タレントグッズ・キャラクターグッズのショップや、アパレル、雑貨店などの小規模なショップが軒を連ね、若者や外国人観光客で賑わう、原宿・竹下通り。その中ほどのビル2階に、 “カワイイをパッケージしてプレゼンする”土産物店「もしもしカワイイ原宿」がある。
パステルカラーで統一された30平米ほどの店内には、顔ハメパネルやガチャポンが置かれ、寿司モチーフのアクセサリーやTシャツ、お茶やチョコレートなど定番の土産物が並ぶ。そのほとんどが「カワイイ」と「原宿」をテーマに作られたオリジナル商品だ。
ディレクターを務めるのは、フォトグラファーの米原康正さん。「海外や地方からの観光客はもちろん、日常的に遊びに来ている人々にも向けて、日本独自のカワイイ文化を発信していきたい」と語る。
90年代から、チェキなどのインスタントカメラを使ってリアルな日本の女の子の姿を撮り続けてきた米原さん。現在では中国のSNS「新浪微博(シンランウェイボー)」で50万人以上のフォロワーを有しており、フォトシューティングとDJをセットにしたイベントで、中国各都市を飛び回っており、中華圏をメインに絶大な人気を博している。米原さんはそういった活動を通して、近年、日本の文化に対する危機感を抱くようになったと語る。
「70年代にはセントラルアパート、80年代の竹の子族やホコ天、90年代の裏原宿。原宿にはいつも新しいカルチャーが生まれ、独自に育まれてきました。小さい店がたくさんあって、それぞれが面白いと思うことを発信してお客さんが集まり、育っていく場所だったんですよ。しかし現在では、外資系のショップや大資本企業による大・中規模のファッションビルが林立し、世界の大都市や日本の地方都市と変わらない街並みとなっている。メディアも店もすでにウケてるものに乗っかって儲けることばかりで、新しく発信されるものを扱わず、保守的になっている。文化が育たなくなっているのは危険な状況です」(米原さん)。
「原宿で買い物するお客さんの3割近くが中国を中心としたアジアからの観光客。彼らは原宿に対してかつての裏原宿やギャルのような、日本独自のカルチャーを期待していますが、実際に来てみると、海外の都市と変わらない街並にがっかりしてしまう。日本に対して求められているのは、美容、安全、手先の器用さ、セレクトして編集する能力など。打ち出すべきものってまだいろいろあると思うんです」(米原さん)。
それが、“カワイイ”だった。
「日本人は根本的に小さくてコロコロしているから、欧米人の真似をしようとしてもなりきれない。カワイイは日本特有の魅力で西洋には真似できない。なのに今の日本は、外国で評価された加工された「かわいい」しか評価しなかったりする。無理して欧米人のまねをするのでなく、西洋変換されていないカワイイを素直に認めて、その得意分野で勝負したほうがいいんじゃないかと思います。カワイイを通して日本の文化を見直すことができると思うんです」(米原さん)。