高円寺駅から純情商店街を歩くこと約7分。住宅街の中で看板を掲げるでもなく、ひっそりと妙な違和感を漂わせる古い木造アパートがある。ガラガラとガラス戸を開けると、赤い床の6畳ほどのスペースに、何脚もの椅子やPC、服や絵といった作品などが散在している。
ここが、知る人ぞ知るオルタナティブスペース「ASOKO(アソコ)」である。これまで、ねずみ講に倣ったアート展「ASO講」、酒好きDJ集団「若い芽っこの会」による飲み会「居酒屋 若い芽っこ」、7/31に「8月前夜祭」など一風変わったイベントを開催。20〜30代の感度の高い人々の間で密かな話題を呼んでいる。
「もともとサロン的な場所を作りたいイメージがあって。場所があって自然に人が集まってきて、知り合いが増えて企画が生まれて、みたいな」と語るのは、発起人の一人のダブ丸さん(29歳)。某出版社で漫画雑誌の編集者として働きながら同スペースを運営し、平日の夜や休日にはアソコに集って友人たちと過ごしている。現在は5人のコアメンバーと4人のサポーターをあわせた9人で運営。コアメンバーはエディトリアルデザイナー、映像制作・配信、メッセンジャーなどそれぞれに仕事を持ちながら、各々が運営費を分担している。
オープンのきっかけは2007年4月にまで遡る。高円寺のリサイクルショップ「素人の乱」の中心人物、松本哉(はじめ)さんが杉並区議会議員選挙に出馬し、高円寺駅前で街頭演説と銘打ってさまざまな催しに足を運んでいたことがきっかけのようだ。当時、某美術大学を卒業したばかりだったダブ丸さんは、駅前のロータリーがダンスフロアのような場所に一変(しかも合法!)した風景と、その居心地の良さ、現場の雰囲気に触発され大興奮。「これは自分たちも場所をつくるしかない!」と、もともと友人だった同大学デザイン科卒のFUきん(フキン)さん(29歳)や同級生らに声をかけ、ひと月5万円の店舗物件を借りたのが始まりだ。
“オープンな溜まり場”をイメージしていたが、はじめは身内のパーティーばかりを開催しており、当時は大学の知人以外の人々を巻き込むことができなかったという。その後2008年に、ASOKOの広告として高円寺の文化を独自に編集したフリーマガジンを制作し、その出版記念パーティーなどを行っていくなかで身内以外の人も出入りするようになっていく。
2009年にはtwitterを通して知り合いが急速に増加。「同じ食い物を食って同じエネルギーで身体動かしたらミンナ仲良くなるに決まってるだろってことで、とにかく同じ釜の飯を食うしかない!」(ダブ丸さん)という原理に基づき、「モリッシー」という名の路上で焼肉を食べたり鍋をする、投げ銭の活動を連発。2010年からは「ASOKO Super Market」と題し、身近な人々に出品協力を依頼してガレージセールを行ったり、上映会、トークショーなどのイベントを不定期に開催するようになる。
「SNSを通して人と人が繋がって、ASOKOに遊びに来る人が増えてきて楽しくなってきましたね。その流れで自分たちが好きな作家やアーティストとも一緒に何か作ったりイベント企画して遊ぶようになったりして」(ダブ丸さん)。
一時は、コアメンバーのプライベートが充実し、ASOKOから足が遠のいて空中分解しかけたこともあったようだ。もともと目的が場所を作ることで、その後の展望を具体的にイメージしてなかったこともあり、やめようとしたタイミングは度々あったという。しかし、その都度FUきんさんが固辞。自宅を引き払ってアソコに棲み、住居として使うことで存続していた時期などを経て、現在のスペースに落ち着いている。
金銭を介した場所貸しは基本的に行っておらず、イベントは自分たちと信頼できる友人を中心に企画・運営を行っている。上記の「モリッシー」の方法論をベースに極度にアナログな方法と同時にTwitterやTumblrなどネットを介したコミュニケーションを通じて人の広がりは続いているという。
直近では、2012年2月11日〜3月3日まで、冒頭でも触れた「ASO講」を開催。出展を依頼したアーティストが更にゲスト・アーティストに声をかけ、ゲストがまた「モノ(新旧作品、既製品も可)」を持ち寄ることで場所としての新陳代謝を促しつつ作品を展示するというもの。今まで出会ったことが無かった人が遊びにきて交流が発生し、尚かつ変化し続ける空間作りを目指した。
「僕、面倒くさがりなので(笑)、ねずみ講方式を採ることで、僕らの手から離れて勝手に空間(場所)ができていかないかなーと。お金もらってないんでサービスが無い代わりにイレギュラーなことが起きる余地がある状況にすることは心がけてます」(ダブ丸さん)。
