今年3月11日に起きた東日本大震災から9カ月。甚大な被害を受けた東北地方や被災者に向けたさまざまな支援が行われているなか、デザイナーら5人が手掛けるプロジェクト「seeds(シーズ)」がスタートした。seedsとは日本語で種のこと。福島で植えられることのなかった菜の花の種を販売し、利益を生産者に寄付している。
「seeds」のメンバーは、ファッションブランド「ASSEDONCLOUD(アシードンクラウド)」のデザイナーの玉井健太郎さん(31歳)、同アシスタントの清野大介さん(28歳)、ファニチャーレーベル「E & Y(イーアンドワイ)」の秋本裕史さん(30歳)、WEBサイトの開発などを手掛けるベンチャー「株式会社スプール」の代表取締役CTOの深浦朋重さん(34歳)、ロゴやパッケージ、紙媒体などのデザインを行う「ALL RIGHT GRAPHICS」アートディレクター/グラフィックデザイナーの高田唯さん(30歳)。
発案は、玉井さんと秋本さん。震災以降、2人は自分たちの仕事であるデザインの意義を問うようになると共に、デザインの力で自分たちが被災地に役立てることはあるだろうかと考えるようになった。そして6月、人と人、被災地とを繋げるコミュニケーションをデザインしたいという考えに行きつき、より多くの人々に広めることができる「種」を使った活動を始めることを決意。被災地支援というコンセプトに関係なく、デザイン性があって消費者に「欲しい」と思ってもらえるパッケージで種を販売し、販売利益を農家に還元することにしたという。活動にはWEBやグラフィックのデザインなども必要になるため、以前から玉井さんと交流があった他のメンバーも参画することになった。
プロジェクトは、福島で植えられなかった菜種を、日本各地の土壌で育てようというものである。菜種は、福島県天栄村の農家の提供によるもの。震災前に収穫されたもので、本来ならば食用油の原料として出荷されるはずだったが、震災の影響による価格崩れなどの懸念があったため、農家が廃棄を考えていたものを、「seeds」が譲り受けたという。
旗をかたどったパッケージのなかには、パラフィン紙に包まれた菜種30粒ほどが入っており、販売価格は300円。旗は、「ALL RIGHT GRAPHICS」の活版印刷工房「オールライト工房」で活版印刷を施し、植木鉢に立てて濡れても破れないように、防水のためのロウ加工がされている。旗のデザインには、被害を受けた東日本のことを忘れずに(2011 NE JAPAN)、この「seeds」の第一弾プロジェクト(SEEDS 01)を、自分たちの手で育てていこう(じょうろの絵柄)という意味が込められている。
また、活動のリアクションをより多くの人と共有するため、「seeds」のホームページでは、種を植えた人が植えた場所とコメントを投稿することが可能。地図上に植えられた場所をマッピングしていく。
「種は生きているので、植えて収穫すればまた増えます。人に渡しても生き続けるもので、ストーリー性があります。広く知ってもらうためにも、小さくて安くて身近で良いのです。大きな利益が出るわけではないので、利益を戻すというよりも、被災地のことを思い続けてもらうことが狙い。これが何か考えるきっかけになればと思います」(清野大介さん)