自転車ユーザーの間で、ここ最近注目を集めているのが自転車フレームのハンドメイド。FabやDIY志向の高まりと、自転車カルチャーの広がりを象徴するひとつの動きである。
“日本初の自転車フレーム制作スペース”として2012年4月、中落合(東京都新宿区)にオープンした「BYOB Factory Tokyo(ビョブ ファクトリー トウキョウ)」。「BYOB」とは“Build your Own Bikes”の略で、「誰でも自転車のフレームを制作することができる工房」というコンセプトを表している。
システムは1日利用(9:00〜17:45)1万2,600円、夜間利用(18:00〜22:00)6,300円の2形態で、初期費用として利用者は5日間分を先払いする。フレームなどの制作に必要な部材は一通り用意されており、最低限動く形のスタンダードなフレーム1本分を作るためのキット価格が2万6,000円〜3万5,000円。これに希望するパーツなどの内容によって価格が決まってくる。早い人なら1週間くらいで1台分を完成させるというから、単純計算で12万円台からの予算で自分だけの自転車を作り出すことが可能ということになる。
利用にあたり、ユーザーはまず作りたい自転車のイメージをスタッフに伝え、図面化する作業からスタート。溶接加工などの工程も、必要に応じて作業をサポートしてくれる。
「ただ場所を貸しているだけではなく、最初の設計図づくりからスタッフが一緒にフォローしています。作業の流れの中で細かな要望を伺いながら進めていきますから、作り方が全く分からないという方でもフレームを完成させることができます」
と語るのは、この「BYOB」を立ち上げたフレームビルダーの高井悠さん。自身の自転車フレームショップ「Sunrise cycles(サンライズ サイクルズ)」を経営している。
「もともと完成車の企画を仕事にしていたんですが、5年くらい前から自宅に設備を作って独学でフレームを自作していました。しかし日本のカスタムビルダーは競輪などスポーツ用車両を造ることを目的とした職人技の世界で、部材一つとっても望むものがなかなか手に入らないことが多かったんです。そこで、もっと自由な発想をもって自転車を作りたいと思って始めたのが『サンライズ・サイクルズ』なんです」
高井さんが初めてオリジナルのフレームを発表したのは2010年。そして2011年春からウェブサイトでフレームの直販を始め、工房兼ショップをオープン。それから半年くらい経ったところでこの物件を紹介され、以前から構想していた「フランクかつオープンで、 誰でも自転車のフレームを作れる場所」を作ろうということになった。
スペースを立ち上げるための設備投資など、資金はツイッターと口コミで集めた。一口5万円・無期限で場所貸しは無料という条件で30名の出資者を募ったところ、5日ほどで枠が埋まった(!)というから、その注目度の高さが伺える。ちなみに出資者のうち28名が男性、2名が女性だ。