風邪をひいても「忙しいから、ゆっくり休んでいられない!」と無理をすることや、疲れを感じていても「病気というほどではないから」とそのまま溜め込んでいることは、誰にでもあるのでは? そんなとき手軽に点滴でセルフメンテナンスを行えるのが、医師が在中するクリニック内に開設された点滴専門スペース「TENTEKI10(テンテキテン)」だ。
「病気でもないのに点滴?」と驚く人もいるかもしれないが、「TENTEKI10」は、疲労や肩こり、冷え症など気になる不快な症状を改善して、病気にかかりにくい心身を作る予防医療を目的に、独自のアプローチで点滴治療を提供している。
「医療行為として行われる点滴は、直接、血液内に栄養を届けるので吸収率が高く、疲労回復や健康維持、アンチエイジングにもすぐれた効果があり、注射よりも体への負担が少なくすみます。個人差もありますが、特に疲れているときは即効性を実感できるようです」(TENTEKI10広報・林美樹さん)
同様の点滴治療は、保険適用外の自費診療として多くの医療機関でも行われているが、そういった医療機関では、健康管理のための点滴を受診する場合でも、風邪やインフルエンザの診察で訪れた人と同じ待合室で長時間待たなくてはいけない。しかし「TENTEKI10」の特徴は、「予約不要」で「待ち時間が少ない」こと。さらに保険証も不要で、その名の通り点滴時間は約10分。「疲れや不調を感じたときにマッサージやエステに行くように、医療機関で安心して受けられる手軽な点滴治療を、その選択肢のひとつに加えてもらえれば」と林さんはいう。
「TENTEKI10表参道」での受診の流れを説明しよう。同スペースは2009年10月「表参道内科胃腸科クリニック」内にオープンした。入り口は別であるが、点滴専門スペースとクリニックは院内でつながっており、院長や看護師が両方を行き来して診察を行う。受付で問診票を受け取り、病歴やアレルギーの有無、体調などを記入して、希望するメニューを選んでいく。
メニューは、ビタミンCやビタミンBなどを含む総合ビタミン点滴「ベーシックパック」(2,000円)が基本。「ベーシックパック」のみでも疲労回復などに効果があるが、好みに合わせて、疲労回復・体調維持ための「ブルーパック」(3,000円)や、肌荒れやニキビ、シミに効果がある美容対策の「ピンクパック」(3,500円)、筋肉疲労を目的とした「オリーブパック」(3,500円)など、カラフルに色分けされた10種類のオプションを組み合わせる。点滴の内容を自分で選ぶのは初体験なので、少し不思議な気分だが、春なら「免疫力アップ応援」(6,000円)、「春のキレイ応援」(6,000円)など、3ヶ月毎に季節に合わせた目的別の組み合わせ例も提案しており、初心者にも選びやすいように配慮されている。3月1日からは、2,000円で、疲労回復、お肌ケア、肝機能強化と症状に応じた点滴を受けられる新メニュー「シンプルパック2000」(2,000円)も開始。
男性の一番人気は「ブルーパック」、女性の一番人気は「ピンクパック」だが、美容に気を使って「ピンクパック」をオプションに組み込む男性も多く、その日の体調によって数種類のオプションを使い分ける常連もいるそうだ。疲労に対するメニューは週1回、美容に対するメニューは2週間に1回のペースが目安。
メニューが決まったら先に会計を済ませ、ソファが3席並んだ受付奥のスペースへ。白を基調としたインテリアは明るく清潔感がある。ジャズが流れる落ち着いた雰囲気のなかで、「表参道内科胃腸科クリニック」大黒 学院長による問診を受け(2回目以降は簡易問診)、質問があればここで相談することが可能だ。
問診が済んだら、さっそく点滴へ。口の奥にニンニクのような香りを感じるが、これは点滴に含まれるビタミンB1特有のものだという。のんびりとソファに体を沈めて、約10分であっという間に点滴は終了。何となく、疲れ目がスッキリしたような気がする。「翌朝の目覚めがよくなった」とリピートする受診者が多く、カップルや友人同士で訪れる人も少なくないという。ランチタイムに手ぶらで立ち寄れるくらい手軽ではあるが、医師の問診もあって安心。もちろん針を刺すときの「チクッ」以外は、痛みもない。
