以前アクロスでも2回にわたってレポートを掲載した「東北コットンプロジェクト(過去の記事はこちら)」。津波被害にあって稲作が出来なくなった地域に、塩害に強い綿を植えて農地の再生をめざすこの試みは、その後着々と進行している。いよいよ収穫の時期を迎え、11月26日に仙台市荒浜綿畑で、プロジェクトメンバーと地元住民との交流を目的とした「ワタ見会」が開催された。
前回取材した9月初旬、青々とした葉が茂り、花が咲き始め、順調に育っているように見えた。しかし、これから実を付けるという9月21日、台風15号により畑が冠水、数日間水没してしまうという被害を受けた。一時期は収穫自体も危ぶまれたがなんとか実をつけた木も残った、という状況を聞いていた。
今回来てみると、一面緑だった畑は、枯れた葉とコットンボール(綿の実)をつけた綿の木で、茶色く染まっていた。実がはじけているものは多くはないものの、開いた中にはしっかり綿が詰まっていた。これは木を抜いてから乾燥させ、綿を取り出して使うという。収穫量こそ少ないが、「東北コットン」が確かに生まれた。
綿栽培は名取市でも行われており、そちらは荒浜よりも生育がよく、11月初旬から綿摘みを開始している。これからそれらの綿を集め、紡績、製品化へと進み、2012年春には「東北コットンプロジェクト」ブランドで統一して商品を展開する予定である。
今回の「ワタ見会」は、ワタ畑の横でお祭りイベントをしながら、地元の人々にワタがどのようなものかを実際に見てもらう、ということをテーマに開催された。仮設住宅を回って案内したり、地元の小学校を通してお知らせを配布、地域からの参加を呼びかけていた。当日は、仮設住宅をまわる巡回バスや、自家用車で来る人で会場はなかなかの賑わい。屋台にはすぐに行列ができていた。
屋台には、東京の「クルックキッチン」からローストポークや焼き牡蠣、焼きそば、キーマカレーなど、地元の「イーストファームみやぎ」によるじゃがバターや豚汁、焼きもちと、充実のメニュー。遊びコーナーの輪投げ、射的などの景品は、参加企業が持ち寄った靴下、ジーンズ、小物など盛りだくさんだった。
また、小さなステージが設けられ、参加企業クルック代表の小林武史さんと、一青窈さんが登場。一青窈さんはプロジェクトの活動に共感し、ライブステージで、東北コットンの畑の映像を使っているそうだ。本物の綿畑をバックに、小林さんのキーボードで歌うという、贅沢なサプライズだった。