2011年下半期から、都内ではシェアオフィス/コワーキングスペースが急増。ユーザーのニーズに合わせて、立地や機能、価格の多様化が進んでいる。
そんななか、ITのスタートアップ(起業して間もない)企業に特化した日本最大級のインキュベーション(起業支援)オフィスStartup Base Camp(スタートアップベースキャンプ、以下SBC)が登場した。
手がけるのは、ネット広告代理店最大手である(株)サイバーエージェント(以下、CA)の連結子会社であり、ITスタートアップ企業を中心に投資事業を展開する(株)サイバーエージェント・ベンチャーズ(以下、CAV)。場所は赤坂8丁目、地下鉄の青山一丁目駅または乃木坂駅から徒歩約5分のビル内。広さは約1,200平方メートルで、執務席は約200席を構えている。オープンしたのは2012年2月22日。
CA社では2000年から投資事業に参入しており、代表的な例ではmixi(ミクシィ)が挙げられる。投資・ベンチャーキャピタルファンド運用事業に特化したCAVが設立されたのは2006年4月。投資案件の増加やファンドを設けるなど、事業が拡大したことから分社化を図った。その後、CAVはさまざまなIT企業への投資を行い、2009年からはITのスタートアップ企業に注目。自社開催のビジネスプランコンテストStartups(スタートアップス)などを通じて、企業を発掘し、投資・育成をしてきた。現在は中国、台湾、ベトナム、インドネシアにも事務所を構え、現地ITスタートアップ企業の発掘・投資・育成も行っている。2012年3月現在、累計世界150社、そのうち日本100社(内、スタートアップ30社)に投資。うち学生起業家も3社あるという。
CAグループである同社の最大のウリは、ネットビジネスで積み重ねてきたノウハウと経験を、起業家たちにフィードバックできることだという。
「グループで積み上げてきた実績はもちろん、当社のスタッフもCAでネット事業をしていたなどのバックグラウンドを持っています。そういった環境のもと、起業したての方と一緒に頑張り、その企業価値を上げて、独り立ちするまでに段階を上げていきます。仕事が出来る方や優秀な大学生のあいだでは、大きな組織に属するのではなく起業したいという方も少なくありません。今は出来たての企業でも、資本を出してパートナーシップを組み、将来的にいっしょに成長することを目指します。当社が投資先企業と一緒に取組んでいく象徴が、このSBCです」(サイバーエージェント・ベンチャーズ 取締役/大下徹朗さん・35歳)
SBC開設の構想は昨年6月頃にスタートしており、きっかけは2つある。1つ目は、起業家と共にビジネスプランを練るなどのミーティング頻度が多く、起業家から、近くで仕事をしたいという声が多かったから。2つ目は、良いオフィスですぐに事業を始められて、そして事業だけに集中できる環境を用意してあげたかったからという。アメリカ・サンフランシスコなどではコワーキングスペースが盛んで、そこから成功事例が生まれていることにも背中を押されたそうだ。11月には、大下さんらがサンフランシスコなどのコワーキング施設を視察したという。
以前同社のオフィスがあったのは、CAグループの多くが拠点を構える渋谷のマークシティ。今回コワーキングスペースをオープンするにあたり、日本最大を謳うためにも200席を設けられて、ワンフロアの広い物件を条件に、まずは渋谷から探したそうだ。その後、新宿、虎ノ門、丸の内など都内の物件を見て回り、最終的に駅から近くて窓から緑が見える、現在の物件に決めたそうだ。SBC開設と共に、同社もオフィスを同じ場所に移転している。
入口を入ると、フロアの約半分を占める「コラボレーションスペース(たまり場)」が広がる。入居者とのミーティングなどのために外部からも「イケてる」(大下さん)人々が訪れ、さまざまな人がその広い場所で交流できる“たまり場”をつくることも、大切な要素の1つだったそうだ。また、入居はすべて同社の投資先であるITスタートアップ企業。起業家の6割程度がエンジニアで占めるため、エンジニアが仕事に専念できる、彼らに優しい環境をテーマに内装を考えたそうだ。一日中デスクに座ってパソコンに向かう仕事のため、場所や気分を変えて仕事ができるように配慮。Wi-Fiを完備しており、たまり場中央にあるカウンターで立ちながら仕事をすることも、静かな「コンセントレーションルーム」で仕事することも可能だ。
