秋葉原電気街の中で、ファッションとアキバカルチャーをつなぐ動きは今もなお広がっている。その中で、今後面白い拠点となっていきそうなのがセレクトショップ「伍戒」である。
“アイドル・アニソン歌手が歌ってお給仕するライブ&バー”として人気を集める秋葉原ディアステージと同ブロックにある、雑居ビルの5階。このロケーションがこのままショップ「伍戒」の名前になっている。小さな店内いっぱいにDIY感溢れる什器が並び、そこにカラフルなファッションがインスタレーションのようにディスプレイされている。取り扱いブランドは「BALMUNG(バルムング)」「bodysong」「runurunu(ルヌルヌ)」「OrqestraLIVEN」といった新進インディペンデントブランドで、2008年からgallery fakeで開催されていた空間展示会“dinner”への参加で注目を集めたブランドが中心だ。
ショップのオープンは2011年秋。オーナーの小竹一樹さんは服飾系の専門学校を卒業後、一般企業に勤めていたという。当時新宿2丁目にあったCANDYや高円寺キタコレビルなどに集まる新進ストリートブランドのデザイナー、さらにカオスラウンジなどのクリエイターと出会い、ファッションとヲタクカルチャーが交わるイベントに関わるようになったという。
同店の営業は週末金〜日曜日の3日間の夜間のみ。各ブランドのデザイナーたちとスペースをシェアするような形で運営されいる。
「バイイングなども特にやっているわけではなくて、皆何かできたらうちに商品を持ってきてくれるという感じなんです。鍵も皆が持っているので、気がついたら服がディスプレイされていることもあります(笑)」(小竹さん)
新作だけでなく、デザイナーが所有していた過去のコレクションもアーカイブ的に展示されている。既存のファッション業界のタイムテーブルとは異なる時間軸で動いているのが面白い。
オープン間もない伍戒が注目を集める契機となったのは、2011年12月30日、秋葉原を舞台にファッションブランドのデザイナーたちとアキバカルチャーがコラボレートしたイベント「AFwww 〜AKIHABARA FASHION war week w〜〈秋葉原ファッション戦闘週間(笑)〉」だった。ディアステージを会場に所属アイドルの通称“ディアガ”たちをモデルに起用したファッションショーとライブが行われ、ここに伍戒の取り扱うブランドが多く参加していたのである。
AFwwwには「MIKIO SAKABE」「runurunu(ルヌルヌ)」「ハトラ」「chloma(クロマ)」「bodysong.(ボディソング)」「BALMUNG」「veveropparuuu(ベベロッパル)」「Jenny Fax(ジェニー ファックス)」「5TOY(ゴトイ)」の9ブランドが参加。それぞれのスタイリングをでんぱ組inc.をはじめとするディアステージ所属アイドルたちが着用してウォーキングをしてみせた後、ライブステージも行われた。さらに伍戒に場所を移して、彼女たちのチェキ撮影会も開催された。
AFwwwは、いわゆるファッションショーの枠には収まらない、アキバカルチャーの濃度が高いイベントだった。ゲームやアニメなどのアキバカルチャーにインスパイアされたファッション表現を、原宿や渋谷ではなく秋葉原で展開してみせた点が注目するべきポイントだったといえる。
伍戒に集まるのはアキバカルチャーとファッションをフラットに楽しめる、クリエイティブ指向が強い20代のユーザーたちが中心だ。ディアステージに集まるアイドルファンたちがここの服を買うというわけではない。
CANDYやGalaxxxyのように、アキバカルチャーをミックスすることに成功しているファッションブランドやショップはすでにあるが、彼らの発信や売りの現場はあくまでも渋谷、原宿といったファッション性の高いエリア。ファッションとヲタクカルチャーのクロス現象が深化した現在、例えば原宿でも十分訴求は可能だと思えるのだが、小竹さんが敢えて秋葉原でショップを立ち上げたのはなぜなのだろうか。
「僕はもともとディアステージにはいち客として通っていたんです。ファッションもアイドルも好きなので、「ネオコス展」からの流れを途絶えさせたくなかったというのが実店舗を出してみようと考えたきっかけです。アキバもアイドルも両方好き、という友人のデザイナーにも話をしてみましたが、感覚的にイケると感じました」(小竹さん)
秋葉原にファッションのショップが欲しかった、というユーザーからの声もあり、手応えはあるという。ビジネスとしてはまだまだ小規模だが、秋葉原のこうした物件は賃料も低く、自分ひとりで運営しているので成り立っているという。
「ヲタの人たちがうちで服を買うわけではありませんが、ディアガたちの写真やCDの販売も行っています。しかし、アイドルやアニメも好き、というファッション好きの子たちがアニメやアイドルの話を気兼ねなくできるということがむしろ大事なんです。今は原宿のファッションイベントに行っても、アイドルの話で盛り上がることが多くなりましたね」(小竹さん)
ファッションもオタクカルチャーもフラットに繋がる今、アキバでストリートファッションのショップがあることは必ずしも特殊なことではないのだ。そしてもう一つ、この秋葉原という街にあるという不便さが大切だと小竹さんはいう。
