東京・中目黒駅4番線ホームから見える雑居ビルの3階にセレクトショップ『boco(ボコ)』がある(2012年3月3日オープン)(※現在は代々木に移転:東京都渋谷区代々木3-5-7)。ちょうど駅ホームと同じ目線に位置するため、東急東横線の利用者は気になっていた人もいるのではないだろうか。中目黒駅から徒歩20秒という好立地だが、1階は雑貨店、2階に飲食店が入居する駅前の雑居ビルに、まさかこんな店が?と思うような、隠れ家感たっぷりのショップだ。オーナーは高杉佐恵さん。店内には、高杉さんがセレクトしたカラフルで個性的なメンズ・レディスのウェアやアクセサリー、雑貨のほか、東京で扱いが少ない地方のクリエイターのアイテムが、所狭しと並ぶ。
「boco(凹/ボコ)」という店名は、日向ぼっこの“ぼこ”に由来。大きな窓から日差しが注ぐ店の特徴を表している。さらに、さまざまなクリエーターや作家の尖った作品を「凸」とするなら、その受け皿「凹」になりたいという想いが込められている。高杉さん自身が女性であることから、「凹」でもあるそうだ。
「とにかく、みんなが持っていないもの、東京にないものを集めたくて。びっくりしちゃうような、心動かせるモノ作りをしているクリエイターさんに注目しています」という高杉さんは、宝島社の子会社でファッション系WEBサイトの企画・編集と通販カタログのバイヤー兼編集を経て、アッシュ・ペー・フランスの「水金地火木土天冥海」でプレス業に従事。その後、パルコの子会社であるパルコ・シティで、小規模ブランド・アーティストを集積した通販サイト『クリエイターズマンション』を立ち上げ、運営を行ってきた(現在もディレクターとして従事)。その『クリエイターズマンション』で自ら開拓し、培ってきたクリエイターとの人脈を活かすかたちで、今回のオープンに至ったという。
縁あって出会った物件は、中目黒駅のホームから見える立地にひと目惚れ。もともとファションのイメージが強い中目黒だが、アパレルショップが集積する目黒川周辺が注目されてきた。そんななか、ファッションとは無縁といえる駅前の「未開拓で作り込まれてない感じ」に逆に面白みを感じたと言う高杉さん。
「路面店だけでなく、こういう雑居ビルにも素敵なモノを探す楽しみがあることを発信したかったんです。実際に、店に入るのは勇気がいると思いますが、恐る恐るドアを開けて『こんなお店だったんだ』と喜んでくださる方も多いですよ。その瞬間は、私も、お客さん自身も安心するというか(笑)」(高杉さん)
品揃えは、高杉さんがもともと繋がりのあったブランドを中心に、約40ブランド(うち、約半数は雑貨)。主なブランドは、斬新なテキスタイル(柄)の日傘やスカーフが人気の「Coci la elle(コシラエル)」、キッチュで独創的なアイテムを発信する「Romei(ロメイ)」のほか、「途中でやめる」「天誅履物店」「Riteco(リテコ)」など個性が光る“高円寺的”ブランドや、「Chihiro Baba(チヒロババ)」、「Lagimusim(ラギムシム)」、「aack(エーエーシーケー)」など、手仕事中心のアクセサリーブランドが揃う。
また、神戸からアフリカンバティックを使用したアイテムを発信する「MANDRAKE(マンドレイク)」や、リメイクを中心にユニークな服を展開する「Repeart after me!(リピートアフターミー)」、大阪でミュージシャンやダンスパフォーマンスの衣装なども制作している「ぺーどろりーの」や、ミュージシャンでありながらファションブランドも展開する「emeraldthirteen(エメラルドサーティーン)」など、高杉さんがいま特に注力しているのが、地方発のブランド発掘だ。