表参道交差点の一角にある、創業120年の老舗・山陽堂書店。表参道交番のそばにある壁画のある本屋といえば、入ったことはなくとも思い出される方は多いだろう。店舗面積こそ広くはないが、天井や階段まで壁面をパズルのように埋めた本棚にびっしり本が収っている。そんな書店の様子をテレビや雑誌でご覧になったことのある方は多いだろう。
青山の小さなランドマークともいえる同店が、ビルの2・3Fに「山陽堂ギャラリー」を併設する形で全面リニューアルしたのは2011年5月30日。昭和6年開業当時の煉瓦造りの部分を残しながら、“街場の本屋”としてのたたずまいは改装後も変わらない。青山の名物でもある、外壁に描かれた谷内六郎さんのモザイク画も健在だ。
ギャラリーのオープニングには川島小鳥写真展『未来ちゃん』の出版記念展を開催し、大きな反響を呼んだ。以来、縁のあるクリエイターや出版社を中心に展覧会やトークイベントを開催してきた。こうした活動の効果もあり、改装後は以前よりも若い年代の来店客が増えた、と語るのは遠山秀子さん。3代目である故・万納和夫氏の妻・幸江さんの長女である。
「もともと若い人が多く通られる場所ですが、改装後は“今まで知っていたけれど初めて入ってみた”という方が多かったんです。棚を減らして、店頭に置く本の量も少なくしました。中が見えるようにして入りやすくしたんです」
品揃えの面では、観光ガイドブックや文庫本の量を絞り込む一方、ピエ・ブックスやグラフィック社などのアート/デザイン関連書籍を強化。また、青山という土地柄ゆえなのか『FIGALO』などフランス・パリ発の情報を掲載した雑誌、書籍がよく動くという。
大きい書店ではどうしても埋もれてしまう本があります。特に2〜3年くらい前からは、縁あって出会った出版社さんのフェアを開催するようになっていました。ミシマ社さんや、羽鳥書店さん、夏葉社さんなど、みんなそうして出会った方ばかりです。本をフェアの形で棚に置いてみるとやはり動きますし、お客さんからの評判もいい。小さい出版社さん同士のプライベートなつながりが広がっていくのも面白いですね」(遠山さん)
青山という土地柄もあってお客さんには出版関係社や文筆業、クリエイターも多く、その輪がさらに企画へとつながっていくこともある。家族経営で小回りのきく街場の書店だからこそ、そうした動きにこまめに対応することができるのだ。
リニューアルに際してギャラリーを併設するというプランは、5代目を継ぐ遠山さんの甥の提案をもとに、家族会議で決定したそうだ。
「2010年に創業120年のお祝いの会を開催した時に、甥がギャラリー併設の企画案を持ってきたんです。その後親族一同で集まって、事務所として使っていた2階をひとまず空けてギャラリーとして使ってみようということになったんです」(遠山さん)
ギャラリー開設に向けてウェブサイトの立ち上げを映像制作会社に依頼したことから、ギャラリーの施設デザインも合わせてプランニングを進め、最終的には投資をかけてビルの2・3Fをギャラリーとして改装。店舗デザインを含む全面リニューアルへと発展した。しかしここに至るまでは、様々な葛藤もあったという。
「本屋をやっている醍醐味や面白さを、この2〜3年、自分で動くようになったことで分かるようになってきました。3年くらい前、本屋をどうやっていこうか迷っていた時に、鳥取県の今井書店さんが開催されている「本の学校」に参加したんです。その時、永井伸和会長の本と地域に対する熱い思いを聞いて、そのパワーに刺激を受けました。地域に本屋として残ることの大切さを改めて感じて、そこから変わってきたんです」(遠山さん)
それ以来、同店では顧客向けの情報発信として「山陽堂だより」という手書きのペーパーの配布や、店内への壁新聞の掲出など、近隣の顧客とのコミュニケーションを積極的に行うようになった。ギャラリーを設けたことをきっかけに地元の人たちとの接点が増え、以前にも増して様々な情報が集まるようになったという。
