漫画、エッセイ、音楽などジャンルを越えた活動を続ける、みうらじゅん。2010年にデビュー30周年というアニバーサリー・イヤーを迎える彼と、創業40周年を迎える(株)パルコがコラボレーション・イベントを開催している。それが『みうらじゅんジャンボリー』だ。
その中心となるのが、100冊を超える出版物を発表してきたみうらじゅんの“出版人生”を回顧する展覧会『みうらじゅんの100冊展 Book on Rock’n’Roll!』。渋谷パルコPART1・6Fのパルコファクトリーで開催されている。
1980年のプロデビューから発表してきた全書籍に本人の解説を添え、さらに原画や生原稿、写真などの貴重な資料を合わせて展示。展覧会オリジナルグッズやみうらじゅんがこれまで発表してきた書籍、CDなども販売されている。
「この30年間に書いた原稿は、ほとんど保管してあります。小学生の頃のテストまで残してあるので、展示するものはまだまだいっぱいあったんですけど、今回はまあ、これくらいにしておこうと。
こうして見てみると、出してきた本でその頃の自分がわかりますね。たとえば86年から90年の4年間は、本が全然出ていないんだけど、当時はとにかく世界一最低なマンガを書いてやろうと思って作品を描いたので、どこの出版社からも全然本を出してもらえなかったんですよ。バンドなんかをやっていた頃ですね」(みうらじゅん)
80年代の広告ブーム全盛期にイラストレーターとして人気を獲得し、その後多彩なジャンルにフィールドを広げるみうらの足跡が出版物を通して振り返ることができる。ちょっとした日本サブカル史ともいえる内容だ。
みうらの商業誌デビューは、今はなきマンガ雑誌『ガロ』。デビュー作『ウシの日』に登場した牛のキャラクター“なんぎ”は、その後さまざまな広告に起用され、一躍ヒットキャラクターとなった。
当時ブームのまっただ中にあった広告業界で、みうらはセゾン文化、あるいはパルコの文化事業と近いところで活動していた。コピーライター・糸井重里がみうらの師匠的存在だったのは有名な話だし、雑誌『ビックリハウス』や「ご教訓カレンダー」などの仕事にも携わっていたこともある。1985年にはパルコ出版から単行本『みうジャン』を発表。“みうジャン”とは『みうらじゅんジャンボリー』であり、今回の企画タイトルはこれを掘り起こしたものである。
「僕自身がみうらさんのファンだったこともあって、記念すべきアニバーサリーの年に何か企画ができないだろうかと提案させていただいたんです。ちょうどみうらさんの著書が100冊を超えていたことから、これまで発表されてきた著書をテーマにした展覧会ならどうだろうか、と今回の企画の方向性が決まりました」(パルコ・店舗運営局/高橋賢太郎)
会場にはほかにも、さまざまなマイブームを発信してきたみうらの秘蔵コレクションが展示されている。高さ約2.5mの「ビッグひな壇」で一挙に陳列。ゆるキャラ、天狗、ゴムへびなど、ブームとなったものから不発に終わったものまで、ファンならおなじみのバカグッズ・コレクション約400点がびっしり並んでいる。
さらに街中の看板の文字を撮影した写真のみで般若心経を綴った著書『アウトドア般若心経』全278文字をオリジナルプリントで展示。このように書くと単純な企画に感じられるが、みうらはこの撮影にあたって“神社仏閣には近寄らない”というマイルールを己に課し、完成までに5年以上の時間を費やしている。例えば「蘊」「羯」「呪」といった漢字を看板の中に探し歩くという作業は想像以上に苦しいものだったはず。この、バカバカしいことを一生懸命やるのがみうらじゅんの真骨頂だ。
この展覧会の見どころはもう一つある。「みうらじゅんearly works ひとり出版社時代」のコーナーだ。みうらはプロデビューのはるか前、小学生の頃から「自分で自分に原稿を発注して、執筆、製本して発表する」という“ひとり出版社”として活動し、クラスで閲覧するなどして発表されてきた。そんなインディペンデント時代からの作品が、インスタレーションのように壁面を埋め尽くしている。これは、会場でみうら自らが貼り込んだものだ。
