“ヘアカット10分1,000円”で知られるヘアカット専門店「QBハウス(以下、QB)」(http://www.qbhouse.co.jp/)を展開するキュービーネット株式会社(http://www.qbhouse.co.jp/company/)が、リーズナブルで予約不要のお手軽さはそのままに、 20〜40代の男女をターゲットにしたカット専門の新業態「FaSS(ファス)中目黒店」( http://fasssalon.com/) を2011年7月1日オープンし、話題を呼んでいる。場所は、東京・中目黒駅から歩いて1分ほどの中目黒アトラスタワー1階。店舗やビジュアルのデザインを、家具やインテリア製品のデザイン・製造販売を行うIDEE(イデー)(http://www.idee.co.jp/)が手掛けている。
「QB」は1996年11月の1号店オープンから拡大を続け、現在は国内400店以上、シンガポールと香港に61店舗を展開。国内だけでも、月間の利用者数は約120万人にも上る。2005年12月からは、女性をターゲットにした、 カット20分2,000円の「キャトルボーテ(以下、キャトル)」( http://www.quatrebeaute.com/)を運営開始。現在、エチカ表参道と有楽町マルイ、新宿マルイ本館に3店舗を構えており、有楽町マルイ店は月間2,500名の利用があるという。 新業態の「FaSS」は、そんな「キャトル」の姉妹店という位置づけだ。
「FaSS」構想のきっかけは、女性をターゲットにしている「キャトル」に2009年頃から20〜30代の若い男性が訪れるようになったこと。ファッションビルのレディースフロアといった男性が入りにくい立地にもかかわらず、 職場の女性や恋人などに紹介されて来店する男性は、増加傾向にあるそうだ。このニーズを受け、“床屋”のイメージを持たれがちな「QB」には入りにくいという男女をターゲットに、20〜30代の男性も利用しやすい「FaSS」を立ち上げることになった。
「もともと、既存の『QBハウス』の利用者は30代以上の男性ビジネスマンが約9割以上を占めており、弊社では以前より、子どもの頃から美容室に行き慣れていて身なりや外見への意識が高い20〜30代男性=“美容室世代”の男性を取り込めていないという課題を持っていました。また、産業構造の変化で仕事を持つ多忙な女性が増えており、時間を有効に使いたいという女性のニーズも見込めるため、 20代〜40代の男女をターゲットにした新業態を立ち上げることになりました」(キュービーネット・経営企画部/村田ひとみさん)
店名の「FaSS」は、“Fast Salon for Slow Life”の略。効率化を優先してきた「QB」などよりも居心地の良さを追求するため、時間を謳わず、価格帯にも幅を持たせて利便性を高めた。
価格帯は、カット&スタイリング2,100円、大学生まで1,890円、小学生まで1,575円、スタイリングのみ(巻き髪)1,575円、前髪カット735円。一律料金の「QB」などは券売機による前払い制だが、 「FaSS」では同社で初めてレジを導入し後払い制にした。レジを用いることでメニューに幅をもたせることが出来るようになり、商業施設のキャンペーンを導入するなど、既存店ではできなかったサービス展開が可能という。
入店からカットまでの流れは、まず自動受付機での受付けからスタート。自動受付機には待ち人数とおよその待ち時間が表示されており、QRコードを読み込んでメールアドレスを登録すれば、 2組前にメールで知らせしてくれるため混雑時には外出も可能だ。カット後はドライヤーで毛をはらい、長さがある場合はストレートアイロンでのブローやコテでの巻き髪のほか、ワックスなどでスタイリングもしてくれる。 予約や指名はできないが、逆に思い立ったときにふらっと立ち寄ることができ、忙しい人でも気軽に髪を切ることができるというわけだ。
「ファストファッションやファストフードが台頭しているなか、特に20代は安くて良いものを選ぶ志向があります。カットサロンも同じように、“ファストカット”という考え方が浸透し、 質の高い生活を送るためにも時間を有効的に使って、気軽に髪を切ってほしい。気軽に立ち寄れて、短い時間でもくつろいでいただけるような店舗を目指しています」(村田さん)
出店場所には、首都圏で、駅近く・または駅ナカの若い男女が集う場所を条件に探したところ、渋谷や恵比寿、横浜などが候補に浮上。そんななか、中目黒は、居住者に30〜40代が多く、 男女比が5:5というユニセックスな街であることが決め手になり出店を決めたそうだ。また、美容室の激戦区で高級サロンも多い中目黒で、同店がどのように受け入れられるかを試したいという。
IDEEが手掛けた店舗は、人が最もくつろげる場である「家」がコンセプト。障子や格子の柔らかなスクリーンで区切られながら繋がる日本家屋をイメージし、玄関(エントランス) を入ったらリビング(待ち合いスペース)に通され、ダイニング(カットスペース)でもてなされる、という動線と空間がつくられた。そのためカットスペースの鏡台やカット用のイスは ダイニングテーブルやイスをテーマに作った特注品を使用。アロマの香りがほのかに漂い、木製インテリアに囲まれた温かみのある空間になっている。広さは約15坪、席数は4席。 IDEEならではのこだわりが垣間見られる店舗だが、内装費は既存の「QB」と同額程度に抑えている。
利用者数は1日平均50人。20〜40代が中心で、男女比は5:5。近隣の居住者が多く、通りすがりに同店を知った新規客が7割を占めるという。子どものカットや親子での利用も多いそうだ。 また、同ビルの上層階に産婦人科があることから妊婦の利用も目立ち「出産前でにおいに敏感だが、カラーやパーマ剤のにおいがしないから安心して来られる」という意外なニーズもあったという。
「割合でみると、ターゲットとしていた“美容室世代”の20代男性の利用が最も多いですね。男性は女性に比べて3〜4週間に1回とカットサイクルが短く、1度利用して気に入った店舗に通い続ける傾向があります。 若者の節約志向や収入の減少などもありますが、髪を切ることの心地よさや、美容室が身近で気軽な場所だということがわかって頂けるとリピートに繋がるのでは」(村田さん)。
眉毛や爪を整え、メンズスキンケア用品を使うことが当たり前になりつつある“美容室世代”。「FaSS」が時代や世代に合う業態を生み出したように、彼らの消費傾向や趣向を捉え、性別で縦割りにしないユニセックスなサービスが、ビジネスチャンスに繋がるようだ。
同店は今後、国内外を問わず5年で50店舗の出店を目指すという。
[取材・文/緒方麻希子(フリーライター)]
●FaSS 中目黒店
http://fasssalon.com/
〒153-0051
東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワーアネックス1F
営業時間: 平日・土曜10:00〜21:00
日曜・祝日10:00〜20:00
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