KATA(カタ)
レポート
2013.04.23
カルチャー|CULTURE

KATA(カタ)

アートとファッションと食と音楽
カルチャーの新しい“カタ”を生み出すスペース

2013年4月の1周年を前に全面リニューアルを実施。スペースを拡張し、床や壁面も一新。さらに防音を強化し、よりよい音響空間のギャラリーとして生まれ変わった。
アパレルブランドの展示会やTシャツの即売イベントなど、ファッションをテーマとした企画も多く開催されている。
「KATA」のオープニングを飾ったジェスパー・ヘインズ写真展「NEWYORK DARKROOM」のライブイベント風景。暗室っぽさをテーマとした会場演出。
ライブハウス「LIQUIDROOM (リキッドルーム)」(東京都渋谷区恵比寿)2階に2012年5月にオープンしたギャラリーKATA(カタ)。展覧会やトークイベント、アパレルブランドの展示会など、多様なジャンルのプレゼンテーションの場として運営されているスペースだ。

「KATA」は2013年2月、1周年を前にリニューアルを実施。スペースを拡張、床と壁面を改修し、さらに防音を強化することで、高い音響性能を持つという他に類のないタイプのギャラリーへと進化した。2012年3月にはディジュリドゥ奏者にして画家でもあるGOMAの個展「記憶 第3章」を開催し、ビジュアルアートとサウンドが融合した展覧会として話題を集めた。

2004年に新宿から現在の場所に移転した「リキッドルーム」では、「KATA」をオープンする前にも、2階に併設したカフェ「Time out Cafe&Diner(タイム アウト カフェアンドダイナー)」でのトークイベントやラウンジスペースでの展覧会など、音楽以外の企画を開催してきた経緯がある。それが「KATA」という名称のもとでギャラリーとしての運営を行うようになった背景には、音楽のイメージが強い「リキッドルーム」という“カタ”を破るという意味が込められている。「KATA」は約48平方メートルの縦長の形状。着席時は60人、スタンディング時で100~150人を収容可能だ。

「KATA」のディレクション全般を手かげているのは、「リキッドルーム」の佐々木奈美さん。音楽系CSチャンネル「スペースシャワーTV」から原宿「VACANT」の運営の仕事を経て「KATA」の担当に就任した。

「母体となる『リキッドルーム』を音楽だけのハコではなく、いろいろなカルチャーがクロスする場として機能させていくために、『KATA』が誕生しました。『KATA』は完全防音の“音モノのイベントもできるギャラリー”として、より多目的に使えるスペースにしていきたいと考えています。ここから発信する音楽を、音楽以外のフィールドにも広げていくことで、リキッドルーム全体のブランド力を高めていきたいですね」(佐々木さん)。

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ライブやDJイベントなど音響のよさはKATAの大きな魅力。2013年3月に開催されたディジュリドゥ奏者・GOMAの個展「記憶 第3章」はビジュアルアートとサウンドが融合したKATAならではの企画。
展覧会開催時にはレセプションやライブイベントなどを開催し、動員促進を図っている。
隣接する「Timeout Cafe&Diner」でもトークライブやDJイベントなどを多く開催している。KATAとのイベント連動も開催されている。
「KATA」は「Timeout Cafe&Diner」と直接出入りが可能。飲食をテーマにしたイベントが開催できる点も強みと言えるだろう。
「リキッドルーム」2Fのラウンジスペース。1Fのライブスペースを含めた全館を活用できるのも魅力。
美術館やギャラリーなど、恵比寿の明治通り周辺エリアではここ数年アート関連施設が充実してきた。「恵比寿映像祭」など街を横断するイベントも開催されるようになった。
KATAの企画・運営を担当する「リキッドルーム」佐々木奈美さん
オープン以降、「KATA」では写真やファインアートの展覧会に加え、アパレル展示会、ワークショップ、スタイリストのフリーマーケット、ライブストリーミング番組の公開収録、さらに、産地直送の農作物を販売するマルシェまで、多様なジャンルのイベントを開催してきた。新進ブランドやクラフト系の作家など、ショップを持たないクリエイターたちを紹介する企画も数多く開催してきたが、「リキッドルーム」という知名度の高さは、これから世に出ようとする若いクリエイターたちには大きな後押しとなるだろう。

恵比寿界隈はギャラリーも多く、弊サイトでもレポートした「waitingroom」(2010年10月、三軒茶屋から恵比寿に移転)や「Nadiff a/p/a/r/t」(2008年オープン)など、現代美術や写真のギャラリーやショップが増えているエリアである。2009年からは東京都写真美術館と街のギャラリー/ショップが連動して開催する「恵比寿映像祭」も毎年開催され、ビジュアルアート全般のオーディエンスが多く集まるようになってきた。

『リキッドルーム』に集まるお客様には、音楽以外にもアートや写真などへの関心が高い人たちが多いという実感がありますが、『KATA』は音楽以外にも、アートやファッションと積極的に交差して、様々なファンにも受け入れいれられるような場所でありたいと思っています。小さなファッションショーがあってもいいですし、リキッドルームの持っているライブのアーカイブを、写真展などの形で紹介していくことも考えています。今後も、ミュージシャンが1日店主をやる“ミュージシャンスナック”などをやっていきたいですし、アーティストがリキッドでイベントをするというような企画も大歓迎。展覧会に合わせてワークショップやライブを積極的に取り込んでいくことで、『リキッドルーム』全体をクロスカルチャーな場所に育てていきたいですね」(佐々木さん)。


近年、音楽やアートに限らず、1つのジャンルに限定せずに活動するクリエイターは増えており、今後もこうした傾向は続いていくだろう。「KATA」がジャンルを超えてアンテナを張っているような人たちが出会う場、表現する場となっていくことで、ライブスペースの新しいあり方は確実に広がっていきそうだ。


【取材・文: 本橋康治(コントリビューティングエディター/フリーライター)+ACROSS編集部 】 

KATA(カタ)

住所:〒150-0011 東京都渋谷区東3-16-6 LIQUIDROOM 2F

http://www.kata-gallery.net/


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