bemool(ビモール)
2013.03.07
その他|OTHERS

bemool(ビモール)

女の子が”女子目線”で洋服を選んでくれるメンズファッションの購入代行サービス

スタイリストたちがそれぞれ得意とするファッションの分野や買い物エリアなどのプロフィールが紹介されている。ユーザーはコーディネートに合ったスタイリストの希望することができる。
スタイリストとオーダー内容についてメールでコーディネートの内容を詰めていく。ウェブを使っているがきめ細かなやり取りが必要だ。
取材日は靴やアクセサリーなどの小物類をショップで購入していた。
「bemool」で一番人気のスタイリスト宮森渚朝さん。20〜40代の「大人のモテ服」のコーディネートが得意だそう。
1人につきトップス、ボトムス、靴などの全身1コーディネイトで、4〜5万円というのが平均的なオーダー。
2012年7月にスタートした、読者モデルや服飾系学生などのおしゃれ女子が「スタイリスト」として男性の洋服を選んでくれる購入代行サービスbmool (ビモール)開始直後からネットで注目を集め、アクセスの集中でサーバーがダウンするという派手なスタートを切った。2012A/Wシーズンを経て、ランニングファッションに特化したbemool runや無料コーディネート診断などの新サービスやコンテンツを加えている。この代行サービスに寄せられる男性たちのニーズやその実態はどのようなものなのかを取材した。
 
オーダーの受付はWEB上での登録後、「スタイリスト」とのメールのやりとりによって行われる。ユーザーは氏名と年齢、住所などの基本情報に加え、身長と体重、よく買う服や靴のサイズ、体型などの身体スペック、服の購入頻度などの情報を登録していく。
 
さらにユーザーはコーディネートのスタイルとアイテム(例:ジャケット+シャツ+パンツ)、予算と希望のスタイリストをオーダーする。ただし、担当スタイリストは必ずしも指名通りにはならないという。
 
商品は、予算とユーザーの希望をもとに担当スタイリストがショップまで出向いて選び、購入する。 ショップやアイテムの選定も、基本的にはスタイリスト自身が組み立てているのである。
 
1回のオーダーごとに支払われる手数料は5,000円で、ここに送料や衣服購入のための交通費も含まれる。 コーディネートした商品はまとめて梱包され、着こなしメッセージとともにユーザーのもとへ届けられる。オーダーから商品到着までの時間は約1週間から2週間だ。
 
ユーザーの希望を微妙なテイストまで読み取るのは難しいところだろう。スタイリスト側からユーザーに対して、普段着用しているファッションの傾向といった詳しい質問をメールでやりとりするなどして、擦り合わせをしている。事務局内で協議することもあるそうだ。
 
「私の場合、だいたい2〜3回メールのやり取りをしてから実際の購入に移ります。予想していたよりも作業は大変でしたが、ファッションは好きなので私自身も楽しんでいます。お送りしたコーディネートを着た写真をメールで送っていただいたり、奥様に見せたらとても喜ばれた、なんて知らせていただくとやはり頑張ってよかったと思えるし、嬉しいですね」
と語ってくれたのは「スタイリスト」の宮森渚朝さん。雑誌「AneCan」の読者モデルとしても活動し、自身のブログでもbemoolでの仕事ぶりを公開している。
 
bemoolを運営するGreen rompは、アプリ開発などを手がけていたネットベンチャー企業だ。1つ1つのオーダーに丁寧に向き合わければならないbemoolの購買代行サービスは、アナログかつ感覚的な作業で成り立っており、同社の手がける事業としてはむしろ意外な印象を受ける。2011年に広告代理店から独立、同社を立ち上げた代表の野田貴大さんに、このサービスをスタートした経緯について聞いてみた
 
