「実は近年、欧米の産業スパイが大量に日本に入ってきているんですよ。日本古来から食生活に取り入れてきた自然の食品や素材などのメカニズムは、今きちんと保護し制度化していかないとたいへんなことになるんです」。
このところ、会社や知人、友人の枠を越え、あるテーマに基づいて真剣にディスカッションをしたり、学識者を招いて講議をしてもらったりという「企業研究会」が人気をよんでいる。ここ渋谷の高級住宅地、松濤にあるとあるマンションの一室にも、今春「ナチュラクオーレサロン」が発足。「食」をテーマに、さまざまな研究会が開催され活気に溢れている。
「ナチュラクオーレとは自然な生活、という意味の造語です。ひとことで言うと食をテーマにしたマーケティング会社です」と言うのは、株式会社ナチュラクオーレのCEOの井上禎子さん。コンセプトは、「ヘルスケア」と「ビューティケア」、「メンタルケア」、そして「ナチュラルライフケア」の4つ。それらに基づき、各種マーケティングリサーチや商品開発、メニュー・レシピ開発、コンサルティングなどを行っており、企業研究会はそのひとつというわけだ。
現在の研究会のテーマは「癒しのための商品コンセプト開発」や「伝統健康食研究会」「ヘルシーフード倶楽部」など。たとえば、一言で「癒し」といっても、ストレスや香り、炭、健康住宅など、さまざまな角度からの研究のアプローチを用意し、フレキシブルに参加者の意志や意見を優先しつつ、1つのセッションとして展開していくのが特徴だ。
取材に伺った日のテーマはなんと「炭」。
「われわれがよく目にする紀州備長炭ブランドの炭の約7割は中国製のものになっているんです」とは同研究会のオブザーバーのひとりであり、国立で「炭の舞」という備長炭ショップを経営している岩崎宣文さん。実は、岩崎さん自身建築家であり、炭を取り入れた住空間をつくりを推奨しているのだという。
午後6時半。ひとり、ふたり、と会社帰りと思われる方々が集まってきた。前回の炭のマーケットについての研究発表を経て、2回目は炭の科学的な成分や効能などについて、専門の先生の講議を聴講することから始まった。メンバーは、元官庁勤務の20代後半の男性を最年少に、某地方自治体の方、某大手小売業の方、某上場企業の役員の方など実に幅広い。全員が半分はプライベートで半分はこれまでの経験から得た知識や能力がより生かせれば、というスタンスだ。各自業界誌やデータ、クリッピング資料などを持ち寄り、積極的なブレーンストーミングを展開。ちなみに、同研究会は後日、有志のみによる分科会も開かれるなど、かなり真剣に事業化を目論んでいるようだ。「伝統健康食研究会」は、スポンサーが付き本格的に始動することになったため、非公開の研究会へとシフトしたのだとか。
「実は昔、野村総合研究所に勤務していたんですが、そういった堅苦しい感じにはしたくなかったんです。IDEOという世界的なデザインファームのトム・ケリー&ジョナサン・リットマンが書いた『発想する会社』という本の中に、ブレインストーミングはアイデアのエンジンである、という下りがあります。そして、いいアイデアは寛げる環境でしか生まれない、とも。私も同感です。心もからだもリラックスした状態にこそ、いいアイデアが出る。そんな自由な発想と情報交換の場として、また、さまざまなナチュラビオテック志向の事業開発の場として、サロンのような環境にしたく、この場所を選びました」(井上社長)。
たしかに、ここは3LDKの高級マンションの一室。オープン式のキッチンがあり、リビングがあり、バスルームもある。リビングにはゆったりとしたソファやチェスト、ダイニングテーブルにイス、食器棚などがあり、お家そのもの。寝室にあたる部屋は事務所として使用しているのだそうだ。
「ちょっと大きな話になりますが、近年、経済の発展とともに、人々の食に対する知識や信頼が薄れてきています。食は生きることそのもの。すべてにつながるものなのです。ナチュラクオーレは、ヒトが健康で美しく、楽しく生活するためのさまざまな食育活動をひとつひとつ実現していきたいと思っています」(井上社長)。
幣サイトの「消費生活」を見ても明らかなように、消費者=生活者の求めるモノが多種多様化するなか、このような生活者の視点にこだわった小回りのきくサロン感覚のマーケティング会社のニーズは大きい。また、研究会に参加する側も、講議を聴くだけの一方方向ではなく、ブレストに始まり、専門家の双方向による研究を重ね、実際に事業として成立することを真剣にプランニングするなど、有意義な活動として位置付けられているようだ。そんな個の思いからしか、新しいものは生まれないのかもしれない。
ちなみに、同サロンは、管理栄養士や専門家の先生を招いた健康・美容食の料理教室ナチュラビオテックスクールをはじめ、健康・美容食メニューの宅配サービスなども企画しているそうだ。
Natura Cuore Salon
2003.06.25
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Natura Cuore
(ナチュラクオーレ)
〒150-0046
東京都渋谷区松濤1-24-4
ピソ松濤102
TEL: 03-5790-5730
FAX: 03-5790-5731
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