料金は1席3万円/月(2012年10月からは4万円/月)。入居は1年間限定だが、これは「居心地が良くても、ピカピカの中小企業では意味がありません。ここよりもおしゃれなオフィスに行けるように資金を稼ぐ、などの目標を持ってもらうためにも、期間を設けました」(大下さん)。また、会計士や税理士などの専門家が来社する日を設けており、相談することが可能だ。セミナールームではイベントも実施されている。
取材した3月8日現在で、入居企業は15社、席は約4割が契約されていた。社長は全員男性で平均年齢は約30歳。企業規模は平均4人で、最小1人、最大13人となっている。
「オフィスを借りるには面積に応じた家賃を払わなければなりませんが、起業したての場合、なかなか人員計画ができません。SBCの場合は投資企業に限定していますが、コワーキングスペースは席単位で借りられるのもメリットだと思います」(大下さん)
冒頭でもふれたように、いぜん弊サイトで紹介した天王洲アイルの「Samurai Startup Island(サムライスタートアップアイランド)」や、低価格の「LightningSpot(ライティングスポット)」、クリエイターをターゲットにした「co-ba(コーバ)」、シェアハウス専用ポータルサイト「ひつじ不動産」が運営する「PoRTAL(ポータル)」など、2011年下半期以降、コワーキングスペースが急増、多様化が進んでいる。さらに関東県以外に大阪や神戸、奈良など関西でもコワーキングスペース/シェアオフィスがオープン。今後、この動きが全国的にどこまで拡大し、変化していくかに注目したい。
SBCは今後、世界に誇れるIT企業を輩出するアジアNo.1のインキュベーションオフィスを目指すそうだ。
取材・文 緒方麻希子(フリーエディター/ライター)
以前同社のオフィスがあったのは、CAグループの多くが拠点を構える渋谷のマークシティ。今回コワーキングスペースをオープンするにあたり、日本最大を謳うためにも200席を設けられて、ワンフロアの広い物件を条件に、まずは渋谷から探したそうだ。その後、新宿、虎ノ門、丸の内など都内の物件を見て回り、最終的に駅から近くて窓から緑が見える、現在の物件に決めたそうだ。SBC開設と共に、同社もオフィスを同じ場所に移転している。
入口を入ると、フロアの約半分を占める「コラボレーションスペース(たまり場)」が広がる。入居者とのミーティングなどのために外部からも「イケてる」(大下さん)人々が訪れ、さまざまな人がその広い場所で交流できる“たまり場”をつくることも、大切な要素の1つだったそうだ。また、入居はすべて同社の投資先であるITスタートアップ企業。起業家の6割程度がエンジニアで占めるため、エンジニアが仕事に専念できる、彼らに優しい環境をテーマに内装を考えたそうだ。一日中デスクに座ってパソコンに向かう仕事のため、場所や気分を変えて仕事ができるように配慮。Wi-Fiを完備しており、たまり場中央にあるカウンターで立ちながら仕事をすることも、静かな「コンセントレーションルーム」で仕事することも可能だ。
料金は1席3万円/月(2012年10月からは4万円/月)。入居は1年間限定だが、これは「居心地が良くても、ピカピカの中小企業では意味がありません。ここよりもおしゃれなオフィスに行けるように資金を稼ぐ、などの目標を持ってもらうためにも、期間を設けました」(大下さん)。また、会計士や税理士などの専門家が来社する日を設けており、相談することが可能だ。セミナールームではイベントも実施されている。
取材した3月8日現在で、入居企業は15社、席は約4割が契約されていた。社長は全員男性で平均年齢は約30歳。企業規模は平均4人で、最小1人、最大13人となっている。
「オフィスを借りるには面積に応じた家賃を払わなければなりませんが、起業したての場合、なかなか人員計画ができません。SBCの場合は投資企業に限定していますが、コワーキングスペースは席単位で借りられるのもメリットだと思います」(大下さん)
冒頭でもふれたように、いぜん弊サイトで紹介した天王洲アイルの「Samurai Startup Island(サムライスタートアップアイランド)」や、低価格の「LightningSpot(ライティングスポット)」、クリエイターをターゲットにした「co-ba(コーバ)」、シェアハウス専用ポータルサイト「ひつじ不動産」が運営する「PoRTAL(ポータル)」など、2011年下半期以降、コワーキングスペースが急増、多様化が進んでいる。さらに関東県以外に大阪や神戸、奈良など関西でもコワーキングスペース/シェアオフィスがオープン。今後、この動きが全国的にどこまで拡大し、変化していくかに注目したい。
SBCは今後、世界に誇れるIT企業を輩出するアジアNo.1のインキュベーションオフィスを目指すそうだ。
取材・文 緒方麻希子(フリーエディター/ライター)