個性的なアパレルショップが複数入居する、東京・渋谷の電力館向かいにある「テルス神南」。今回は、ファッションに関心の高い若者が集まるビルとして注目を集めている同ビルに、2010年11月末にオープンした古着店「WAGADO TOKYO(我が道東京)」を取材した。
同店は、大阪・アメリカ村で人気のある「WAGADO(我が道)」の東京初の店舗である。運営するのは、オーナーの河野遊樹さん(26歳)。
河野さんは、18歳だった2003年2月に、友人のドゥティケンさん、ミカコさんと共同で、アメリカ村に「WAGADO(我が道)」をオープン。現在、ドゥティケンさんとミカコさんは海外在住で、現地でバイイングを行っており、高橋ユウジさん(30歳)とshioriさん3人で運営を行っている。同じくアメリカ村でセレクトショップ「GENECON(ジェネコン)」も展開している。
大阪店に東京からの来店客が多かったことや、通販の売上の4割程度を東京在住者が占めていたことから、東京進出を決めたという。また、河野さんたちが行っていたDJイベントなどで東京のDJとコラボレーションするなどの機会があり、東京に多くのネットワークができていたことも出店を後押しした要因だそうだ。今後は、大阪と東京から、新しい感覚でカルチャーを創造するようなファッションを発信していくという。
出店場所に渋谷を選んだのは、高円寺や原宿などいろいろなエリアを訪れた中で、最も「東京」を感じた場所だから。とにかくたくさんの人がいて、そのなかにギャルやビジネスマン、OLなどの幅広い層がいること、大阪にはないスクランブル交差点に衝撃を受けたそうだ。物件は、せまくて隠れ家のようなものを探した。大阪の「WAGADO(我が道)」が地獄をイメージに、「GENECON(ジェネコン)」が天国をイメージの内装であることから、同店はその2つを合わせた明暗を感じられる内装にしたそうだ。広さは約40平米。ブラックライトが光る店内には、天井から洋服が吊るされておりまるで迷路のような空間になっている。昭和を思わせるレトロな看板があったり、マネキンがぶら下げられていたり、独特の世界観に浸れる。
商品は、古着が4割、リメイクが4割、新品2割で、レディース対メンズは半々。古着はアメリカやロンドン、タイなどで買い付けており、年代にこだわらずドゥティケンさんやミカコさんが、直感的にかっこいい・かわいいと感じられるものをセレクトしている。また、ロンドン在住の元同店スタッフによる古着リメイクブランド「WOW Dedsigns(ワオデザインズ)」も展開。新品はドメスティックの「HOMELESS PARTY.」を扱う。価格帯は1,500〜2万円程度で、古着は平均4,000円。大阪店と同基準の価格設定のため、東京では比較的安価だという。
同店は2004年からホームページ上で、スタッフと来店客のファッションスナップを紹介している。というのも河野さんは、2005年〜2008年まで雑誌『TUNE』のフォトグラファーとしてストリートスナップを撮影していたそうだ。
「おしゃれでかっこいいお客様がたくさんいるので、そのファッションを世に出したいです。僕がフォトグラファーをしていた2005年頃は、もっとファッションが盛り上がっていて、着こなしももっと爆発している感じがありました。今の若者は本来の服のよさや価値より、ネームバリューで着る服を決めたり、服の根本的な事をあまり知らない印象を受けます。我が道(WAGADO)を通して、お客様も成長し、ファッションというアートが爆発したらいいなと考えています」(オーナー/河野さん)
ターゲットは、10代後半〜30代の個性ある人たち。男女比は5:5。大阪店からのファンや口コミで知って来店する客が多いという。実際に店頭に立っていると、古着店「Grimoire(グリモワール)」などが入居している同ビルの集客パワーを感じるそうだ。
「今は大阪より東京の方が、新しいファッションへのチャレンジ精神が旺盛だと思います。東京店は、大阪の2店の商品をより濃縮した品揃えです。古着が盛り下がっていると言われますが、私が接客している限りはそんなことは感じません。再び若い層に古着は求められていると思います」(河野さん)
弊誌の定点観測でも2010年に入ってから、「アラウンド90年生まれ」を中心に古着を取り入れるコーディネートが拡大している。これはファッション好きの若年層がショップの似通ったMDやファストファッションに辟易し、「他の人とは違うもの」を求めて古着にたどり着いた結果ともいえるだろう。26歳という運営メンバーの感覚が反映された、古着・リメイクという1点ものが商品全体の8割を占める同店が、地域を選ばずに支持されているのも頷ける。
今後はクラブや居酒屋の運営にも挑戦したいそうだ。
取材・文:緒方麻希子(フリーライター)