伝統こけしに新しい角度から光を当てた展覧会「kokeshi pop」がパルコミュージアム(渋谷パルコPART1)で開催され、大きな反響を集めている。主に東北6県で作られてきた民芸品である一方、日本のカワイイを体現するポップな工芸品として、こけしはここ数年クリエイター層を中心にジワジワと注目を集めてきた。この展覧会はその上に伝統的な側面をフィーチャーしたことで、コレクターや中高年層なども含めた幅広い層からの関心を集めたようだ。
本展では「知る」「集める」「撮る」「作る」という4つの楽しみ方を切り口にこけしの魅力をアピール。東北6県(青森、秋田、岩手、山形、宮城、福島)の産地、さらに土湯、弥治郎、鳴子など姿や形の特徴をもとに分類された11の体系に沿って、伝統こけしの世界を分りやすく紹介している。
展示されたこけしをじっくり見てみると、その表情や意匠にはバリエーションがあることがわかる。こけしは基本的に円柱の胴体に球体の頭部が乗った形状なのだが、その範疇に収まらない形状のものもある。工人(こうじん)と呼ばれる職人の手によって作られたこけしには、ハンドメイドな工芸品としての魅力があることがわかる。
中でも「弥次郎系」と呼ばれる宮城県のこけしは、そのかわいさに注目したイームズ夫妻がインテリアに飾っていたことで知られており、通称「イームズこけし」として復刻もされている。その他にもブルーノ・タウトやディック・ブルーナといった海外のアーティストがこけしに注目していたという。本展ではディック・ブルーナの「ミッフィーこけし」が復刻販売され、人気を集めていた。
ミッフィーこけしのような分りやすい例だけではなく、伝統的なこけしもまた、視線の置き方次第でポップな作品として楽しむことができるというのが本展のテーマ。特設ショップには伝統こけしやオリジナルのこけし雑貨、浅生ハルミンさんの創作こけしなどが幅広くラインナップされていた。
こけしを日本の「カワイイ」文化のルーツにあるものとして再評価し、買ったり飾ったりして楽しむ対象にする動きは、特にここ数年に顕著になってきた。その一つの契機となったのはアーティスト・沼田元氣さんがプロデュースしたこけしとマトリョーシカの専門店「コケーシカ」の開店(2009年/神奈川県鎌倉市)だろう。レトロ、キッチュといった切り口で伝統デザインを再評価する視線は、ナガオカケンメイさんの「D&DEPARTMENT」の活動などにも通じるものがある。
観客がこけしを写真に撮影したり、オリジナルなこけしを作るような、体験を通してこけしの魅力に触れられる企画も織り込まれた。こけしの産地では白いこけしに自分の好きな顔や着物を描く絵付け体験ができるが、本展ではその一例として著名なクリエイターたちが制作したオリジナル絵付けこけしを展示。さらに伝統こけしの実演販売、こけしの絵付けワークショップなども用意された。
こけしはそもそも東北の木地師(木のお盆や器を作る職人)が副業として子ども向けの玩具として作り、温泉地の土産品として売ったのがはじまり。愛好家によって“こけし”という名称が1934年に定められ、武井武雄や竹久夢二らが紹介したことからかつて一大ブームとなった。こうした歴史を踏まえ、本格のファン向けの貴重な資料を紹介しているのも本展のポイント。「コドモノクニ」の童画作者で、手塚治虫などにも影響を与えたことで知られる武井武雄は著名なこけしコレクターで、彼の作品の一部や資料が特別展示された。
こうした日本のレトロなポップカルチャーのアイコンとしてこけしを再評価する動きは、北欧デザインのシンプルで温もりのある肌触りを楽しむことや、ヨーロッパやアジアの伝統工芸品をポップなクラフトとして愛でるような生活の楽しみ方にも通じるものがある。さらに震災以降、東北6県への関心の高まりもあって、さらに動きが加速してきた感がある。2011年7月にCLASKA Gallery & Shop "DO" 本店(東京都目黒区)で開催された「ドーのこけし展」、同11月にTOKYO CULTUART by BEAMS(東京都渋谷区神宮前)で11月、浅草橋天才算数塾のキュレーションで開催された「スマートなこけし展」は、いずれも多くのクリエイターや著名人が参加したことで注目を集めた。
東北6県で作られてきたこけしの展覧会が東日本大震災から1年後に、こうして渋谷で開催され、注目を集めたことには大きな意義がある。こけしの伝統文化は現在、工人たちの高齢化に加え、今回の東日本大震災で大きな打撃を受け、多くのこけしの系統が消滅の危機に瀕しているという。気に入ったこけしを買うことが、小さいながらもひとつの東北支援につながるはずだ。本展が今後も継続的に広がっていくことを期待したい。
取材・文/本橋康治(ACROSSコントリビューティングエディター/フリーライター)
こけしはそもそも東北の木地師(木のお盆や器を作る職人)が副業として子ども向けの玩具として作り、温泉地の土産品として売ったのがはじまり。愛好家によって“こけし”という名称が1934年に定められ、武井武雄や竹久夢二らが紹介したことからかつて一大ブームとなった。こうした歴史を踏まえ、本格のファン向けの貴重な資料を紹介しているのも本展のポイント。「コドモノクニ」の童画作者で、手塚治虫などにも影響を与えたことで知られる武井武雄は著名なこけしコレクターで、彼の作品の一部や資料が特別展示された。
こうした日本のレトロなポップカルチャーのアイコンとしてこけしを再評価する動きは、北欧デザインのシンプルで温もりのある肌触りを楽しむことや、ヨーロッパやアジアの伝統工芸品をポップなクラフトとして愛でるような生活の楽しみ方にも通じるものがある。さらに震災以降、東北6県への関心の高まりもあって、さらに動きが加速してきた感がある。2011年7月にCLASKA Gallery & Shop "DO" 本店(東京都目黒区)で開催された「ドーのこけし展」、同11月にTOKYO CULTUART by BEAMS(東京都渋谷区神宮前)で11月、浅草橋天才算数塾のキュレーションで開催された「スマートなこけし展」は、いずれも多くのクリエイターや著名人が参加したことで注目を集めた。
東北6県で作られてきたこけしの展覧会が東日本大震災から1年後に、こうして渋谷で開催され、注目を集めたことには大きな意義がある。こけしの伝統文化は現在、工人たちの高齢化に加え、今回の東日本大震災で大きな打撃を受け、多くのこけしの系統が消滅の危機に瀕しているという。気に入ったこけしを買うことが、小さいながらもひとつの東北支援につながるはずだ。本展が今後も継続的に広がっていくことを期待したい。
取材・文/本橋康治(ACROSSコントリビューティングエディター/フリーライター)
kokeshi pop ポップでカワイイこけしの世界
kokeshi pop ポップでカワイイこけしの世界
会場 PARCO MUSEUM パルコミュージアム
渋谷パルコ パート1 / 3F
期間 2012/03/02 (金) −2012/03/12 (月)
入場料 無料
主催 パルコ
名古屋パルコで巡回展開催決定!
日時 2012年4月6日(金)-23日(月)
会場 パルコギャラリー(名古屋パルコ西館8F)
入場無料
会場 PARCO MUSEUM パルコミュージアム
渋谷パルコ パート1 / 3F
期間 2012/03/02 (金) −2012/03/12 (月)
入場料 無料
主催 パルコ
名古屋パルコで巡回展開催決定!
日時 2012年4月6日(金)-23日(月)
会場 パルコギャラリー(名古屋パルコ西館8F)
入場無料