こうして22歳でのメジャーデビュー以前に書きためた作品は、漫画以外にも作詞・作曲、ポエムやエッセイなど幅広く、みうらは基本的にそれを全て保存している。その中からエッセイ&詩集をセレクトし、ライブで朗読する、というイベントが12月20日(日)21日(月)の2日間、パルコ劇場で開催された『みうらじゅんのDSショー』である。
この“DS”とは「どうかしてる」の略。若者特有の悶々とした、後から振り返って読むと恥ずかしい自作ポエムを豪華声優陣がみうら本人の前で生朗読し、それにみうら本人が解説を加えるのである。
2日間連続で開催されたDSショーはいずれも2部構成。1日目の1部は「スライドショー」、2日目は「みうらじゅん大賞 授賞式」で、第2部が両日ともにポエム&エッセイの朗読である。今回は羽佐間道夫・野沢雅子という豪華声優陣が朗読を担当。自分が書いた“若気の至り”でいっぱいの作品を目の前で読まれ、それを解説するみうら自身も相当に恥ずかしそうだが、読んでいる方の声優陣や観客までもが恥ずかしさに身悶えするという、他に類を見ないショーになっている。
こうしてみると、みうらがこれまで行ってきた表現活動は、あの“マイブーム”というコトバにも現れているように、自分でルールを決め、自らその縛りの中で遊ぶということを、過剰なまでに徹底して行っている。
中学生時代に学級新聞や校内放送など、学校メディアで表現活動をしてきた経験を持つ読者も多いと思うのだが、みうらの場合、それが現在に至るまで一貫した姿勢で継続されているというのが凄いところなのだ。
ショーとして自分の過去を見せるだけでなく、今回の展覧会では、みうら自身が自分をさらけ出し、発表してきた出版物を絶版になったものも含めて可能な限り集め、販売している。
「これは“自分売買”。表記を替えると“自分バイバイ”ですね。全てのものをお見せして、一度ここらで過去の自分とお別れするつもりです」とみうらじゅん自身、展覧会フライヤーのメッセージで伝えている。
本展はみうらじゅんがいう“Book on Rock’n’Roll”の精神で作り続けた作品の数々を、生原稿ならではの迫力で立体的に見ることができる貴重な機会。バカバカしさを笑うだけでなく、デビュー30周年を迎えるみうらの“自分なくしの旅”の奥深さも体感できるはずだ。
[取材・文/本橋康治(フリーライター)]
みうらじゅんの100冊展 Book on Rock’n’ Roll
みうらじゅんの100冊展 Book on Rock’n’ Roll
詳細はこちら
会 場: PARCO FACTORY パルコファクトリー
渋谷パルコ パート1 / 6F
期 間: 2009年12月18日(金)−2010年1月11日(月・祝)
※会期中無休
10:00am - 9:00pm
※入場は閉場の30分前まで
※最終日は6:00pmにて終了
入場料: 一般500円 学生400円 小学生以下無料
お問合せ: 03-3477-5873(パルコファクトリー)
主催: パルコ
制作協力: TBSサービス/みうらじゅん事務所
ディスクベリードットコム
スマイル・ヴィークル
協力: TBSラジオ(みうらじゅんのMJ RADIOアワー)
みうらじゅんOFFICIAL SITE:http://miurajun.net/
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渋谷パルコ パート1 / 6F
期 間: 2009年12月18日(金)−2010年1月11日(月・祝)
※会期中無休
10:00am - 9:00pm
※入場は閉場の30分前まで
※最終日は6:00pmにて終了
入場料: 一般500円 学生400円 小学生以下無料
お問合せ: 03-3477-5873(パルコファクトリー)
主催: パルコ
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パルコファクトリー
〒150-8377
東京都渋谷区宇田川町15-1
渋谷パルコ パート1/6F
お問い合わせ:03-3477-5873(パルコファクトリー)
HP:http://www.parco-art.com/web/index.php
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