ギャラリーでは展示に加えて、トークイベントなどコミュニケーションの場となる企画を開催しているが、そこに集まった人たち同士のつながりが生まれ、企画へと発展するケースもあるという。今後は映画の上映会など、新しい催しにも取り組んでいく計画だ。
「人は、何かを見る時に“わっ”と心が動く。心が動くと、誰かに“話”したくなる。その話が広がって、人の“輪”になる。それが人と人の“和”を生み出し、そこから新しい驚きが生まれる。そんな“わ”の循環が生まれる場所になりたいなと思っています」(遠山さん)
青山という街の力と、ローカル書店ならではの親密感が同居する山陽堂書店。都心の小さな書店が生き残って行くひとつのモデルケースとして、今後も注目していきたい。
取材・文/本橋康治(ACROSSコントリビューティングエディター/フリーライター)
「2010年に創業120年のお祝いの会を開催した時に、甥がギャラリー併設の企画案を持ってきたんです。その後親族一同で集まって、事務所として使っていた2階をひとまず空けてギャラリーとして使ってみようということになったんです」(遠山さん)
ギャラリー開設に向けてウェブサイトの立ち上げを映像制作会社に依頼したことから、ギャラリーの施設デザインも合わせてプランニングを進め、最終的には投資をかけてビルの2・3Fをギャラリーとして改装。店舗デザインを含む全面リニューアルへと発展した。しかしここに至るまでは、様々な葛藤もあったという。
「本屋をやっている醍醐味や面白さを、この2〜3年、自分で動くようになったことで分かるようになってきました。3年くらい前、本屋をどうやっていこうか迷っていた時に、鳥取県の今井書店さんが開催されている「本の学校」に参加したんです。その時、永井伸和会長の本と地域に対する熱い思いを聞いて、そのパワーに刺激を受けました。地域に本屋として残ることの大切さを改めて感じて、そこから変わってきたんです」(遠山さん)
それ以来、同店では顧客向けの情報発信として「山陽堂だより」という手書きのペーパーの配布や、店内への壁新聞の掲出など、近隣の顧客とのコミュニケーションを積極的に行うようになった。ギャラリーを設けたことをきっかけに地元の人たちとの接点が増え、以前にも増して様々な情報が集まるようになったという。
ギャラリーでは展示に加えて、トークイベントなどコミュニケーションの場となる企画を開催しているが、そこに集まった人たち同士のつながりが生まれ、企画へと発展するケースもあるという。今後は映画の上映会など、新しい催しにも取り組んでいく計画だ。
「人は、何かを見る時に“わっ”と心が動く。心が動くと、誰かに“話”したくなる。その話が広がって、人の“輪”になる。それが人と人の“和”を生み出し、そこから新しい驚きが生まれる。そんな“わ”の循環が生まれる場所になりたいなと思っています」(遠山さん)
青山という街の力と、ローカル書店ならではの親密感が同居する山陽堂書店。都心の小さな書店が生き残って行くひとつのモデルケースとして、今後も注目していきたい。
取材・文/本橋康治(ACROSSコントリビューティングエディター/フリーライター)
山陽堂書店
住所:東京都港区北青山3-5-22
電話:03-3401-1309
営業時間:10:00〜19:30 土曜 11:00〜17:00
定休日: 日・祝祭日
営業時間
ギャラリー山陽堂
開館時間:11:00〜19:00
定休日:日・祝祭日
【次回企画】
安西水丸シルクスクリーン展(仮)
期 間: 2012年7月6日(木)〜
電話:03-3401-1309
営業時間:10:00〜19:30 土曜 11:00〜17:00
定休日: 日・祝祭日
営業時間
ギャラリー山陽堂
開館時間:11:00〜19:00
定休日:日・祝祭日
【次回企画】
安西水丸シルクスクリーン展(仮)
期 間: 2012年7月6日(木)〜