factelier(ファクトリエ)
レポート
2013.03.26
ファッション|FASHION

factelier(ファクトリエ)

コンセプトは「メイド・イン・ジャパンの復活」。日本初、ファクトリーブランドに特化したECサイト

factelier(ファクトリエ)を立ち上げた山田敏夫社長。大学時代にパリのグッチで販売を経験し、その後いくつかのIT企業を経て独立した。
第一弾として販売するのはHITOYOSHIのシャツ。2009年に経営破綻の危機に直面したが生産を再開し、ファクトリーブランドをスタート。ECで購入しやすい商材であることと、山田さんの地元の企業だったことが決め手だったそうだ。
シャツ9,450円(税込)。中間業者を排除し、ブランドと消費者を直結する事で高品質の商品をリーズナブルな価格で提供する。

 

老舗スーツファクトリー「dpi(ディーピーアイ)」や「ファイブワン」が直営店をオープンし、小野莫大小工業(オノメリヤスコウギョウ)が表参道にコンセプトショップ「 smoothday (スムースデイ)」をオープンするなど、ここ数年、都内ではファクトリーブランドの動きが盛んになっている。

そんななか、日本初のファクトリーブランドに特化したインターネット通販サイトFactelier(ファクトリエ)がオープンした。ファクトリーブランドとは、自社工場でデザインから生産までを手掛けるブランドのことである。

国内のアパレル工場はOEM生産による売り上げが大きなウェイトを占めるが、長引く不況と円高、ファストファッションブームによりアパレルの価格競争が激化。製造コストが低い海外生産への移転が進んだ結果、国内市場におけるアパレル品の国産比率は
1990年の50.1%から2009年には4.5%にまで減少。およそ20年にわたりマイナス成長を続けている。

そんななか、日本のものづくりの技術がなくなってしまうという危機感から同サイトを立ち上げたのが、ライフスタイルアクセント(株)代表の山田敏夫さん(30)だ。

山田さんは熊本県の老舗婦人服店に生まれ、大学在学中にフランスに留学し、その際にGUCCIパリ本店で販売を経験。卒業後はIT企業に就職し、2010年に東京ガールズコレクション公式通販サイトを運営する
(株)ファッションウォーカーを経て2011年に起業し、同サイトを立ち上げた。

「GUCCI(グッチ)やHERMES(エルメス)などのビッグメゾンはもともとファクトリーブランドとしてスタートしています。職人が手がける傑作の一品を店頭で売るというシンプルな商売。かつてパリのグッチで見習いとして働いた際に、このルーツを知りました」(山田さん)。

コンセプトは「メイドインジャパンを守り、工場と消費者を正しい価値価格でつなぐ」こと。メーカーと連携し、中間業者を通さずに消費者に販売することで、高品質なアイテムをリーズナブルに提供する。国内の製品だけを扱っており、商品はすべてFactelier(ファクトリエ)のために作られたオリジナルである。

サイト開設にあたり、クラウドファンドサイトのCAMPFIRE(キャンプファイヤー)で資金を募った。30万円の予定に対し114万円が集まってサクセスした事からも出資者の関心の高さが伺える。

 

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大正12年創業の老舗ニット工場TERUTA(テルタ)と、プロダクトデザイナー角田陽太さんがタッグを組んで作ったニットカーディガン12,600円(税込)。factelier(ファクトリエ)のみで販売する。
テルタでは世界的に有名なブランドの商品を作っていたが、不況やファストファッションの台頭により70名いた従業員が20名まで減少。危機感から墨田区主催のものづくりコラボレーションへ参加し、自社ブランドを立ち上げた。
文京区千駄木のGLEN CLYDE(グレンクライド)は93年に日本で初めてアンクルソックスを制作したソックスメーカー。Factelier(ファクトリエ)では、希少価値が高く幻のコットンと呼ばれる「シーアイランドコットン」を使ったソックスを販売する。
ブランドのストーリーや商品の特徴を詳しく紹介しているのも特徴。こちらは国内のファクトリーブランドと海外のハイブランドの商品を品質、デザイン、プライスの3点から比較した特集ページ。
第一弾として扱う商品は、熊本県人吉市に工場を構えるHITOYOSHI(ヒトヨシ)と提携したオリジナルシャツ。HITOYOSHIはもともと世界中に高級ドレスシャツを供給していたが、2009年に親会社の経営破綻を機に存亡の危機に陥った。親会社の取締役だった吉国武氏と福岡のファンドによるMBOで再生し、生産を再開。現在は阪急MEN’S TOKYOなどで販売している。2012年11月には青山に旗艦店trstate(トルステート)をオープンするなど、小売にも参入した。

山田さんの地元である熊本の企業であったことと、サイズを把握していればネットでもリピート買いしやすい商材である事から提携を決めたそうだ。国内生産でハイクオリティであることに加え、現在のファッショントレンドにマッチしていることも重要なポイントだそう。

シャツは1枚9,450円で販売。1週間で110枚を売り上げ、その後も月50枚の注文が入るなど好調だそうだ。

第二弾として、絹織物の産地として有名な京都・丹後で手織り機で織られるオールハンドメイドのネクタイ、KUSKA(クスカ)を販売。また、第三弾として東京都墨田区のニット工場TERUTA(テルタ)のカーディガン、第四弾では東京都文京区千駄木のソックスGLEN CLYDE(グレンクライド)を販売する。さらに今後も年間10工場以上と提携していく予定だそうだ。

近年はファクトリーブランドが自社HPで通販を行うケースも多いが、情報発信力が弱く消費者に情報が届かないケースも少なくない。Factelier(ファクトリエ)ではそこをカバーすべく、ファッション性や人気スタイリストを通じた情報発信を行うなど、メーカーにはできない訴求を重点的に行っていくという。

ファクトリーブランドの生産背景や伝統・技術、クオリティをきめ細かく、なおかつファッションナブルに訴求する同サイト。好調の背景には、昨今のメイドインジャパンプロダクトのブームに加えて、消費者の「せっかく買うなら社会のためになるものを買いたい」という「ソーシャル消費」マインドの一般化が少なからずありそうだ。

〈取材・文 ACROSS編集部・菅原三知代〉
 


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