去る2011年11月25日、東北コットンプロジェクトの取材後に、立ち寄った仙台のセレクトショップgarden(ガーデン)。偶然にも、東京の若手デザイナーによる合同即売会が行われており、アラウンド90年生まれのおしゃれな若者で賑わっていたため、さっそく取材を行った。
即売会は11月26日 〜 28日の3日間で開催。参加したのは、nudumigui(ヌスミグイ)、desperate(デスペレート)、5TOY(ゴトイ)、veveropparuuu(ベベロッパル)の4ブランドで、いずれも東京の若手デザイナーが手がける個性派ブランドである。
企画を行ったのは、nudumigui(ヌスミグイ)のデザイナー山杢勇馬さん(23)。山杢さんは、幼稚園からバイクのレースを始め、2004年に関東1位に。全日本にも参戦するが、怪我により引退。その後、ファッションレーベルwrittenafterwordsが主宰する「ここのがっこう」でファッションやもの作りを学び、2010年10月にブランドをスタートした。
山杢さんはブランドを始めた当初から、受注会/展示会で商品を販売する方法に疑問を抱いており、手作りの1点ものの商品を即売会で消費者に直接販売する方法にこだわっている。現在は東京・原宿のセレクトショップmacaronic(マカロニック)で、3月と11月の年2回、オンシーズンのアイテムの即売会を開催しているという。
「めまぐるしく変わる東京のトレンドのなかでは、展示会でオーダーした商品が届く数カ月後には、気分が全く変わってしまって、その商品を欲しくなくなる恐れがあります。しかし、オンシーズンで作った商品の即売会なら、お客様にはそのときに欲しいものをすぐに買って着てもらえます」(山杢さん)
そうした独自の方法で、ブランドを展開する山杢さん。今回、仙台での即売会を企画したのは、震災後に、ファッションの意味を考えたことがきっかけだったという。
「震災後、贅沢は敵だという世の中のムードを感じて、ファッションは贅沢なのか、自分の作る服は必要とされていないのかと悩みました。そんな思いをTwitterに書き込んだら、被災者の方から、『自分の家は津波で流されてしまったけれど、落ち着いたら東京に行ってnusumigui(ヌスミグイ)の洋服を買いたい』というコメントを頂いたんです。そこで、まずは自分のやれることをやるしかないと思い、ファッションで何ができるかを真剣に考えました」(山杢さん)
まず山杢さんは、チャリティアイテムの製作をスタートする。これは、被災地の木材で作られたボタンを使ったファッションアイテムを作成し、売り上げの一部を塩害で被害を受けた農地復興のために寄付するというものである。
東京・原宿のmacaronic(マカロニック)で、11月に即売会を開催。せっかくなら同様の即売会を地方でも行おうと、以前から知り合いだった、仙台のセレクトショップgarden(ガーデン)に企画を持ち込み、今回の実現に至った。同店にとってもこうしたイベントは初の試みだという。
イベントに際し、もともと知り合いだった、desperate(デスペレート)デザイナーの小田桐潤さん(23)、高円寺キタコレビル内「はやとちり」のオーナー後藤慶光さん(26)に声をかけ、賛同を得る。さらに「はやとちり」で取り扱っているveveropparuuu(ベベロッパル)のデザイナー中村実優さんも加わり、4ブランド共同でイベントを行うことになったというわけだ。