アーティスト・宇川直宏さんが2010年3月にスタートしたライブストリーミング・スタジオ/チャンネル「DOMMUNE」。渋谷区恵比寿の地下スタジオから月〜木曜日にかけてUSTREAMで配信しているトークやライブは、その多彩さに加えてハイクォリティなサウンド、独特のリアルタイム感から瞬く間に人気を集め、日々その存在感を増している。
そのDOMMUNEが2011年12月、例年ラフォーレミュージアム原宿で開催されているパフォーマンスイベント「HARAJUKU PERFORMANCE+」との共同で「HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE」を5日間に渡って開催した。これまでも3.11後の福島やドイツのドルトムントなどで中継を行なってきたが、今回はジャンルや世代を横断するパフォーマンス・フェスとのコラボレーションという、新たな広がりを感じさせるものとなった。
DOMMUNEは通常、19〜21時のトークプログラムと、21〜24時のDJプログラムの2部構成。この「HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE」では、ステージでのライブプログラムを大きくフィーチャーし、通常よりもスケールアップした構成となった。
トークプログラムでは「菊地成孔と大谷能生のJAZZDOMMUNE」や吉田豪&杉作J太郎「JGO」など、通常配信でも人気のあるレギュラー番組に加え、「原宿2.0/社会と地域とコミュニケーション」「原宿をリセット?!——原宿の新たな展望を喚起、希望と可能性について語りあう」 という原宿を軸としたトークセッションを加え、原宿をめぐるポップカルチャーの現在を網羅したプログラムをラインアップした。
ライブプログラム「HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE LIVE PLUS !!!!!」は、ジャズからアイドル、オルタナティブまで各日全く異なるジャンルとテイストの出演者をラインアップ。キャパシティ50人のスタジオから配信するレギュラー版よりもアクセスしやすく、大きいキャパシティのラフォーレミュージアム原宿という会場で開催されたこともあり、よりスケール感を増したイベントとなった。
会場には5日間合計で約 1,800人を動員。ライブストリーミングはトータルで約70,000人が視聴し、改めてDOMMUNEへの注目度の高さを示す盛況となった。これは独自性のあるコンテンツをネットで気軽に視聴できる、という手軽さだけが受けたわけではない。ソーシャルメディアと連動したリアルタイム感の広がりや、放送事故すらもエンタテインメントに昇華させるような姿勢から、ビューアーは自主規制で窮屈になった既存マスメディアにはない魅力を感じているのである。
代表の宇川直宏さんはこう語っている。
「DOMMUNEは“日刊のメディア”なので、リアルタイムにどういう反応を返せるか、という反射神経が求められるん です。反射神経とはつまりパフォーマンスであり、今回「HARAJUKU PERFORMANCE+」という、同じくコンセプトを共有するフェスとしっくりハマった空間を形にできて嬉しかったですね。ライブストリーミングで配信す るという行為そのものがパフォーマンスでありファインアートだ、という意識でやっているので、こうしてパフォーミングアートのフェスにお誘いいただいたの はとても意義があるんです」
アーティストとしての宇川さんは、これまで自然災害に焦点を当てた作品を発表してきた。そして2011年8月には、被災地の復興支援を目標とした 「FREE DOMMUNE zero〈0〉」というフェスを企画したが、当日、会場が集中豪雨に襲われて中止となってしまうという出来事があった。こうした事件も含めて、DOMMUNEは日々更新され、宇川さんの「現在美術」として世界に配信され続けている。
「今はアートの定義も揺らいでいます。特に3.11の震災後には人間にとって必要なものは何なのか、と再び定義することが必要になったんです。ファッショ ンもアートも人間にとって必要なものですが、震災直後には必要ないものとされていた。かつて自分たちが思想化してきたアートやファッションを定義しなおす 現場を、今ここで持てたことはすごく重要だった」(宇川さん)
パフォーマンスは身体表現であるが、ファッションもまた消費して、身につけることで表現としての意味を持つ。そうした表現としてのファッションが最も意味を持つ街の一つである原宿という場所で今回のフェスが開催されたことを、宇川さんは重要な要素として挙げている。
「今ならきゃりーぱみゅぱみゅちゃん、90年代だったら藤原ヒロシさんに代表されるように、原宿は個人の強い意志があれば街を改変できるような、とてもスリリングな現場です。原宿と渋谷ではフェスの意味が全く違ってきます。渋谷はワールドワイドに定義づけされた枠から出ていくことができず、枠その中で表現するしかない。個人の影響っていうのが渋谷では見られないですよね。
たとえば「シブカル祭」を見て、じゃあオレらはどういう立ち居振る舞いをしようか、と意識はしました。ただあれは消費を加速するためのカタログでしかな かったと思うし、80年代から変わらない思想の上澄みしか拾い上げていないと思う。いま売れている人を集めるのではなく、僕らは定義しなおすという作業を して、思想哲学の支柱を持った表現をしているんですよ」(宇川さん)
