カナダの自転車ブランド「LOUIS GARNEAU(ルイガノ)」初の直営店舗として2011年4月13日、吉祥寺本町(東京都武蔵野市)にオープンした「LOUIS GARNEAU STORE(ルイガノストア)」。同ブランドの輸入販売を行なう(有)アキ・コーポレーションが運営する。
店舗面積は約46坪。東急吉祥寺店裏の、雑貨やファッション、飲食の路面店が充実したエリアにあり、休日のみならず平日夕方の通行量も多い。ヨーロッパ風の石造りの建物の前に、ルイガノブランドのカラフルな自転車が並ぶ様は通りを歩く人の注目を集める。取材に訪れたのは平日の昼間であったが、それでも近隣在住とおぼしき女性客やカップル、ファミリーが絶え間なく店内に入ってくる。
ルイガノは、スポーツ/シティサイクルの「LOUIS GARNEAU(ルイガノ)」とハイエンドユーザー向けの「GARNEAU(ガノー)」の2ブランドを展開。同店ではその両方をカバーしている。
スポーツサイクルのフラッグショップと聞くと本格派スポーツサイクルの商品ウエイトが高いのではないかと考えそうだが、そうしたリアルスポーツのカテゴリーに割かれたスペースは、約40坪の売場面積のうち5分の1程度。同店が力を入れているのは、むしろライトユーザー向けの完成車やキッズ向け、電動サポート付き自転車、ライトやキーチェーンといった関連商品だ。さらに、「ルイガノストア」のショップ主導で企画するオリジナルのカジュアルアパレル類も大きくフィーチャーしており、ルイガノの自転車を中心としたセレクトショップ、というべき商品構成は見ていても楽しい。
「ここ数年で、既にルイガノブランドの自転車そのものの認知は進んできました。次のステップとして、ルイガノブランドの商品をいつでも見ることができるフラッグショップを作り、ルイガノの自転車を使ってどう“自転車ライフ”を楽しむかという、“遊び”のソフトの部分を含めて提案したいと考えました。出店のエリアは、既存の取り扱い店舗やユーザーが多い目黒、品川、世田谷区方面やスポーツ自転車の専門ショップが多い青山エリアは避け、かつファッションのイメージが高い街を検討し、この吉祥寺に決定したんです」と同社ショップマネージャーの竹本将史さん。
2003年頃に街乗り対応のスポーティな自転車=クロスバイクの普及が都市部で進み、ここ5年くらいで一気に浸透、自転車ブームといえる状況は今なお継続中。これを牽引してきた原動力の一つが、ルイガノ、そしてBianchi(ビアンキ)やGIANT(ジャイアント)といった海外ブランドのライトスポーツ車だ。それまでのロードレーサーは20万円以上という価格帯だったのに対し、こうしたライトスポーツ車は、中心となる価格帯が7万円台。国内ブランドの量産スポーツサイクルにはないカラーリングやデザインの魅力もあって、それまでのスポーツサイクルとは異なるユーザー層を開拓してきた。
「ルイガノの自転車を選ばれる方は、スポーツを楽しむというよりスポーツアイテムでおしゃれを楽しみたいというスタンスの方がほとんど。アディダスやナイキのスポーツシューズやウェアをタウンユースで着たり、山ガールがアウトドアファッションを楽しむのと同じ感覚ですね。それに、性能のいいスポーツサイクルは、街乗りでも快適なんですよ」(竹本さん)
半年を経た時点での客層は、男性:女性の比率が3:7。競技仕様から子ども向けまで幅広く展開する同ブランドの実車をフルラインで見ることができたり、電動自転車等の試乗ができるのものフラッグショップならではで、遠方から訪れる客も多いという。
ショップを運営するスタッフには、経験豊富な社内のメカニック担当の他に、店頭に立つスタッフにあえてアパレル販売経験者の女性スタッフを採用した。サイクルショップに行っても、“商品について何をどう聞いたらいいのかも分からない”というユーザーも多いはず。その点、アパレルや雑貨店のような雰囲気で間口を広げた「ルイガノストア」は初心者にとっても大きな魅力だろう。
ニューモデルが投入される9月の時点で、車両の売上が全体に占める比率は約70%。構成比は時期によって大きく変動するが、店側でも需要の変化に合わせて客を飽きさせないような工夫をこらしているという。
豊富に揃ったパーツ類も、軽量化など走行性能向上を目指したものばかりではない。パフォーマンス向上を目的としたカスタムや改造ではなく、カラーや素材などの“コーディネート”を楽しむことを中心に提案しているのが「ルイガノストア」の特徴だ。
「お客様は女性を中心に自転車について何も分からない、という方が圧倒的に多いですが、それでいいと考えています。洋服と靴、バッグ…とファッションをコーディネートするように、自転車のパーツをセレクトして楽しんでもらいたいですね」(竹本さん)
「ルイガノストア」では今後、アパレルや雑貨の品揃えをさらに強化し、フレームやサドルなど自社の自転車パーツを使ったオリジナルのインテリア雑貨や家具の開発を進めているという。ルイガノブランドが目指しているのは、自転車だけではなく“ライフスタイルの総合ブランド”なのである。
「ここは自転車を売るためのショップではなくて、ルイガノというブランドを、より快適に楽しんでいただくための場所なんです。だからこそ、お客様と直に触れ合える直営店のメリットを最大限に活かし、お客様のニーズをどんどん店に反映させていきたい。他にはないアパレルや雑貨などを幅広く取り揃えて、新しいカテゴリーを作っていきたいですね」(竹本さん)
「ルイガノストア」では、商品を通した提案だけでなく、中心客層であるビギナー/ライトユーザーを対象としたイベントなども開催し、自転車を核としたライフスタイルを今後さらに提案していきたいという。さらに、レンタルサイクルサービスをスタート予定の他、「サイクルマップ」の制作や、近隣ショップにサイクルホルダーの提供を行うなど、自転車で遊びに訪れやすい環境づくりにも取り組む予定だそうだ。
[取材/文:本橋康治(ライター/「アクロス」コントリビューティング・エディター)]