商業目的ではないからこその自由さと適当なゆるさがある一方で、サロンというだけあってある程度クローズドなハードルの高さがあるのも事実。高円寺の商店街でなく住宅街の真ん中にひっそりと存在するロケーション、イベントの内容、そして何よりいつオープンしているか分からないという不定期さ。感覚的にフィットする人だけが訪れることができるというわけだ。そんな独特のコミュニティにひかれて、箕浦建太郎やHanayoといったアーティストも訪れるという。
「アソコって名が示すように、ASOKOは常に抽象であっていい。明確な目的やビジョンもなく、ただ局面がある。ルールは一切なくて、そこにいる人が楽しければ何をしてもOK」(ダブ丸さん)
2009年頃から都内で急増しているオルタナティブスペース。SNSやUstream配信などで告知などの情報発信ができるようになった背景から、クリエイターたちが自らの表現の場としてオープンするケースが増えている。加えてASOKOが独特なのは、ゆるやかな人間同士のつながりという親密感だろう。ここでの活動を通して、既存のココではないどこか、“アソコ”に向かおうという気概もあるようだ。
「今後の具体的な予定は今ないんですけど、日によってメシ屋をやってみたり飲み屋だったり展示とか上映会だったりと、これからも適当にやってきたいですね。告知はTwitter(@asokochan)とかブログにアップしているので、興味があったら誰でも遊びにきてください。週末にしか開かないんですけど、Twitterとかメールで連絡もらえれば対応します。あと企画が面白ければ、場所もただで貸し出しするんで。ほんとは毎日、僕ら以外の人間も含めて、いつも誰かがASOKOの店番してる状況になったらいいんですけどね」(ダブ丸さん)
[取材・文/小林沙友里(エディター/ライター)]
直近では、2012年2月11日〜3月3日まで、冒頭でも触れた「ASO講」を開催。出展を依頼したアーティストが更にゲスト・アーティストに声をかけ、ゲストがまた「モノ(新旧作品、既製品も可)」を持ち寄ることで場所としての新陳代謝を促しつつ作品を展示するというもの。今まで出会ったことが無かった人が遊びにきて交流が発生し、尚かつ変化し続ける空間作りを目指した。
「僕、面倒くさがりなので(笑)、ねずみ講方式を採ることで、僕らの手から離れて勝手に空間(場所)ができていかないかなーと。お金もらってないんでサービスが無い代わりにイレギュラーなことが起きる余地がある状況にすることは心がけてます」(ダブ丸さん)。
商業目的ではないからこその自由さと適当なゆるさがある一方で、サロンというだけあってある程度クローズドなハードルの高さがあるのも事実。高円寺の商店街でなく住宅街の真ん中にひっそりと存在するロケーション、イベントの内容、そして何よりいつオープンしているか分からないという不定期さ。感覚的にフィットする人だけが訪れることができるというわけだ。そんな独特のコミュニティにひかれて、箕浦建太郎やHanayoといったアーティストも訪れるという。
「アソコって名が示すように、ASOKOは常に抽象であっていい。明確な目的やビジョンもなく、ただ局面がある。ルールは一切なくて、そこにいる人が楽しければ何をしてもOK」(ダブ丸さん)
2009年頃から都内で急増しているオルタナティブスペース。SNSやUstream配信などで告知などの情報発信ができるようになった背景から、クリエイターたちが自らの表現の場としてオープンするケースが増えている。加えてASOKOが独特なのは、ゆるやかな人間同士のつながりという親密感だろう。ここでの活動を通して、既存のココではないどこか、“アソコ”に向かおうという気概もあるようだ。
「今後の具体的な予定は今ないんですけど、日によってメシ屋をやってみたり飲み屋だったり展示とか上映会だったりと、これからも適当にやってきたいですね。告知はTwitter(@asokochan)とかブログにアップしているので、興味があったら誰でも遊びにきてください。週末にしか開かないんですけど、Twitterとかメールで連絡もらえれば対応します。あと企画が面白ければ、場所もただで貸し出しするんで。ほんとは毎日、僕ら以外の人間も含めて、いつも誰かがASOKOの店番してる状況になったらいいんですけどね」(ダブ丸さん)
[取材・文/小林沙友里(エディター/ライター)]