ファッション、パフォーマンス、ライブストリーミング。今回のフェスを行なった3者はいずれも「今」を体現する組織であり、その他では体験できない時間軸を共有している、と宇川さんは言う。世界に開かれながらも“いま”“ここ”でしか体験できないライブ感がDOMMUNEの魅力だが、それはキャパシティが大きくなったこの会場でも十分に発揮されていた。
ラフォーレ原宿の現場から、それぞれが見ている空間、そしてソーシャルメディアのタイムラインという第2、第3の現場へと同期・拡張するDOMMUNEの磁場。これらが繋がる同時性によって、リアルな街を動かしていくことができるのではないか、と宇川さんは語る。
「僕は今、渋谷の地下スタジオと、サイバーネットワークに流れる時間の中でしか生きていない。だからこそ、こうして様々な土地でDOMMUNEを配信することで、その地域の波動みたいなものが浮かび上がってくるんです。今回、このライブストリーミングを見たビューアーが原宿の街を見る意識をアップデートした後、次に原宿を訪れた時には街の空気が違って感じられると思うんです」(宇川さん)
配信技術の向上やブックレーベルへの展開など、DOMMUNEというメディアが生み出す磁場は、今後まだまだ拡張していく可能性を持っている。その変化を体験するには、DOMMUNEが配信するライブストリーミングを日々目撃し続けるほかないのである。
取材・文/本橋康治(ACROSSコントリビューティングエディター/フリーライター)
「DOMMUNEは“日刊のメディア”なので、リアルタイムにどういう反応を返せるか、という反射神経が求められるん です。反射神経とはつまりパフォーマンスであり、今回「HARAJUKU PERFORMANCE+」という、同じくコンセプトを共有するフェスとしっくりハマった空間を形にできて嬉しかったですね。ライブストリーミングで配信す るという行為そのものがパフォーマンスでありファインアートだ、という意識でやっているので、こうしてパフォーミングアートのフェスにお誘いいただいたの はとても意義があるんです」
アーティストとしての宇川さんは、これまで自然災害に焦点を当てた作品を発表してきた。そして2011年8月には、被災地の復興支援を目標とした 「FREE DOMMUNE zero〈0〉」というフェスを企画したが、当日、会場が集中豪雨に襲われて中止となってしまうという出来事があった。こうした事件も含めて、DOMMUNEは日々更新され、宇川さんの「現在美術」として世界に配信され続けている。
「今はアートの定義も揺らいでいます。特に3.11の震災後には人間にとって必要なものは何なのか、と再び定義することが必要になったんです。ファッショ ンもアートも人間にとって必要なものですが、震災直後には必要ないものとされていた。かつて自分たちが思想化してきたアートやファッションを定義しなおす 現場を、今ここで持てたことはすごく重要だった」(宇川さん)
パフォーマンスは身体表現であるが、ファッションもまた消費して、身につけることで表現としての意味を持つ。そうした表現としてのファッションが最も意味を持つ街の一つである原宿という場所で今回のフェスが開催されたことを、宇川さんは重要な要素として挙げている。
「今ならきゃりーぱみゅぱみゅちゃん、90年代だったら藤原ヒロシさんに代表されるように、原宿は個人の強い意志があれば街を改変できるような、とてもスリリングな現場です。原宿と渋谷ではフェスの意味が全く違ってきます。渋谷はワールドワイドに定義づけされた枠から出ていくことができず、枠その中で表現するしかない。個人の影響っていうのが渋谷では見られないですよね。
たとえば「シブカル祭」を見て、じゃあオレらはどういう立ち居振る舞いをしようか、と意識はしました。ただあれは消費を加速するためのカタログでしかな かったと思うし、80年代から変わらない思想の上澄みしか拾い上げていないと思う。いま売れている人を集めるのではなく、僕らは定義しなおすという作業を して、思想哲学の支柱を持った表現をしているんですよ」(宇川さん)
ファッション、パフォーマンス、ライブストリーミング。今回のフェスを行なった3者はいずれも「今」を体現する組織であり、その他では体験できない時間軸を共有している、と宇川さんは言う。世界に開かれながらも“いま”“ここ”でしか体験できないライブ感がDOMMUNEの魅力だが、それはキャパシティが大きくなったこの会場でも十分に発揮されていた。
ラフォーレ原宿の現場から、それぞれが見ている空間、そしてソーシャルメディアのタイムラインという第2、第3の現場へと同期・拡張するDOMMUNEの磁場。これらが繋がる同時性によって、リアルな街を動かしていくことができるのではないか、と宇川さんは語る。
「僕は今、渋谷の地下スタジオと、サイバーネットワークに流れる時間の中でしか生きていない。だからこそ、こうして様々な土地でDOMMUNEを配信することで、その地域の波動みたいなものが浮かび上がってくるんです。今回、このライブストリーミングを見たビューアーが原宿の街を見る意識をアップデートした後、次に原宿を訪れた時には街の空気が違って感じられると思うんです」(宇川さん)
配信技術の向上やブックレーベルへの展開など、DOMMUNEというメディアが生み出す磁場は、今後まだまだ拡張していく可能性を持っている。その変化を体験するには、DOMMUNEが配信するライブストリーミングを日々目撃し続けるほかないのである。
