Muguet(ミュゲ)
レポート
2012.07.27
ファッション|FASHION

Muguet(ミュゲ)

中目黒のセレクトショップ「Vase」が発信
凝縮した世界観を表現する2.5坪の実験的ショップ

バッグをメインとした大阪のブランド「macromauro(マクロマウロ)」をフューチャーした際の店内。扱う商材によって、ガラリと雰囲気が変わるのも同店のおもしろさ。
1910年代頃のものと思われるヴィンテージのジョッパーズ(29,800円)。「古いものほど生地が良く、丁寧に作られていて丈夫」(平井さん)。というように、手仕事ならではのモノとしての魅力を感じる一品だ。
季節感のある小物を時々でチョイス。今夏は、男女共にブレイクしているサングラスをピックアップ。ディオールやカザール、ペルソル、レイバンなど約10ブランドの個性溢れるヴィンテージ品が揃う。
夏らしいカラフルな配色のレディースのヴィンテージドレスは9800円。
「SWASH(スウォッシュ)」は、上質なシルク素材にデザイン性の高いプリントをのせたロンドン発のブランド。アパレルやバッグ、iPhoneケースの展開も。
中目黒から代官山に抜ける道沿いに位置する「Muguet」(写真手前左)。すぐそばには、ハリウッドランチマーケットを手掛ける聖林公司が運営する老舗「TALL FREE」や、カフェ&雑貨の新業態店舗をオープンして話題の「1LDK」が並ぶ、ファッション好きが集うスポットだ。
東京・中目黒駅から徒歩約3分、目黒川を越え代官山方面へと続く通り沿いに、広さわずか2.5坪のセレクトショップ「Muguet(ミュゲ)」がある。人が2〜3人も入ればすれ違うのも慎重になる空間で凝縮された世界観を表現する同店は、同じく中目黒でファッション好きに支持されるセレクトショップ「Vase(ベイス)」の2店舗目として2011年11月19日にオープンした

運営元は株式会社ベイス。オーナーを務めるのは、平井直樹さんだ。熊本県出身の平井さんは、大手セレクトショップに入社後、熊本や福岡の店舗での販売を経て、東京でも約7年間の店舗経験を積んだそうだ。その後、2007年2月に独立。かねてからの夢を実現し「Vase」を立ち上げた。

セレクトショップ在籍時は、池袋、渋谷、新宿といったターミナル駅での店舗経験があるという平井さん。それらの場所では来店客が流動的で、ゆっくり接客がしにくいと感じていたという。熊本時代のように客と距離が近い接客ができる場所と考えたのが中目黒と代官山。知人を介して紹介された中目黒の築60年ほどの古民家且つ店内面積8坪の物件にひと目惚れして「Vase」をスタートした。

「Vase」は、“クラシック&アバンギャルド”をテーマに国内外の約20〜30ブランドを扱っており、コアなファッション好きや業界人、美容師などからの支持も厚い

「この広さなら凝縮した接客ができると思ったら、立ち上げから3年経った頃から客数が増えたこともあり、お客様との距離感が少し遠く感じるようになったんです。今度の『Muguet』はある意味、原点回帰。この広さならマンツーマンで接客ができますから」(平井さん)。

「Muguet」では、「Vase」で扱うブランドから1ブランドを平井さんがそのときの気分やタイミングでピックアップし、ブランドの世界観を紹介する他、ヴィンテージウェアを扱うなど自由な発想力で展開する。ふたつの店舗は歩いて1分ほどと極近いが、通りを歩く客層が全く異なるため、「Vase」のショーケース的な役割も担っている。「Muguet」で「Vase」を初めて知る客も多く、新たな顧客の開拓にも繋げたい思いもあるそうだ。

オープンして5年が経った『Vase』は、完成形に近いかたちになりました。目が届く距離で、もっと違う形態のショップにチャレンジしたいと考えていたところに、この物件を見つけて即決。この狭い物件ならではの、おもしろいことができるのではと思ったんです」(オーナー/平井直樹さん)

ファサードや店内の壁、天井も真っ白に塗られているのは、真っ白で毒を持つ花であるMuguet(フランス語でスズラン)という店名から。アンティーク色が強い「Vase」の内装とあえて正反対の空間にと、白を基調に仕上げた。カウンター兼ディスプレイ棚に用いられている50〜60年代のデンマークで使われていた秘書机。天井から下がる個性的な照明は同じくデンマークの「ルイスポールセン」社のもので、照明分野のパイオニアとも言われるPaul Henningsen(ポール・ヘニングセン)がデザインしたものだ。
「Muguet」から徒歩約1分ほどの目黒川沿いにある「Vase」。古い日本家屋をリノベーションした趣のある佇まい。
グルカ兵が着用していたことからグルカショーツと名付けられたミリタリーのショートパンツ(9800円)。ハイウエストでタック入りのボリュームあるシルエットと特徴的なベルトなど、現在のスタイルにもハマるアイテム。
平井さんのイチオシは上質且つデザイン性の高さが目を引くムートンコート(13万8000円)。
「Vase」の店内。各ブランドが混然一体となった独自の世界観が広がる。
オーナーの平井直樹さん。
商品は、「Vase」はインポートが7割。「CLASS(クラス)」「m’s braque(エムズブラック)」「SWASH(スウォッシュ)」など8坪の店内で約20〜30ブランドを扱っている。「Vase」では、あえてブランド の垣根を越えた見せ方をしていたが、「Muguet」ではシーズンのフルアイテムで展開するなど、ワンブランド毎の世界観を伝えることをテーマにしている という。「Muguet」でこれまでにピックアップしたブランドは、「m’s braque(エムズブラック)」や「macromauro(マクロマウロ)」など。また、「MERCHANT & MILLS(マーチャンアンドミルズ)」の裁縫道具、牛や鹿の角から靴ベラやスピーカーなどを創り出す「ABBEYHORN(アビーホーン)」のアイテム など、小物類も揃えている。価格帯はブランドによって異なるが、2〜3万円台が中心。

現在〜当面の間は古着を扱うヴィンテージショップとして営業しており、 「Vase」で扱うコンテンポラリーファッションのルーツを感じさせるような、ヴィンテージのワークウェアやミリタリーウェア、ドレス等のレディースアイ テムの他、サングラスなど季節の小物類をセレクト。価格は1万円台が中心で、なかにはマルタン マルジェラ自身がデザインしていた2008年までのコレクションの古着も扱う

両店のターゲットは20〜30代の服好きと同業者。来客層は20〜30代が中心で、男女比は5:5。「Vase」「Muguet」共にカップルの来店が多い。

「ファッションにもさまざまなジャンルがあり、最近ではファストファッションも台頭していますが、僕はあくまでも“ファッション”がやっていきたい。今より濃い提案をしていきたいんです。東京ではコアな店は大手に潰されがちですが、例えば熊本など地方には個人のセレクトショップで濃い店、元気な店が多いですよね。今、東京にコアな店が減っている分、接客していてもお客様により濃い商品を求められているように感じますプレッシャーもありますが、求めている人たちに、より新しいもの、他と違うものを提案していければと思っています」(平井さん)

「Muguet」は、「Vase」の独特の世界観を超えて新しいチャレンジに挑む、原点回帰且つ実験的なショップといえる。「Vase」と「Muguet」との相乗効果により生まれる、よりコアな提案に期待したい。
 

【取材・文:緒方麻希子+『ACROSS』編集部】
 
 

Muguet(ミュゲ)

〒153-0051 東京都目黒区上目黒1-3-19
電話 03-6303-0369
営業時間 12:00-20:00(水曜定休)


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