じている人も少なくないのでは。

 そして迎えた今シーズンは、ドメスティック系の靴ブランドからも多数リリースされ、109などのギャル系ブランドからイオンやロードサイドに出店しているカジュアル系ブランドに至るまでもが店頭で扱うようになり、ヤングから「ちょっと冒険したい」30代のOLさんまでをも巻き込み、急増。今シーズンの急浮上アイテムとなっているようだ。

 着用していたのは、きれいめ&ギャル系のいわゆる「モテ系」女子たち。ミニ丈ボトムス(スカートまたはパンツ)との間に少しだけ肌を見せるスタイルが多かった。次いで、タイツやレギンスで+ニーハイブーツという肌を見せないスタイル、そして、スキニーパンツをニーハイブーツにインしたボディコンなブーツスタイルは原宿のヤングに目立った。


●ニーハイブーツが支持される主な理由は以下の通り。

・ミニ丈の継続人気による「足にょっきりシルエット」における美脚効果(O脚カバー効果)
・カラータイツ⇒柄タイツ⇒レギンス⇒トレンカという、昨今のレングスアイテムの多様化の最先端型
・ふつうのブーツとは違い、ちょっと変わった=「アバンギャルド感」を演出したい気分


など、脚コンプレックスのある日本人ならではの理由が大きいが、インタビューでは、「ミニスカートを履きたいので防寒のためと流行っているから」という子(24歳)も。彼女は少し前までポイント系のブランド(ローリーズファームなど)を着ていたが、今春ごろから少し大人っぽくしたいと思いパルコに来るようになり、このニーハイブーツも購入したのだそうだ。つまり、ニーハイブーツは、彼女たちにとっては「大人っぽいアイテム」としての認知もされているようだ。

 一方、ネットショップを確認すると、なんと今シーズンは2,990円!のニーハイブーツまで登場。実際にインタビューした10名(平均年齢23.1歳)のニーハイブーツも、もっとも安かった3,000円(06年にセール/松本パルコ)を除いても、平均13,238円という結果に。もっとも高かったのは30,000円で、しかもセシルマクビーのものだった点も注目される。いつのまにか109ブランドは、「平均よりも高い価格帯のブランド」になっていたのである。ちなみに、10名の購入時期は、06年が1名、08年が4名、09年が5名だった。

 デザインでは、スウェード(またはスウェード風)の若干くしゅくしゅっとなるものがいちばん人気のようで、足首あたりで弛ませて履くスタイルは、女子高生のルーズソックスを彷彿させなくもない。色は黒かベージュ系、焦げ茶系とベーシックなものが主流だが、なかにはブルーや赤といった全身黒のコーディネートの差し色的なニュアンスで着用する姿も見られた。

 また履き口を折り返してふつうのロングブーツのようにも履ける2ウェイのタイプも多く、折り返した部分がヒョウ柄になっているものや、スルリと落ちてきてしまいがちな太ももの部分をヒモでさり気なく絞ることもできるよう配慮されたものなど、きめ細かい工夫が施されているなど、トップトレンドもたちまちローカライズドさせてしまう、日本のメーカーのマーケティング力にも注目したい。

 ところで、昨年のものに比べると、今年のニーハイブーツはさらに足にフィットする細身のものが多く、ルーズシルエットのトレンドから、ボディコン(ボディコンシャス)シルエットへとじわじわと移行中ともいえそうだ。



各地点のニーハイブーツ・ファッションはこちらからどうぞ。
http://www.web-across.com/observe/cnsa9a000004hhps.html
襟元のファー使いは20代後半〜30代に
人気のアイテム。ウールのハットで甘
過ぎない大人の『sweet』系スタイル
にするのがトレンド。
30代のカップルが渋谷だけでなく新宿にも
増えている。彼らのベースはアメカジ。彼
女らは『InRed』=コマザワンヌ。

地点別の特徴/マス化しているアイテムやスタイル/次に注目したいアイテムやスタイル

■渋谷 ・・・クリスマスプレゼントを買いに来たと思われる20代のカップルや代々木公園でのレイブイベントに来たような30代ファミリーで大賑わいとなった渋谷地点。夕方になると、パルコ前はクリスマスパーティや忘年会の待ち合わせと覆われる着飾った女性たちでごった返しており、先月に比べてエネルギッシュな雰囲気となっていた。

◎マス化しているアイテムやスタイル
ショートブーツ、スタッズ付きのアイテム、全身黒コーディネート、レザーブルゾン(OLさんにまで浸透)、冬の超ミニスカート(ヒザ上丈30センチ!)など

◎次に注目したいアイテムやスタイル
男の子のスタジアムジャンパー、太いデニムのロールアップスタイル、男の子のアメカジ再熱、リバースウィーヴのスゥエット(チャンピオンなど)、クラークス風デザートブーツ、ポニーテール、オンザ眉毛(眉毛の見える短いバングスヘア)、レースのタイツやレギンス、ポリスハット、ロングパールネックレス、スウェットパンツなど



■原宿 ・・・ラフォーレ原宿が関ジャニのツリーになっていた原宿地点。ティーンズやオバサンのジャニーズファンで賑わっていた。しかし、夕方になり、11年ぶりに復活した表参道のけやき並木にイルミネーションが点灯されると一転。スペシャルな雰囲気に染まっていった。

◎マス化しているアイテムやスタイル
ポンポン付きニット帽、ぺたんこブーツ、男の子のシャツのボタンをきちんと閉めたスタイル、襟元ファースタイル(上品系)、刈り上げヘア、ダウンジャケット

◎次に注目したいアイテムやスタイル
アウトドアファッション、本気チャリンカー(自転車通勤族)、ロングコート、ウラ原系男子ファッション、超ロン毛男子、オンザ眉毛(眉毛の見える短いバングスヘア)、スゥエットパンツなど



■新宿 ・・・昨年あれほど見かけたダウンが激減し、ジャケットだけとかニットアウターだけ、薄手のウールコートなど全体的に薄着の印象を受けた新宿地点。帽子は男子のウールのハットかキャップに二分されていた。

◎マス化しているアイテムやスタイル
変わりレギンス(ヌメ感やスラッシャー加工、パイピングなどのデザイン性の高いレギンスがボリューム化)、『PS』系や『Zipper』系、『NYLON』系を中心にリュックが増加、レースアップシューズなど

◎次に注目したいアイテムやスタイル
レースタイツ、女性カーリーヘア、黒髪、ツートンカラー、プラットフォーム、ウエッジソール、オープントゥブーツ、メンズライクなシューズ、ベルテッドシューズ、巾着風/マチの大きなバッグ、ロングパールネックレス、胸元に拡がる派手なネックレス、スゥエットパンツなど


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