昨年6月6日の定点観測でもひと際目立っていた18歳の大学生が通い詰め、ほぼ全身のコーディネートを揃えるなど多大な影響を受けていた原宿のセレクトショップ「RADD LOUNGE(ラドラウンジ)」。2009年あたりから定点観測でもその名が挙がるようになっていたそのカリスマショップが、2012年2月4日、同じ裏原宿の前店舗そばに移転リニューアルオープンし再始動した。
2007年の立上げから移転前の2012年1月まで、同店はメンズアパレル卸の有限会社ブルースが運営していたが、新店舗では、 「RADD LOUNGE」 で約3年にわたり店長を務めたIRIKI(イリキ)さん(29歳)がオーナーを務める。IRIKIさんは、ストリート系メンズ雑誌『WARP Magazine』や『SAMURAI Magazine』等でもそのファッションが注目されるなど、一部の若者にはカリスマ的な存在だ。
新店舗は、1階と地下で構成される路面の物件。1階はストリートブランドなどをメインに展開し、地下はハイブランドやコレクションブランドなどを展開するスペースとなっている。広さは、2フロア合わせて約40平米。1階は、レコードやポスター、カラフルなスケボー板などが壁面に飾られDJブースが設置されるなど、ストリート感を感じさせる雰囲気だ。地階は、シンプルながらも顧客が椅子に座りながらゆっくり商品を選べる空間になっている。
鹿児島出身のIRIKIさんは、高校卒業後にデザイナーを目指して上京すると、ファッション専門学校でデザイン等を4年間学んだ。その後、22歳のときに前述のブルースに新卒入社。ブランド企画を務めた後、24歳だった2009年に同店の店長に抜擢された。そして2011年、「30歳までに自分の店を持ちたい」という夢に向けて独立を決意。思い入れが強い同店を引継ぎたいというIRIKIさんに対して、同社社長のDJ HAZIMEさんは独立心ある若者を応援したいと、希望を受入れてくれたそうだ。そして、物件の契約満期も重なり、新たな場所でスタートを切ることになった。
前店舗も現在と同じ神宮前4丁目のいわゆる裏原で、セレクトショップ「Kinetics(キネティクス)」などが並ぶプロペラ通りにあった。しかし「一等地で良い意味でも悪い意味でも観光スポットのような通りだった」(IRIKIさん)ということから、今回は青山側に一本ずらした比較的落ち着いた通りに出店。物件は原宿に限定して探したというが、原宿にこだわる理由をIRIKIさんはこう話す。
「僕が中学〜高校生だった90年代は原宿のストリートが最もパワーを持っていた時代。雑誌『FRUiTS(フルーツ)』のストリートスナップを見た時に衝撃を受け、当時からそんな原宿の姿に強く憧れていました。原宿にはいい意味で“イカれた”ファッションをする人が多く、地元では白い目で見られるような格好でも受け入れられる雰囲気がある。こんな風にファッションで自己表現ができる街は他にはないと思うんです」(IRIKIさん)
中学時代からファッションにはまったというIRIKIさん。デザイナーを目指したのも、90年代に異彩を放った「W<(ダブリューアンドエルティー)」等のブランドに影響を受けたからという。さらに高校からは音楽にも目覚め、90年代に起こったDJブームの流れを受けて、自身もDJを目指し本格的に修行した経験もあるそうだ。収集したレコードは2,000枚にも及び、現在は不定期で「RADD LOUNGE」主催のDJイベント等も行っている。
「コンセプトは“音楽を感じさせる服”。僕自身が90年代のストリートカルチャーに大きく影響を受けたこともあり、当店では音楽を中心としたカルチャーを意識した展開をしています」(IRIKIさん)
というように、カルチャーの要素は 「RADD LOUNGE」 のコンセプトや商品セレクトに繋がっており、IRIKIさんが提案したいシーズンテーマを、最先端の音楽ジャンルにたとえて発信している。例えば、2012年春夏シーズンは、エナメルやシースルー素材などがカギになることから、テーマに選んだ音楽ジャンルはNY発の「SeaPunk(シーパンク)」。髪の色をエメラルドグリーンにしたアーティストらによる、その名の通り海を連想させるような水の音が漂うエレクトロのいちジャンルだ。昨年IRIKIさんが立ち上げ自身でデザインする同店のオリジナルブランド「ANTITHESIS(アンチテーゼ)」では、それらのビジュアルにインスパイアされたアイテムも揃う。