「僕は新宿2丁目にあった頃のCANDYに通っていた頃は、あの敷居の高い街にわざわざ行って、刺激を受けてくることに意味があったんです。それが、今はアキバなんですよ。CANDYがまだ新宿2丁目で続いていたら、もしかしたら僕は伍戒をやっていなかったかもしれませんね」(小竹さん)
AFwww以降、伍戒ではディアステージ所属アイドルとのコラボレーションをさらに進めている。例えばバルムングと夢眠ねむの“ばるねむんぐ”、はとらと最上もがの“最上屋”といった、ファッションブランドとディアガのコラボプロジェクトが既にスタートしている。キタコレビルに見られたようなインディペンデント感をベースに、ファッションとアニメ&アイドルカルチャーといったジャンルを飛び越えてミックスする感覚は、未知の可能性を感じさせる。
ジャンルを超えたコミュニティづくりを進める小竹さんは、伍戒を訪れるユーザーたちを引率してディアステージにツアーすることもあるという。こうしてファッションのクリエイターたちにアキバカルチャーが注入されることで、さらに新しいクリエイションにつながるかもしれない。アキバに生れつつあるこの新しい動きに注目である。
取材・文/本橋康治(ACROSSコントリビューティングエディター/フリーライター)
AFwwwは、いわゆるファッションショーの枠には収まらない、アキバカルチャーの濃度が高いイベントだった。ゲームやアニメなどのアキバカルチャーにインスパイアされたファッション表現を、原宿や渋谷ではなく秋葉原で展開してみせた点が注目するべきポイントだったといえる。
伍戒に集まるのはアキバカルチャーとファッションをフラットに楽しめる、クリエイティブ指向が強い20代のユーザーたちが中心だ。ディアステージに集まるアイドルファンたちがここの服を買うというわけではない。
CANDYやGalaxxxyのように、アキバカルチャーをミックスすることに成功しているファッションブランドやショップはすでにあるが、彼らの発信や売りの現場はあくまでも渋谷、原宿といったファッション性の高いエリア。ファッションとヲタクカルチャーのクロス現象が深化した現在、例えば原宿でも十分訴求は可能だと思えるのだが、小竹さんが敢えて秋葉原でショップを立ち上げたのはなぜなのだろうか。
「僕はもともとディアステージにはいち客として通っていたんです。ファッションもアイドルも好きなので、「ネオコス展」からの流れを途絶えさせたくなかったというのが実店舗を出してみようと考えたきっかけです。アキバもアイドルも両方好き、という友人のデザイナーにも話をしてみましたが、感覚的にイケると感じました」(小竹さん)
秋葉原にファッションのショップが欲しかった、というユーザーからの声もあり、手応えはあるという。ビジネスとしてはまだまだ小規模だが、秋葉原のこうした物件は賃料も低く、自分ひとりで運営しているので成り立っているという。
「ヲタの人たちがうちで服を買うわけではありませんが、ディアガたちの写真やCDの販売も行っています。しかし、アイドルやアニメも好き、というファッション好きの子たちがアニメやアイドルの話を気兼ねなくできるということがむしろ大事なんです。今は原宿のファッションイベントに行っても、アイドルの話で盛り上がることが多くなりましたね」(小竹さん)
ファッションもオタクカルチャーもフラットに繋がる今、アキバでストリートファッションのショップがあることは必ずしも特殊なことではないのだ。そしてもう一つ、この秋葉原という街にあるという不便さが大切だと小竹さんはいう。
「僕は新宿2丁目にあった頃のCANDYに通っていた頃は、あの敷居の高い街にわざわざ行って、刺激を受けてくることに意味があったんです。それが、今はアキバなんですよ。CANDYがまだ新宿2丁目で続いていたら、もしかしたら僕は伍戒をやっていなかったかもしれませんね」(小竹さん)
AFwww以降、伍戒ではディアステージ所属アイドルとのコラボレーションをさらに進めている。例えばバルムングと夢眠ねむの“ばるねむんぐ”、はとらと最上もがの“最上屋”といった、ファッションブランドとディアガのコラボプロジェクトが既にスタートしている。キタコレビルに見られたようなインディペンデント感をベースに、ファッションとアニメ&アイドルカルチャーといったジャンルを飛び越えてミックスする感覚は、未知の可能性を感じさせる。
ジャンルを超えたコミュニティづくりを進める小竹さんは、伍戒を訪れるユーザーたちを引率してディアステージにツアーすることもあるという。こうしてファッションのクリエイターたちにアキバカルチャーが注入されることで、さらに新しいクリエイションにつながるかもしれない。アキバに生れつつあるこの新しい動きに注目である。
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伍戒(5okai)
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〒101-0021
東京都千代田区外神田3-10-6 ホープビル5F
OPEN/金土日曜日 17:00〜24:00
https://twitter.com/#!/5okai
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