取材・文/本橋康治(ACROSSコントリビューティングエディター/フリーライター)
HARAJUKU PERFORMANCE +DOMMUNE
DOMMUNE(ドミューン)
住所 東京都渋谷区東 4-6-5 サンライズビル(旧名:ヴァビル)
TEL 03-6427-4533
放送日 月〜木曜日 18:00〜24:00
http://www.dommune.com/
HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE
会場:ラフォーレミュージアム原宿
住所:渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿6階
会期:2011年12月20日(火)〜12月24日(土)
■ 12月20日(火)
トークプログラム「菊地成孔と大谷能生のJAZZDOMMUNE」
出演:菊地成孔、大谷能生
ライブプログラム「HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE LIVE PLUS !!!!!♯1」
出演:OL Killer、真鍋大度+石橋 素
■ 12月21日(水)
トークプログラム「原宿2.0/社会と地域とコミュニケーション」
出演:東浩紀、五十嵐太郎、藤村龍至、大山顕 司会:速水 健朗
■ 12月22日(木)
トークプログラム「Alternative IDOL SUMMIT/アイドル不法集会」
出演:吉田 豪、杉作J太郎、さやわか、ロマン優光
ライブプログラム「HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE LIVE PLUS !!!!!♯2」
出演:バニラビーンズ、hy4_4yh、制服向上委員会、Negicco、でんぱ組.inc
■ 12月23日(金・祝)
トークプログラム「冨田勲/PLANET ZERO〜更新される音像太陽系」
出演:冨田勲、小室哲哉 司会: 松山晋也
ライブプログラム「HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE LIVE PLUS !!!!!♯3」
出演:小室哲哉
■ 12月24日(土)
トークプログラム「原宿をリセット?!——原宿の新たな展望を喚起、希望と可能性について語りあう。」
司会:平川武治 出演:森永邦彦(ANREALAGE)、猪子寿之(チームラボ) 、村田明子(MA)
ライブプログラム「HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE LIVE PLUS !!!!!♯4」
出演:salyu x salyu with 小山田圭吾 大野由美子
住所 東京都渋谷区東 4-6-5 サンライズビル(旧名:ヴァビル)
TEL 03-6427-4533
放送日 月〜木曜日 18:00〜24:00
http://www.dommune.com/
HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE
会場:ラフォーレミュージアム原宿
住所:渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿6階
会期:2011年12月20日(火)〜12月24日(土)
■ 12月20日(火)
トークプログラム「菊地成孔と大谷能生のJAZZDOMMUNE」
出演:菊地成孔、大谷能生
ライブプログラム「HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE LIVE PLUS !!!!!♯1」
出演:OL Killer、真鍋大度+石橋 素
■ 12月21日(水)
トークプログラム「原宿2.0/社会と地域とコミュニケーション」
出演:東浩紀、五十嵐太郎、藤村龍至、大山顕 司会:速水 健朗
■ 12月22日(木)
トークプログラム「Alternative IDOL SUMMIT/アイドル不法集会」
出演:吉田 豪、杉作J太郎、さやわか、ロマン優光
ライブプログラム「HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE LIVE PLUS !!!!!♯2」
出演:バニラビーンズ、hy4_4yh、制服向上委員会、Negicco、でんぱ組.inc
■ 12月23日(金・祝)
トークプログラム「冨田勲/PLANET ZERO〜更新される音像太陽系」
出演:冨田勲、小室哲哉 司会: 松山晋也
ライブプログラム「HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE LIVE PLUS !!!!!♯3」
出演:小室哲哉
■ 12月24日(土)
トークプログラム「原宿をリセット?!——原宿の新たな展望を喚起、希望と可能性について語りあう。」
司会:平川武治 出演:森永邦彦(ANREALAGE)、猪子寿之(チームラボ) 、村田明子(MA)
ライブプログラム「HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE LIVE PLUS !!!!!♯4」
出演:salyu x salyu with 小山田圭吾 大野由美子