ファストファッションやそれに追随するようなドメスティックブランドの浸透で、表層的なトレンドを次々と取り入れるのが主流になっている。一方で、それらに自分で手を加えてカスタマイズしたり、古着をリメイクしたり、布を買って最初から手づくりするなど、オリジナリティ溢れる「DIY(Do It Yourself)感覚」でファッションを楽しむ人が増えてきた。
「昨年の秋に買った黒いつけ襟に自分でビーズを付けました」と言うのは大学3年生のAさん(写真1)。「ちょっと変わったデザインのものが好きなんですが、お店で売られているものはふつうのデザインのものが多いので、自分でアレンジしています」と話してくれた。インタビュー時に着用していたトップスは「アメリカンアパレル」のもので、ボトムスは「フォーエバー21」、シューズは「ローリーズファーム」でバッグはお母さんの「セリーヌ」と、ファッション好きな90年代生まれならではのミックス感覚。興味深かったのは、「植木鉢を置くためのボードが欲しかったんですが、いいのが売っていなくて自分で板を買ってきてペンキを塗って作りました」と、洋服以外のものも手作りしていたことだ。
「アクセサリーはほとんど自分でつくっています」と言う金融関係の会社員のBさん(写真2)は、何年か前に「マウジー」で買った帽子に自分でアンティークリボンを付け、マトリーシュカの自作ピアスをしていた。「水原希子さんちゃんがしていたチョーカーがすごくかわいくて欲しかったのですが、売ってないし、たぶんあっても高いから買えないので自分でつくりました」と話す。
そういえば、以前「定点観測」をはじめ、「日経消費ウォッチャー」に寄稿した記事でも紹介した「タトゥストッキング」も自分の好きな絵柄をマジックで描いたという女子大生に出会ったのは記憶に新しい。
また、定点観測のインタビュー時は別の服を着ていたが、「最近DIY的なことを何かしましたか?」と尋ねたところ、「彼氏の服を自分用にリメイクしました」と答えてくれたのは大学1年生のCさん(写真3)は、スウェットっぽい厚手のロングTシャツの袖を切ってドルマンスリーブにし、切った袖でポケットをつくって付け、襟ぐりも広げて今どきのビッグトップスに仕上げたと話してくれた。友だちの間でも評判が良く、作り方をシェアしているそうだ。
いずれも、「欲しいものがなかった」という点では共通しており、さらに、「自分でつくった方が自分の好み100%なので妥協しなくていいから気持ちいい」(Bさん)と、そろそろファストファッションのように過度にマーケティングされた「ロープライス×ほどほどトレンド」のバランス観に飽きている人も少なくなさそうだ。
Bさんがインタビュー時に着用していたワンピースやフェラガモのパンプスは、古着店で購入したもの。実は今秋冬のトップメゾンから提案されているファッションのトレンドが、「クラシック」や「ヴィンテージ」、「レトロ」ということもあっての古着やリメイクの人気の復活ともいえるが、ポイントは、新品のワンピースがセールで500円など「買う」のが当たり前というファストファッションで育った80年代後半〜90s生まれにとっては、「初めての古着&リメイク」の体験であるということだろう。