「ITベンチャーの会社を立ち上げた頃、ファッション通販サイトでカジュアル服を買ってみたんです。それを着てオフィスに行ったら、これがすごく社内のスタッフに不評だったんですよ(笑)ネット通販で服を買う人は増えていますが、ショップで店員のアドバイスを聞きながら服を選ぶようなことは不可能ですし、センスに自信のない人は服選びが難しい。周囲には忙しくて買い物に行く余裕がないという人も多かったし、これは需要があるのでは、と思ったんです
 
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全身写真をメールで送り、抽選で選ばれた人に無料でファッション診断を行う「ファッションチェック診断」というサービスもスタート。
ランニングファッションに特化した「bemool run」を2012年秋にスタートした。
スタイリスト直筆の着こなしメモを作り、商品に同封する。注文から2週間ほどでユーザーのもとに商品が届けられる。
同社の事務所は以前アクロスでもレポートした東新宿駅近くの「GUNKAN(旧軍艦マンション)」にある。
「bemool」の運営企業 Green romp 代表の野田貴大さん(29歳/取材時)。
当初、同社では一般のユーザー同士を結びつけるソーシャルメディア上のサービスを構想していた。しかし、実際にファッションをよく知っている人でなければユーザーの求めるスタイリングの提案は難しいため、読者モデルや服飾系の学生などをスタイリストとして集める、という現在の形に落ち着いたという。
 
ウェブサイト上で「いつも同じような服ばかり買ってしまう人に、スーツはいいのに私服が微妙な人に、忙しくて最近オシャレができていない人に」と謳っているように、ターゲットとしては当初、“ファッション感度は平均程度、仕事が忙しい30〜40代で、バリバリのリア充でもなくオタクでもない層”をコアなターゲットとして想定していた。しかし実際にサービスをスタートしてみると、ユーザー層は20代と30代がそれぞれ30%台で、残りが40代以上。これは想定よりも10歳くらい若かったそうだ。地域分布はほぼ人口比通り。ユーザーは全国に分布しており、東京在住者の比率が最も高いという。
 
もうひとつ興味深かったのが、同社が予想していた以上におしゃれな男性ユーザーの利用が多かったという点だ。自分の視点で選ぶのではなく、女子スタイリストのコーディネートセンスを楽しみたいというニーズが少なくなかったということになる
 
「ファッションは分からないので全部お任せで、という方はむしろ少ないんです。皆さん何かしらブランドやアイテムのリクエストがあるので、それを中心にコーディネートを組み立てるケースが多いようですね。でも、変化を求めてお任せで、とオーダーされることがあるのですが、これは一番プレッシャーがかかります(笑)。女性の方が色や柄など、ちょっとした小物で変化をつけることが多いのですが、そういう遊び心のあるスタイリングのできる男性はまだ少ないので、そこを提案できればと思っています」(宮森さん)
 
bemoolの魅力は、買い物を代行するサービスであるというだけでなく、読者モデルや服飾系学生などのファッション感度の高い女子たちが、顧客の“パーソナル・スタイリスト”となって等身大の”女子目線”ファッションをアドバイスする点にある。ユーザーと直接対面こそしていないが、彼女たちはスポーツジムにおけるパーソナルトレーナーのような役割を果たしていると考えれば分かりやすい
 
AmazonやGoogleの「商品推薦システム」を支えるアルゴリズムのような新しいテクノロジーが登場しても、ファッションのスタイリングという感覚的な要素を完全に置き換えることは難しいファッションを参考にするメディアは雑誌からWEBやクチコミなどに分散しているが、最終的にはそのどこかに必ず個人のセンスが必要とされるものだからだ。同社では、スタイリストにおしゃれな男性を選択肢として加えるなど、今後もサービスの充実を検討しているという。
 
ファッションの流行が細分化してマスで捉えづらくなってきた現在だからこそ、他にも新しい切り口が生まれてくる余地はまだありそうだ。例えばパルコのような商業施設とコラボレーションしても面白いのではないだろうか。
 

【取材・文: 本橋康治(コントリビューティングエディター/フリーライター)+ACROSS編集部 】 
 


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