「TENTEKI10」は、IT系ベンチャー企業の新規事業として、構想がスタートしたもの。実際に一般外来で点滴治療を受けていたスタッフが「もっと手軽に点滴を受けられる場所ができないか?」と考え、医療機関内に点滴専用スペースを併設することを発案。この「TENTEKI10」のコンセプトやシステムをサービスパッケージとして提供し、同社がブランディングや企画・PR業務等を、パートナーとなる医療機関が運営を担う、いわゆるフランチャイズ型のユニークなビジネスモデルを構築した。2008年4月に「TENTEKI10恵比寿ガーデンプレイス」、同年11月に「TENTEKI10東京ミッドタウンメディカルセンター」をオープンして話題を集め、2009年8月に株式会社TENTEKI10を設立することになった。
「表参道内科胃腸科クリニック」が「TENTEKI10」を導入したのは、偶然クリニックの隣の一室が空いたことがきっかけ。新たなクリニックとしては手狭な約5坪のスペースは、同クリニックに「TENTEKI10」を併設させるのにぴったりだった。大黒院長は「TENTEKI10恵比寿ガーデンプレイス」のオープンの際、たまたまヘルプスタッフとして点滴の問診を担当していたことがあり、「TENTEKI10」を誘致する相談があったときにこれを快諾したというわけだ。
同時に「表参道内科胃腸科クリニック」では、内科全般、消化器内科、内視鏡検査による消化器がん検診、健康診断、人間ドックを中心に、「TENTEKI10」導入以前から渡航者のためのトラベルクリニックやビタミン・サプリメントクリニックも行っており、予防医療へのニーズの高まりも感じ取っていたのだという。
「表参道という場所柄、健康や美容に対する意識が高く、クリエイティブな仕事に携わり、忙しい日々を送る方が、肌荒れや疲労解消のため自費診療のビタミン注射やプラセンタ注射のために来院することはよくありました。また、内科の診察を受け『休みがとれないが、長引く風邪を早く治すために注射をしたい』『今週を乗り切るために、今すぐ少しでも体調をよくしたい』という声も多くありました」(大黒院長)
注射や点滴は心理的に内服液よりも即効性が目に見えるように感じられるが、「その期待感にこそ、実際に体調を快方に向かわせ、未病を解消する効果がある」と大黒院長は言う。
「TENTEKI10表参道」オープン後も、同クリニックではビタミン注射やプラセンタ注射を行っているが、待ち時間なく手軽に点滴を受けたい人は「TENTEKI10表参道」へ、時間がかかっても内科の診察も同時に受けたい人はクリニックへというように、受診者のニーズに合わせた柔軟な医療サービスが提供できるようになった。
また、医療機関が「TENTEKI10」を導入することで、新たな受診者との接点を作るきっかけも生まれる。同クリニックは表参道駅A2出口から徒歩2分、表参道ヒルズの隣という抜群のアクセスであるにも関わらず、表通りからはわかりにくい地下にあるため、認知度を高めるのに苦労していたという。
「『TENTEKI10』が独自にPR活動を行うことで『TENTEKI10表参道』に訪れる人を増やし、クリニックの認知度を上げると同時に、体調を崩したときはクリニックにご相談いただくなど、新たな受診者の流れを生み出せる。クリニックの受診者が待ち時間や診察後に『TENTEKI10』を利用する相乗効果にも期待しています」(大黒院長)
「TENTEKI10表参道」の受診者は、現在、1日平均10人〜15人。男女比は約半々で20代〜40代が中心。受診者は慢性的な疲労やストレスに悩まされ、病気ではないが辛い症状を改善したい人、美容面でのアンチエイジング効果を期待する人に大きく分かれるという。
忙しい日々のなかでは不調に悩まされながらも自らを過信し、面倒を理由に病院にも行かず体調を悪化させてしまう人も少なくない。だからこそ、信頼できる医療機関としての点滴専門スペースを定期的に訪れることで、自らの体調を常に意識するようになるだろう。たったの10分の点滴時間ではあるが、忙しすぎるライフスタイルを本気で見直すきっかけを「TENTEKI10」で見つけられるかも知れない。
(取材・文/佐久間成美/エコライター)
TENTEKI 10(テンテキテン)表参道
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-11-6
表参道千代田ビルB2階(表参道ヒルズ隣)
表参道 内科胃腸科クリニック内
電話番号:03-5458-3128(カスタマーダイヤル)
※予約は承っていません。
受付時間:11:00〜13:30 / 16:00〜19:30
休診日:日・祝日・年末年始(水,土は午後休診)
■土曜の詳しい診療時間はお問い合わせください。
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