今年、EC事業において「サブスクリプション型EC」=「定期購入型EC」への新規参入が相次いでおり、話題になっている。ミクシィは、9月中旬にサブスクリプション型のファッションEC「Petite jeté(プティジュテ)」をスタート予定だ。しかし、ビジネスモデルとしては通販業界では従来から頒布会や定期購入などの「購入者に定期的に商品を届ける」という仕組み自体は存在している。それでは、サブスクリプション型ECはそれらと何が違うのだろうか?
昨年から今年にかけての、日本におけるサブスクリプション型ECへの参入状況をまとめてみると(※一覧表参照。ダウンロードはこちらから)、食品、酒類、コスメ、ファッション、雑貨、CDなど商材や提供内容など様々。確かにスタート時期は2012年が大半を占めており、2012年が「サブスクリプション型EC元年」と呼ばれるのも頷ける。
昨年12月に参入し、既に登録会員数が3万1,000人を超えているハイエンドなコスメのサンプリングサービス「GLOSSYBOX(グロッシーボックス)」(運営:ビューティー・トレンド・ジャパン株式会社)のPRを担当するブランドニュース株式会社に話を聞いた。
Q.---サービス概要と特徴について教えてください。
A.「2011年2月にドイツで誕生したサービスで、現在は世界18カ国(欧米ではドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、アメリカ、アジアは日本の他に中国、台湾、韓国)で展開中です。会員数は全世界で約20万人、日本は500ボックスからスタートしましたが、現在の会員数は3万1,000人を超えました。会員登録(無料)してマイアカウントを取得後、『継続プラン』に加入していただいたお客様に、厳選された毎月4〜5ブランドのコスメのミニチュアサイズや現品が入ったボックスをお届けしています。価格は1500円(送料込)。お客様にはビューティプロファイルとして、ご自身の肌質やスキンケアやヘアケアの悩み、好きな香りのタイプ、メイクの嗜好などについて登録いただくので、このプロファイルに基づいて、社内の美容の専門家がセレクトしたそれぞれのお客様に合ったボックスをお届けする仕組みです」
「サンプリング」と聞くと、「企業から広告料としてお金をもらってユーザーには無料で配布する」と思いがちだが、 「GLOSSYBOX 」 のビジネスモデルは企業からは広告費などは一切取らずに無料でサンプルを提供してもらい、会員が毎月1500円で4〜5ブランドのサンプルセットを購入しているというのが特徴だ。 「GLOSSYBOX 」 が掲げる「ハイエンドなコスメ」のイメージに合わないブランドは、場合によってはお断りしているという。サンプル提供企業には、ユーザーからの使用後の感想や要望などのアンケート結果がフィードバックされる。
取扱実績のあるブランドとしては、クラランス、ジュリーク、モルトンブラウン、シュウウエムラ、ニュクス、ヴェレダ、SHIGETA、TAKAMIなど、お馴染みの百貨店系、人気のオーガニック系、ドクターズコスメ系など国内外100ブランドを超える。送られるサンプルも1回分のお試し程度の少量ではなく、1週間以上は使い続けられる程度の量で、時には現品が入ることもあり、ユーザーにとっては毎月何が届くかわからないワクワク感、美容の専門家による自分のプロファイルにあったセレクトという安心感、そして複数のブランドのコスメがしっかりした量で手に入るという「1500円の元は充分取れる」と思えるお得感とでコスメ好きの間では既に話題になっているという。
Q.---お客様の反響はいかがですか?
A.「私たちが想定している以上のペースで会員数が増えて行ったので途中で供給が追いつかなくなり、一時お客様にはお待たせすることになってしまいましたが、9月からはようやく体制が整いました。会員数が急増した原因は、『私にはこんなものが入っていた!』『この内容で1500円はお得』『フランスのグロッシーボックスにはこんなブランドが入ってるらしい!』などfacebookやツイッター、時には中身を開ける動画がYouTubeにアップされていたりと、SNSを中心とした口コミなどでバズを生み、広がっていったこと。全てが満足という内容だけでなく、もちろんご不満の声などもあります。1500円という価格設定なので、お客様にとっては、ちょっといいランチを食べるぐらいの価格で、試したことのないコスメが試せて、ラグジュアリーなボックスに入って送られてくると、自分へのちょっとしたご褒美的な感覚も楽しんでいただいているのではないかと思っています」
また業界紙『WWD Beauty』とのコラボボックスやNatural & Organic などテーマ性のあるボックスも話題になったという。フランスではフィガロ誌とのコラボボックスやメンズボックスなどもあるそうだ。日本の「GLOSSYBOX 」のfacebookの公式ページでは、商品情報、グローバル情報、ビューティtipsなどが高頻度で発信されている。今後は会員参加型のイベントなどより楽しめるコミュニティとしてオフラインも絡めたコンテンツなども提供していく予定だ。最後にターゲット層について興味深い話を聞いた。
「実際の会員のボリュームゾーンは首都圏の働く女性が中心です。コスメ情報もたくさんあり、彼女たちはいつでも気軽に百貨店などにサンプルをもらいに行くことも可能な環境にはありますが、皆さんお忙しくて自分でサンプルをもらいに行く時間がなかったり、情報がありすぎて『選びきれない』という状況もあるようで、『自分の肌や好みに合ったコスメが試せるのがうれしい』というお声をいただいています」
情報過多の時代に、「選びきれない」「選ぶだけで疲れる」といったユーザーにサブスクリプション型ECがマッチするようだ。