昨年あたりから30代をターゲットにした「ライフスタイルショップ」の出店が相次いでいる東京・自由が丘。2012年9月15日、自由が丘駅北口にオープンした「アクロス ザ ヴィンテージ」もそのひとつである。運営は(株)コスギ。
「弊社は幅広い客層に支持される商品づくりをしてきました。なかには全国700店舗を持つブランドもあり、ファッショントレンドの楽しさを提案するために年間52週、毎週新商品を展開しています。しかし、いまの時代、モノはみんな持っている。そこで『モノよりコト』を重視する団塊ジュニア世代に向け、新しい提案をしたいと立ち上げたのが『アクロス ザ ヴィンテージ』です」(新規事業プロジェクト 小山義之さん)。
2011年2月からショップの構想がスタートし3.11の東日本大震災が起きたことで、「一度手に入れたモノを大切にする」とはどういうことなのかを模索。シンプル族に向け、ロングライフプロダクツを提案するため、「子どもから大人まで、世代や性別を通り越して着られる服を」というコンセプトを構成していったという。
主力商品は、1アイテムにつき9サイズを展開する同社の新ブランド「アクロス ザ ヴィンテージ」である。日本製の素材や国内縫製にこだわったシンプルでベーシックなアイテムを、キッズ1、2(100センチ、120センチ相当)、レディス3〜6(SS〜L相当)、メンズ7〜9(S〜L相当)の9サイズで展開する。現在のラインナップはジャケット、Pコート、トレンチコート、ボタンダウンシャツ、チノパンで、季節に応じてアイテムや素材を随時、追加変更していく。
「たとえば細身の男性もいれば、ゆったりしたシルエットが好きという女性もいらっしゃいます。そのような方々にも自由にサイズを選んでいただけるよう、新たな試みとして取り入れました。キッズの1サイズは、だいたい幼稚園くらいまで。小学校にあがってキャラクターものに目覚める前に(笑)、大切な1枚を着るという体験をさせてあげてほしい」(小山さん)
ちなみに、今シーズンの売れ筋はチノパン。現在、市場に出回っているものは、ダメージ加工が施された「今」着やすいパンツ類が主流。買った時が一番いい状態で、くたびれたらまた新しいものを買うというサイクルではなく、履き続けて自分の身体に馴染ませ育てていく感じを楽しんでもらいたい、と語る。
その「アクロス ザ ヴィンテージ」の両輪となるのが、レディースラインの「ハレトケ」。母娘がお揃いで着用できるよう、1デザインにつき6サイズで展開する。「ハレトケ」は柳田國男が民俗学や文化人類学において提唱した、日本人の伝統的な世界観を表現する1つ。「ハレ」は祝い事などの非日常を、「ケ」は普段の日常をそれぞれ意味する。
ラインナップは、ワンピースやブラウスなどのほかにネクタイ工場で残った端切れのパッチワークを胸元にあしらった柄入りコットンシャツチュニック24,150円や、繭に包まれるようなシルエットの7Gコクーンセーター29,400円、ベーシックなクルーネックカーディガン24,150円など。
「日常のなかにある非日常、たとえば娘さんのピアノの発表会や、家族でちょっと食事に行くとき、“女子”がおめかしする。そんなシーンに着たい、ちょっといい服というのがテーマ」(小山さん)