東京のストリートスナップや個性的なショップのブログを紹介するるウェブサイト「DROP TOKYO(ドロップトウキョウ)」が2010年8月20日〜9月23日までの期間限定で、同サイト初のリアルショップ・多目的スペース「DROP POPUP STORE(ドロップポップアップストア)」が ラフォーレ原宿B1階に出店した。
「DROP」は2007年に開設し、現在では月間約250万アクセスを誇る人気ウェブサイト。「DROP POPUP STORE」では同サイト内で取り上げてきた4つのショップが「DROP」とコラボレーションし、それぞれのショップが1週間ずつ物販やギャラリーなどを展開する。
出店スペースは約10平方メートル。企画・監修はDROP編集長の横田大介さん(25歳)だ。ショップは、ヨーロッパやアメリカの古着を扱う「Grimoire(グリモワール)」、ポップで個性的、アニメキャラクターとのコラボアイテムなどが人気の「galaxxxy(ギャラクシー)」、日本人若手デザイナーのブランドを中心に揃えるセレクトショップ「XANADU(ザナドゥ)」、古着を中心にしたアパレルショップが入居する高円寺の「キタコレビル」。4ショップをセレクトした理由は、それぞれのジャンルが異なることと、インディペンデントなショップであることから。
「DROPもそれぞれのショップも、誌面など数多く取り上げられているので、それなりの知名度はあると思うのですが、ラフォーレに来客するような大衆層までリーチが出来ていないのが現状だと思います。今回の企画で、そういった多くの層に広がることができたらと思っています」(DROP TOKYO編集長/横田大介さん)。
出店のきっかけは、もともと交流のあったラフォーレ原宿テナント誘致担当である池田さんから、何か一緒に企画できないかという誘いがあったことから。ラフォーレ原宿側には、もう一度カルチャーを発信したい、ファッションに対するより高感度な層を集客したい、という狙いがあったのだそうだ。
8月20日〜26日までは「Grimoire」のショップ、8月28日〜9月3日までは「galaxxxy」による商品展示、9月5日〜11日までは「XANADU」のショップが展開された。9月17日〜23日までは「キタコレビル」によるキタコレリメイク戦争が予定されている。
また、期間中は毎日、イベントを開催しているのも特徴だ。たとえば、「Grimoire」と読者モデルによるトークセッションや、「galaxxxy」が選ぶクリエイターによるライブペインティング×DJライブなど、各ショップが趣向を凝らしている。1日限定のコラボレーションもあり、“ANIME×FASHION×NOISY ELECTRO”をコンセプトにしたイベント「電刃(デンパ)」によるDJライブ、TWEE GRRRLS CLUBという女の子6人のDJユニットがレコードや雑貨などを扱うViOLET AND CLAiREのショップ・DJ・トークセッション、 fancyHIMという東京のファッショニスタが集結するパーティがプロデュースするショップ、80’sのポップなディスコをイメージとしたレディースの古着店Spank!のワークショップなど、各ショップのファンや「DROP」ファンの若者たちで賑わっていた。ウェブサイトがリアルショップを構えて物を販売することはありきたりな方法なので、よりおもしろいことを発信するために、毎日コンテンツを変えているのだそうだ。
「ラフォーレ原宿さんからも、売上は気にせずにとにかくおもしろいことをしてほしいというミッションをいただき、バックアップしていただいています。何かおもしろいことが起きる場所、旬なショップがある場所をここにつくりたい。時間が経った時に、「そういえばDROP POP UP STORE、面白い変な企画をしていたね〜(笑)と記憶に残るような事をやりたいです」(横田さん)
告知は、DROPやラフォーレ原宿の特別サイト、各ショップのブログが中心。会期中はラフォーレ原宿館内の随所に、デジタルサイネージが設置され、告知、館内ショップスタッフのスナップなどの映像が流されている。また、毎日異なるイベントの様子はUSTREAMで配信している。
客層はDROP読者のほか、各ショップにより異なる。「Grimoire」出店中は10代の女性を中心に7割ほどが同店の既存客だったほか、館内に観光に来ていた外国人客の来店も目立った。「galaxxxy」ではカルチャーに興味を持つ20代〜30代やアキバ系、「電刃(デンパ)」では20代〜30代と幅広い層が訪れた。各ショップが路面店でないことから、「以前から行きたかったけど、場所がわからなかったので今回来店した」という声も多かったそうだ。これには横田さんも「個々のショップに行くよりも、ファッションビル内だから入りやすかったのではないでしょうか。想定外でしたが、各ショップの世界観を伝えるには良い方法だったと思います」と語る。
各ショップからの声は、「ラフォーレ原宿で当店の場所を知ったお客様が流れてきて、買い物をしてくれた」(Grimoire)、「若手デザイナーの商品を、原宿のど真ん中から発信したい」(XANADU)、「とにかくおもしろそうだからやってみたい」(キタコレビル)と、さまざまだ。
「私も今回、店頭に立って初めてアパレルの物販を経験しました。洋服は売れないと言われる時代ですが、ショップ自体が明確な個性を持つことで熱狂的なファンがついていれば、お客様は店に足を運ぶし、商品を買っていくのだと実感しました。お客様の量ではなくて、お客様との関わりの密度がどれだけ濃いかが、僕たちのシーンでは大切だと思いました」(横田さん)
このところ、売れ筋の商品ばかりを集積した画一的なMDのショップが溢れているが、消費者はそういった状況に辟易しており、買い控えや、ワードローブの見直しに意識が向かっている。
しかし、今回の「DROP POPUP STORE」を通して、他にはない独自性を打ち出すショップへの支持が意外に多いことや、ショップが提案するイベントやカルチャーに興味を抱く潜在消費者が、実はまだまだいるということを実感した。消費者は単にものを買うだけではなく、それにまつわるストーリーや、イベント、アトラクション感覚から得られる楽しさを求めていると言えるだろう。
9月18日には、DROPのほか、「JILLE」「PS」などのファッション誌・ウェブサイトによるスナップ、公開シューティングなどを実施する「STUDIO LAFORET」を開催。また、24日には、渋谷のTRUMP ROOMでアフターパーティを開催し、DROPによるスナップ撮影などを行う。
取材・文:緒方麻希子(フリーライター)
写真:DROP TOKYO(ドロップトウキョウ)編集部